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3 男爵令嬢の目覚め



 平民だったソフィーは毎日を元気いっぱいに過ごしていた。朝早く起きて夜寝るまでやることはたくさんある。


 生まれた頃から可愛い顔をしていたソフィーは8歳になった今では、とんでもない美少女として近所でも有名だった。それだけ注目を浴びれば良いこともあれば悪いこともある。

 まぁ大抵のことはしっかり者のソフィーにとってたいしたことではなかった。


 そんな時にどこかの男爵がソフィーを引き取りに来た。父親が病気で亡くなってから母親と二人で暮らしていたが、その男爵はなんと本当の父親は自分だと言う。


 母に確認すると昔色々あったと言い、その通りだと認めた。亡くなった父親が大好きだったソフィーはショックで気を失った。

 そして前世の夢を見た。


 ソフィーはヒナノと呼ばれて三姉妹の末っ子として大切にされていた。

 セリ姉とアズ姉はヒナノをとても可愛がり、でも悪いことをした時にはしっかりと叱り、ヒナノは愛情たっぷりにすくすく育った。


 気が強いところがあったので大人になって男性と上手くいかないこともあったけれど、二人の姉は「いつかヒナノちゃんのことを大切にしてくれる人が現れるわよ」と優しく頭を撫でてくれた。

 二人の姉が大好きでいつもたくさん話をした。とても幸せな記憶だった。


 目が覚めた時、少し冷静になったソフィーは男爵家に引き取られることを了承し男爵令嬢となった。


 男爵は美少女なソフィーを自分の評判などのために使おうとしてるのかもしれないけれど、まぁなんとかなるだろう。自分はやられてばかりの人間じゃないことを知っている。姉たちにたくさんの愛情をもらっていたことも覚えている。

 そして前世の記憶にあったソフィーのことも思い出した。


 ソフィーは漫画の主人公だった。

 柔らかなピンク色の髪の毛に可愛らしいピンクの瞳。異世界ものによくあるわかりやすい美少女だ。

 そんな美少女なソフィーは16歳で学園に入り王太子と運命の出会いをする。正直運命の出会いなどいらない。


 学園に入って原作通りに王太子とブライアンに好意をもたれたら重荷だ。ヴァイオレットとパトリシアにいじめられるのも嫌だ。


 そうなれば我慢する気は無いし、きっと証拠を握って断罪すると思うけど。でもいじめられる可能性があるとわかっていて入学することが嫌だった。

 男爵は入学拒否を許してくれないだろうし、なんなら学園で爵位の高い良い男を捕まえてこいと思っているだろう。嫌過ぎる。


 しかし嫌なことばかりではない。

――学園にはデヴィッドがいる!

 初恋がソフィーだと言うモブのデヴィッド。それ以外は髪が短めで、まぁ悪くない顔だったなくらいしかない。なんせ数コマしか出番が無いのだ。


 そんな数コマのデヴィッドに出会えるなら良いんではないだろうか。多分爵位の高いところの息子ではないだろう。次男か三男辺りじゃないかと予想している。髪や瞳の色も無難なとこだろうと思う。

 だって色々深い設定があるとモブじゃなくなる。


 おまけ漫画以外では、コマの後ろの方に雑に描かれているこの姿はもしかしてデヴィッドではないか? くらいだ。

 突然異国の王子でしたとか正体が判明する感じでもない。早く会いたい。色々知りたい。それだけが楽しみだ。


 その楽しみを胸にソフィーは男爵令嬢としての勉強を頑張った。

 元平民だからって馬鹿にされたくない。負けず嫌いなソフィーは毎日ひたすら勉強する。今まで必要なかったマナーやダンスなどを頭と体に叩き込む。


 美少女だけどそれだけだな、なんて思われたくない。デヴィッドには初恋してもらわないとダメなのだ。


 その頑張りのせいで王太子やブライアンに好かれるかもしれない、ヴァイオレットやパトリシアにいじめられるかもしれない。それでも最高の私をデヴィッドに見せたいのだ!


 しかし四人に対しての対策はしておいた方が良いかもしれない。聖女として覚醒するとか絶対無しの方向で動きたい。

 漫画の後半に突然出てきた設定は王太子を狙っているソフィーにはありがたいことだけど、今のソフィーには必要ない。色々難しいなと悩みながらソフィーは勉強を続けた。


 そうして努力し続けたソフィーは16歳になり、外見も中身も素晴らしい美少女になったのだった。

 そしていよいよ入学式。新入生代表として挨拶することになる。


 待っていてねデヴィッド! デヴィッドのことなどほとんど何も知らないのに、一方的な思いを持つソフィーは力強く屋敷を出発するのであった。





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