第 6話 治癒を祝って真心込めてケーキを焼く
前話のケーキは目のくすりで味よりも効き目を追求してましたが、今度は美味しく食べるために調整します。
「ただいま〜」
ボブが週一回の検査から帰ってきた。なぜか今日はとても顔色がいい。イケメンは笑顔に限る。本当は私を見て笑顔になるのがいいのだけど、悲痛な顔してるよりよほどいいわ。
「若年性緑内障の前回の診断は誤診だってさ!眼圧は正常。視力も前よりぐんと良くなったみたい。」
まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のような喜びように、こっちまで嬉しくなってくる。さすがにおもちゃを手に入れた子供みたいと本人に言うのは憚られるので少し濁す。
「まるで、新しいスキルを覚えた戦士みたいな喜びようね! なんにしてもよかったわ。」
「骨も治ったし、視力の心配もなくなった……」
そこまで言うと、少し笑顔に翳りが見えた。
「何から何までお世話になりました。きっとこのご恩は返させていただきます。」
なるほど。ボブにとってはここに居る意味がなくなる。2人は打ち解けてまるで家族のように過ごしてたけど、もともと赤目の……もとい赤の他人。
ボブとしても動けるようになればここを去らなくてはならないという力が働く。それに明示的に治療料は金額化してないけど、消費したリソースの補償をするとなれば、ここではなくて地元で働いて稼いでこないと仕方がない。巣立ちの時が来たのだ。
マリーにとっても一人で過ごすのとイケメン侍らすのどっちがいいかといえば考えるまでもない。しかしイケメンだからといって自分のヒモにしてしまうと、つまらない男になってしまう。
やはり男は自立して少しくらい自分が知らない世界を吸収してくれたほうがイケメンが際立つというものだ。寂しい気持ちもあるけれど、気持ちよく送り出すしかない。
それでも、誤診じゃなかったと思うのよね。ケーキによる「治療」が効きすぎたって話で。でもケーキ食べて病気が治ったなんて誰も信じちゃくれないわね。ともかく、お祝いのケーキ焼かなくっちゃ。
この薬草が加熱の脱炭酸で大化けするのは座学で知ってたけど、練り込みすぎたケーキはほんの少しで強烈に効いた。特に花穂の部分は薬効成分が特に集まり脱炭酸の手順を踏まなくても毛細血管までありとあらゆる血管を拡張して血の巡りを良くする作用がある。
同じ血液に対して血管が緩くなるので血圧も下がる。血圧が下がり血管が柔らかくなることで血管が妨げてた他の体液の流れが正常化されることもある。それを狙って作ったのもあって非常識な濃さで、耳かき一杯分で効くので、ケーキを食べたって感じがしない。
お祝いのケーキはスイーツとして満足できるような分量食べてもらえるように、花穂じゃなくて、葉っぱをみじん切りにしたのを入れたマイルドなハーブバターで焼く。うーん。良い香り。ばっちりキマったわ。
花穂はくすりですが、同じハーブの葉っぱと種子は食べ物です。




