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左手に硬貨を右手に希望を  作者: 嘉七


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第1話:光を抜けたらそこは異世界だった

転生です。

チートです。

気が付いたら知らない路地で腹の虫が鳴く音で目を覚ました。

昨日会社帰りに上司の酒に付き合って、あっちこっちで飲みまくったと思う。

俺は寝ぼけ眼で辺りを見回す。


「ん?、何処だ何処に居るんだ・・・?」


自分の荷物を確認する為に身体を触ると感覚がおかしい・・・。

やけに細くなっていて酒とタバコが趣味が祟り出っ張った中年太りで自慢のビール腹が無くなっている。

ふと目が覚め始め自身の手を見る・・・。


「何じゃこりゃ!」


某ドラマの名シーンをそのまま再現してしまう。

小さく細く皮しか無い自身の右手。

辺りを見廻し自分の記憶がある場所とはかけ離れた寂れ暗く異臭漂う路地にいる事に気がつく。

あのネオンが煌々と輝き華麗な美姫達との一時の逢瀬を楽しめる大好きなあの場所では無い事に・・・。

慌てて自分に起こった事を確認しようと動こうとするが上手く力が入らない・・・。

それもそのはず、手だけでは無く足も腕もほぼ皮だけのガリガリなのだ。


(一体どうなってんだ・・・)


兎に角自分の場所を確かめる為に周りを見ると・・・。

無い・・・、と言うか着ている物が違う・・・、自分がクセェ・・・、ボロボロの布切れ着て・・・、一体どうなってんだ・・・。

何で出来ていかも分からない壁を頼りに取り敢えず歩いてみると光が差しているのが見える。

動かない体を何とか動かし光の方向へ歩いて行く・・・。


「光を抜けたらそこは異世界だった」


きっと文学賞を貰った文豪が同じ様な光景を見たらきっと言ったに違いないセリフが口から思わず出る。

どう見ても兎の耳がある男性や角が生えてる女性、おっと人間も居た。

明らかに目が覚める前の日本の飲み屋街では無い。

フラフラな身体を壁を背に座り込む。


「何てこった・・・、冗談はよし子ちゃん・・・」


社長の口癖が乗り移った・・・、しかし本当にやめて欲しい・・・、誰も頼んだ事では無いのに勝手に異世界転生なんて流行りに乗せられたくは無かったのだが・・・。

取り敢えず、多分自分の置かれた状況からしてここに居ても仕方がなく・・・、異世界来たらまずやる事ベスト1位をする事にする。


「ステータスオープン!」


・・・、はい、誰だよこれ1位にした奴は・・・。

ただでさえ周りから奇異の目で見られてるのに・・・。

仕方ないのでどうしようかと考えていると。


ピコーン!


突然、頭に聞こえないはずの電子音が響き左手が一瞬光った。

何だか知らないが周りを見ても行き交う異人種達。

相変わらず奇異の目で見られ嫌な顔して通り過ぎて行く。

暫く辺りを見ていても何も起きない・・・、これからこの状態なんて人生ハードモードが決まりきっている。

夢だと良いが多分・・・、夢じゃねぇ・・・。

すると目の前に大きな影が現れる。


「おい、お前ここに居ると連れてかれるぞ、家に帰れ」


簡素な防具に身を包んだ多分犬族なんだろうと思われる二人に注意される。


「いや、家なんてないよ」


「じゃあ、どうやってここまで来た?」


俺は出てきた路地を指差して「そこの奥に気が付いたら居たんだよ、ここが何処だか分からない、だからここまで出てきてどうしようかと考えていた」と言っておけばどっか行くだろう。


「そっか、じゃあわかった」


と言って一人が俺を摘み上げる。


「ちょっと待て、わかったんなら何で連れてこうとする」


抵抗しようとするが力が入らないので抵抗出来ない出来るのは文句言うぐらいだ。


「どうせ、そのなりじゃ何も食ってないだろ、俺が摘めるぐらいの重さじゃまともに歩けやしないだろ?」


こいつお見通しかよ、抵抗しても今の状態じゃ抵抗出来なさそうなのでもうどうにでもなれっとそのまま連れて行かれる事にする。


「しっかし、お前くっさいなぁ・・・」


余計なお世話だ。


◇


「ふぃ〜、極楽極楽〜」


あれから騎士団の詰所に連れて行かれ、さっきのやり取りをもう一度させられた。

やはり臭いと苦情を周りから賜った為、特別に風呂をご相伴にあずかれる事になったのだが・・・。

初めて知った自分の身体、小さいのが付いている、前はプロの方にもデリバリーな方にも褒められる立派なのが付いていたのだが、まあ小さい・・・、毛も生えて無いつんつるてんのが付いている。

