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第70話 退院に向けての心のケア

 トラウマの解消は、その原因となる出来事がなかったことにするのではなくて、あったことを認めたうえで、次同じ目に遭ったとき乗り越えられる自分というのを明確にイメージすることだけが本物です。

 膝を突き破って足が生えてくる幻覚や、成長痛の数百倍の痛みが留まるところを知らないで襲いかかるのを、薬で誤魔化すと言っても完全にトラウマとなる種類のものなので、


 ここからの痛みが鈍化しつつ成長超加速を減速していく過程の中、退院後のフラッシュバックに一人で対処するためのカウンセリングを始める。


 苦痛に耐えられない時食べるとしばらく痛みが引く脱炭素花穂の摘み取りと仕上げ方を共有。実際に使うかどうかではなくて、一番辛い時を何とかしてくれたモノを自分で作れるようになるってことがもたらす自信が大切。


 デニスもさすがにご両親とわたしとの区別はつくようになってきたようで、説明に従って一緒にとってきたハーブの花穂を黙々とほぐしてお皿に平たく伸ばしてる。


 これをオーブンに入れて110度60分、120度30分、115度45分等と条件を振って出来る風味の違いを一緒に食べて身に付ける。


「少し苦いですね、こちらは香ばしい感じで……、あっ!いただいてたのは115度45分のやつなんですね。」


「そう。この窯で115度45分のものを渡していたけれども、窯というか過熱の伝導具合によって全体に均質に伝わらなくて局所が先に反応しちゃうかとかによっても変わるから、普段使うところの調理器具をもとに試してみてね。」


 この脱炭酸花穂を起点にバターに混ぜたハーブバターペースト、リーフを乾燥させて熱湯で抽出するハーブティー、リーフを混ぜた癒しのハーブスパゲッティ、 焼き上げ時に同時に脱炭酸する豪快なバターハーブケーキなど、マリーはコーヒーショップのレシピ一通り伝授し、デニスはそれをひたすら書き取り実験して身につけていく。


 流石に巨大パフェのレシピは彼に関係ないから教えてないけどね。


「このレシピは素晴らしい。人類の共有の財産ですよ!出版して残しましょう!」


 デニスはレシピを取りまとめたノートを手に取りはしゃいでいる。退院したら私とデニスの共著の、このレシピ本を出版するらしい。ある意味商魂たくましい人。


―――

 こうしてデニス・バロンとそのご両親、そして付き添いの執事が新しい顧客として定着した。


 そして彼らはたぶんねずみ算式に客を連れてくる。男爵家といえど貴族の人脈舐めてはいけない。


 こうなると常連だけの場所というわけにもいかなく、ちゃんとした食器、ちゃんとした家具、ちゃんとしたメニューにマッチとか、店の名刺とかそういうのも用意しなくっちゃ。もちろん店の名刺は舌の上で溶ける名刺で。

 足を治している物語なのに、肝心の足の治り具合は本文に一言もないですね……(汗)

 まぁ、「なにも言うことがないくらい完璧な治癒」だったということにしといてください。

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