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第65話 デニス・バロン

草むしりやどぶさらいのクエストでボブのお得意様だったデニスの旦那です。

 ♪〜カララン


 「いらっしゃいませ」


 車椅子に座った品のある装いに身を包んだ男と付き添いの男が来店した。今日は常連夫妻は夫婦そろって来店してるので四人で店内はキチキチだ。


 常連夫妻の奥さんがその男の来店に気が付くとサッと席を立ち挨拶をする。


 「その節はご尽力ありがとうございました。」


 男は声に愁いを含みつつ穏やかに応える。


 「あれは、私自身のためにやったことです。結果として貴女と利害が一致したというだけで、あなたのために尽力したというわけではないです。」


 そして自嘲するように続ける


 「今から思えば滑稽ですな。政府のあの手の決定に対して客観的事実や物的証拠を突き付ければひっくり返るなんて本気で思ってたんですからな。向こうは結果ありきで動いてるのに」


 「でも、おかげさまで、夫も無罪が証明されて今日も一緒に暮らせているんです。」


 「お役に立てたようでなりよりです。」


含みがある言い方だ。


 「私は私の目的のために探しましたよ、マリー・ジェーン・ラスバン先代聖女猊下の次の就労先。まさかこのような世を忍ぶような隠遁者の庵だとは思いませんでした。」


 「あなたほどの情報通の方が見つけられなかったのですね。」


 「気付いてなかったのですか?この緻密で超強力な結界に?ご縁のない人はここに到達することが出来ない結界が施されているのですよ。使いの者は縁がないので発見できないから公式の情報としては残らない。自らの足で動き回らなくてはここに来れない。しかしわたしの足はご存じのとおりだ。」


 二人で会話が弾んでいるところに冷水かけるわけにも行かず、マリーはお冷やとお絞りを渡すタイミングを逃し、テーブルにそれぞれ置いて声だけかけておく。


「お冷やとおしぼり置いときますね」


 会話の中に居ないが、はじめからずっと話の中心にはマリーが居るというのに鈍感な人だなと常連の旦那さんが苦笑している。


 「マリーさまの徳を慕って集まっているというのに、マリーさまはずいぶんとドライですなw」


 「えっ?名物ハーブスパゲッティじゃなくて私になんか用なの?」


 「わたしと妻はハーブスパゲッティと癒しのハーブティー。デニスの旦那の注文は直接聞いてきてくだされ。」


 「かしこまりました。ハーブスパゲッティとハーブティーを2つですね。」


 いつも情緒不安定気味だった常連夫妻の奥さんのしゃべくりが落ち着くのを見計らってスパゲッティを入れてタイマーをセットして注文聞きに伺う。


 「ご注文はお決まりですか?」


 「私の足への治癒魔法を施術していただきたくはるばるこちらまで参りました。」


 ハァァァ?!


 「その話はまた今度伺います。お食事、お飲み物のご注文はお決まりですか?」


 「ハーブスパゲッティと癒しのハーブティー」


 ただの冷やかしじゃないみたい。本当に後で聞いてあげなくちゃ。

マリーが死刑執行の聖女印を押さなかった裏で冤罪を証明して無罪を勝ち取ってたのが最初の常連の空耳おじさんでした。

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