ラッキースケベでお姉さんと一緒に入れるかと思ったがどうやらここには女湯が存在しないらしいので仕方ないので我慢する。

しっかり洗われて匂いは消えたが伸びっぱなしの髪の毛も洗われた為、雨に濡れた長毛種の犬みたいな状態になってしまった。

風呂から出るとボロ布からくたびれた服に装備が変わった。

その後教会に連れて行かれ偉そうな神父と俺を連れ回してる犬族な警備隊員が話をしている。

話終わると犬族な警備隊員に小声で「いいか、ギフトが出ても誰にも言うな、左手は必ず隠しておけ」と忠告される。

「どうして?」と可愛く子供らしく聞いてみたら何でも神聖系や精霊系のギフトが現れると必ず囲い込まれ一生教会で飼われる人生になるそうだ。

なので何も知らない子供を狙っているそうなんだが、大体は親も知っているので子供を離さない為に子供には言い聞かせて受けさせるのが普通らしい何でも教会入りすると食べ物は決められ、治療などの行為は24時間休みなし、何処のブラック企業やねんとツッコミを入れたくなったが引っ込めた。

見つけるなら小部屋でなくて見える場所でやれば良いのにと思ったがどうもやった事があったらしい。

でも何の反応も無かったらしく結局一人入れる小部屋でしかこの儀式は出来ないらしい。

神様は見てるんだね、あくまでギフトはその人へのギフトであったて教会のものじゃ無いって事、いつか無くなるぞこの宗教。

呼ばれて入った小部屋には何やら魔法陣の書かれた台が設置されていて右と左に手を置くよう言われる。

司祭が扉を閉めたらそれぞれ手を置き、暫くすると両手が光り出す。

どうも俺は持っているらしい。

左手がバッチリ光ったと思ったら手のひらに紋章が浮かぶが直ぐに消えた。

右手はそのまま紋章が消えないので見られても仕方ない。

暫くすると扉が開いたので慌てて左手で腹を掻きながら出て行く時に司祭が必要以上に左手を確認したがっていたが腹を掻いているので服に隠れて確認出来なかったらしい。

そのまま犬族な警備隊員に連れられて教会を出るとその足で警備隊員の宿舎に再び連れて行かれる。


「ギフトの事は言わなくていい、誰にも言うなよ?、ギフト自体持ってると命を狙われる事もあるからな」


しっかりとデカい釘を刺されると右手に出ている紋章を確認する為に某用語解説辞書も真っ青の分厚い本を渡されて「これで調べて覚えておけ、他人には教えなくていい、右手もその内消えるから今のうちに調べておけ」と言われ調べる事に。

 

「これは火の輪郭・・・、違う・・・、水?、違うな・・・、緑・・・、うお淫美なんてのもあるのか・・・」


小学校の授業中に余りにも興味無かった授業は辞書を眺めていたのを思い出す。


そして右手の紋章の輪郭と同じと言うかそのものを見つける。


【空間魔法】


ん〜、微妙だ・・・、チートじゃ無いのかよっと転生特典を期待したのに当てが外れる。

ついでに左手は・・・、記憶にある左手に紋章は見当たらなかった。

まあギフトを貰っただけでも十分、転生特典なんだろうな、大抵は両手に紋章が出る事は無いらしい、どちらかに出て終わりなので右手に紋章が出ていたのを確認した司祭が引いたのは右手の紋章が神聖もしくは精霊の輪郭では無かったのを確認したからだったのだと理解する。

パラパラと記憶にある輪郭を探すがどれも微妙に違ったりする。

やがて巻末になりふと最後に書いてある文章に目が行くと「無い紋章は紋章の正確なスケッチと効果を書いて下記の住所に送れ、次回更新時に掲載するかも」との文章。

かもって何だよ載せろよ仕事しろよとツッコミを入れてはいるが実際左手の紋章は見当たらなかった。

取り敢えずどうやって使えるか分からんので犬族な警備隊員に声を掛けて聞いてみる。


「何だっけ・・・、覚えて無いな、一度使えるようになると勝手に思うだけで使えるようになるからな・・・」


使えない犬族だなと思いつつ、どうしたものかと思っていたらついでにと何故か下働きの部屋まで連れて行かれる。


「オジ、居るか?」


オジと呼ばれ、厨房の脇から顔を出した耳の長い人が居た。


「オジ、手伝い連れてきたぞ」


「おー、ありがたいってもしかしてその小僧か?」


あからさまにガッカリした様子のオジとか言う耳の長い奴。

こっちだってガッカリだよ、せめておばちゃんなら甘えてやろうかと思ったのに本当にここは女っ気が無い。

こうしてなし崩し的に俺の転生ライフが始まった。


ピコーン


一体この音は何の音なんだ・・・・

次回:吾輩は転生人である名前はまだ無い

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