13 男爵令嬢の勇気
植物園のデート以来、デヴィッドとはたまに一緒に出かけている。
心の距離は近付いているはずだ。しかしデヴィッドは慎重なのか、二人の仲は特に進展する様子もない。
告白とかしてもいいのかなぁ。でも引かれても嫌だしなぁ。まぁ時間をかけて仲良くなるのもいいかと思って、ソフィーは友達以上恋人未満の状態を楽しんでいた。
そんなある日夢を見た。
前世で姉たちと話していた時の夢だ。
「セリ姉、アズ姉、私好きな人が出来たよ」
そう伝えると二人は嬉しそうにヒナノの頭を撫でてくれる。
「ヒナノちゃんは可愛いから絶対上手くいくよ」
「どんな人? ヒナちゃんの良さをわかってくれる人?」
「多分」
三人で楽しく話していると、セリナがヒナノを抱きしめた。
「あー、可愛い。妹が可愛すぎてつらい」
「お姉ちゃん、ちょっとシスコンが過ぎる」
アズサが少し引いている。
「ヒナノちゃんもアズサちゃんも私の大切な妹だし、どれだけ可愛がっても良いと思う」
キリッと言うセリナが面白い。
「でも私もお姉ちゃんとヒナちゃんが大切だし、生まれ変わっても姉妹になれたらいいなぁ」
「私もそう思うー!」
ヒナノがアズサに同意すると、うんうんとセリナが頷いていた。
目が覚めた時、もしかして姉たちもどこかにいるんじゃないかと思った。
そんな都合の良いことないかもしれないけれど、ヒナノがここにいるんだから可能性はゼロじゃないかも。そう考えると何かしないといけないような気がしてきた。
考えすぎて上の空になっていた時、デヴィッドに話しかけられた。
「ソフィー嬢、何か悩んでる?」
「あ、デヴィッド様」
気にかけてくれたことが嬉しかった。
「少し悩んでいることがあったんです。でも悩んでいても仕方ないことだとわかってて……。気持ちを切り替えるのは難しいですね」
デヴィッドが、そうだねと相槌をうつ。
「俺に出来ることある?」
あるかなぁ? そうだ!
「そうですね。それなら気分転換に明日のランチに付き合ってください」
デヴィッドは、喜んでと言って嬉しそうに微笑んだ。
デヴィッドとのランチ中、たくさんの人が食堂にいることを確認して勇気を出す。
もしかしたら、万が一があるかもしれない。ダメで元々。今回ダメでもまた何度でも試してみればいいんだから大丈夫。ソフィーは心を落ち着かせて声を出す。
「そういえば最近小鳥を飼い始めたんですが、可愛いんですよ。ヒナノって名前をつけて可愛がっているんです」




