12 男爵令嬢の一年目
デヴィッドとの待ち合わせ時間はもうすぐだ。
ソフィーは手鏡で自分の姿を確認して、完璧な美少女だと改めて思う。
学園に入学して原作通り新入生代表の挨拶をした。原作と違いハキハキと元気よくなってしまったけれど、まぁ許容範囲だろう。チラリと会場を見渡すと、顔を赤くするデヴィッドが目に映る。それに比べてエドワードは特になんの感情もなくこちらを見ていた。
夜のパーティは一人で参加し、さりげなくデヴィッドを探す。タイミング良くぶつかり問題なく知り合いになれた。お互いに自己紹介した後デヴィッドのことを聞いていると、子爵家の跡継ぎだと言う。
なんでも消えた兄の代わりに次男のデヴィッドが跡を継ぐことになったらしい。チーズケーキが好きな侯爵令嬢の話を聞いて、前世の姉を思い出し懐かしい気持ちになった。
しかし、と思って目の前のデヴィッドを見る。
もっと地味な感じを想像していたのに、思っていたより素敵に見えた。跡継ぎになることが決まって多方面に努力しているのかもしれない。まぁ、ソフィーと仲良くなる時点で原作とは違ってくるだろう。
学園生活は特に何も起こらなかった。
ソフィーは美少女なので告白やラブレターを貰うのは頻繁にあったが、真面目に対応すれば特に問題はない。
エドワードとブライアンとは接点もないし、好かれることもなかった。なのでヴァイオレットからのいじめもない。と言うよりエドワードとヴァイオレットはとても仲良く見えるし、ブライアンは何故かパトリシアと婚約していてそちらも仲が良く見える。ソフィーの学園生活は平穏無事だった。
デヴィッドとは良い感じになっている気がする。パーティの後もなにかと話しかけるソフィーに戸惑っている時もあるけれど、嬉しそうに話をしてくれる。
モブだったデヴィッドが好きだったけれど、今ではそんなのどうでも良かったなぁと思う。
モブだろうがなんだろうがデヴィッドはデヴィッドだ。そして優しく努力家のデヴィッドをソフィーは好ましく思っている。
デートしたい!と思ったのだから、すぐに誘う一択だ。植物園でのデートの約束を取り付けソフィーのテンションは上がっていた。
そのまま当日、可愛いと言われること間違いなしのワンピースを着てデヴィッドを待っている。ふと目の前に人が来た気配がしたのでデヴィッドかと思って顔を上げると違った。この人は、同じクラスの男爵令息だったか。
「こんにちは、ソフィー嬢。待ち合わせですか?」
「えぇ、デヴィッド様とご一緒する約束をしてるんです」
「デートですか? 楽しんでくださいね」
男爵令息はにこやかに言うと、また学園でと言って去っていった。知り合いに会うこともあるよねと思っていると、デヴィッドが走って現れる。
「ご、ごめん! 遅れた?」
「まだ時間前ですよ」
焦っているデヴィッドの額に汗が流れる。ソフィーがハンカチを取り出して汗を拭った途端に、顔を真っ赤にしてデヴィッドは固まった。
カチコチになったデヴィッドがおかしくて、つい笑ってしまう。
「ハ、ハンカチ洗って返すから! 早く入ろう」
行動も慌てたのか、デヴィッドはソフィーと手を繋いで歩き始めた。気付いた時にまた固まるんだろうなと微笑ましく思いながらソフィーは繋いだ手を見つめた。




