19 男爵令息の執着
ソフィーを初めて見かけたのは、ウィルソン男爵家でパーティが開かれた時だった。
とても可愛い娘がいるらしいと噂になっていたが、コリンは興味がなかった。どうせ可愛いと言っても噂が大袈裟なだけだろ。そんな捻くれた考えを胸に男爵家に向かって、噂以上のソフィーを見かけて驚く。
彼女は自分の運命の人だと思った。
学園に入り新入生代表の挨拶をしている姿に、運命の人は頭も良いんだなとコリンは誇らしげな気持ちになった。ソフィーと将来結婚するんだと決めた。
夜のパーティで仲良くなろうとソフィーを探していたところ、彼女は別の男と話していた。パッとしない平凡などこにでもいそうな男。自分の方がよっぽどかっこいいし、彼女に相応しいと思った。
学園生活が始まってからも、ソフィーはなにかとデヴィッドに話しかけている。デヴィッドも満更でもなさそうにしているので腹が立った。
ある日二人が植物園に行こうとしている話が耳に入った。コリンの運命とデヴィッドが出かけるなんて許せない。そう思い当日植物園に行き、さりげなく挨拶する。
コリンが去った後デヴィッドがあらわれ、何か話した後にハンカチで汗を拭かれ、手を繋いで歩いて行った。
許せないと思った。二人とも許せない。
コリンの運命に触れたあの男にも、コリンの運命のくせに他の男と仲良くするソフィーにも怒りが沸いてくる。自分が運命の人なんだと二人に思い知らせてやらないといけない。
それからも機会を見つけてはソフィーに話しかけるけれど、ソフィーは上手にコリンをかわす。デートに誘おうとするけれど、何気なく会話を逸らされてチャンスが見つからない。ソフィーとデヴィッドに対する怒りはどんどん大きくなっていく。
毎日コリンはソフィーのことを観察する。
そしてコリンは見てしまった。デヴィッドがソフィーに想いを伝えるところを、ソフィーがデヴィッドに抱きついてプロポーズしているところを。
コリンの運命の人だったのに。
唯一の人だったのに。
唯一の人が離れていくのならどうすればいいのか考えて、コリンは決めた。あの世で一緒になれば良いのだ。
ソフィーと一緒に果てて、来世で一緒になれば良い。デヴィッドの目の前でソフィーを奪えば一石二鳥だろう。良い考えが思い浮かびコリンの気持ちは晴々とする。
準備を整えてあとは決行するだけだ。
――あまり痛くないといいんだけど。
コリンはナイフを手に学園に向かった。




