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23 男爵令嬢と子爵令息



 デヴィッドを助けたいと願った時、聖女の力が覚醒した。傷が塞がっていくのを見た時安心して、デヴィッドが生きていること以外は何も思い浮かばなかった。


 とんでもない奇跡が起きたけれど、あの後何回か癒しの力の実験があって、あの一回が奇跡だったんだろうと結論が出た。聖女認定もされずソフィーは以前と変わらない生活をしている。


 デヴィッドは、暖かい光が体を包んで痛みが引いていった、ソフィーに抱きしめられてるように思ったと言っていた。それを聞いて少し恥ずかしかった。


 あれからデヴィッドと変わらず仲良くやっている。デヴィッドが父親に相談して、ソフィーとデヴィッドの婚約も無事整った。


 その途端デヴィッドの兄が家に戻ろうと現れた。真実の愛はどこへやら。貴族暮らしに慣れていた兄は平民の暮らしに適応出来なかったし、相手はもっと甲斐性のある男にアッサリ乗り換えたと言っていた。

 もちろんデヴィッドの父親は家に戻ることを許さず、しかし見捨てることも出来ず、領地に小さな家を用意し何か仕事をさせると言っていた。


 デヴィッドは子爵家の跡取りとして頑張っている。ソフィーは彼の為に前世の知識が何かに使えないかと思ったがやめた。

 そんなことよりもヒロイン補正なのか、何事も学べば学ぶほど身についていく。さすが原作で王太子妃教育も軽々とこなしていただけある。

 その能力を適度に活かしてデヴィッドを支えていくことにした。


「デヴィッド様、お勉強は捗っていますか?」

「ソフィー、なんとか頑張ってるよ」


 子爵邸に会いに行くと、げっそりした顔でデヴィッドが現れた。可もなく不可もなくな彼は一生懸命頑張っても程々なので、急に詰め込まれる内容に悪戦苦闘していた。それでも努力し続ける姿が好ましい。


「無理しないでくださいね」

「わかってるんだけど……」

「わからないところがあれば一緒に考えましょう」

「……ソフィーは勉強が出来るから、俺の劣等感が刺激される」


 そう言って肩を落としてデヴィッドは俯く。

 可哀想可愛らしくてソフィーは慰めるようにデヴィッドを抱きしめた。


「デヴィッド様は頑張ってますよ」

「うん」

「一生懸命なお姿が素敵です。惚れ直しちゃいます」

「ほんと?」


 ちょっと元気が出てきたのか、デヴィッドが顔を上げる。ソフィーが頭をヨシヨシすると照れ笑いしていた。可愛い。


「元気出ました?」

「うん! 元気出た」

「ならもう少し頑張れますか?」

「終わったらもう一度抱きしめてくれる?」


 甘えたように言うデヴィッドが可愛い。なんだこの可愛い生き物はと思いながら、ソフィーは微笑んで返事をした。


 デヴィッドは自分が平凡な人間だと思っているけれど、ソフィーにとって彼はヒーローだ。ヒロインを命懸けで守るなんて主役じゃんと思っている。




◆◆◆




 命の危機を救ってもらって、デヴィッドはソフィーへの気持ちが止まらない。ソフィーに全身を抱きしめられていたように感じて、あの日からソフィーが可愛くて可愛くて仕方ない。


「あー、早く結婚したい」


 呟いて気付く。まだ婚約もしていない。急いで父親にソフィーのことを伝えると、後日無事婚約出来ることになった。


 その後は馬鹿兄が帰ってきて一悶着あったけれど、それも落ち着いてソフィーと楽しい毎日を過ごしている。


 ある日の勉強後、もう一度抱きしめてくれると言っていたのでソフィーに遠慮なく抱きつく。

 こんなに素敵な人が俺の婚約者だなんて信じられない。プロポーズされた時に運を使い果たしたんじゃないかと思っていたが、まさかそれで一度刺されたんだろうか。いや、まさか。


 でもあの時はソフィーを庇わないという選択肢はなかった。ソフィーを守れて良かった。

 彼女が癒しの力を持っていて、これはますます自分はソフィーに相応しくないんじゃないかと不安になった。それでもソフィーは変わらずそばにいてくれるので、彼女が自分を選んでくれたことを信じよう。


 気づいていないだけで自分も少しは魅力のある人間なのかもしれないのだから。少しだけ自信をもってソフィーを見ると、ソフィーは愛しい人を見つめる目でデヴィッドのことを見ていた。





ありがとうございました


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