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第64話 常連客夫妻

 最初の常連客夫妻の過去が明かされます。

縁が無い人には入ってこれない場所なのに余裕でやってきて「出来ればスパゲッティ」とほざく謎の常連客の裏には強固な縁がありました。

 ボブに任せてる王都売店のほうは最近新しいお客さんが来るようになったという報告を受けている。とりあえずボブ失職への贖罪はこれで大丈夫よね。


 他方、本店である森の家のほうは相変わらず常連さんは一組だけ、それも夫婦一組。しかもなんかほっとけない奥様。普通は旦那のみが来て寡黙にスパゲッティ食べて帰っていくが、奥さん連れてきたときは、奥さんが情緒不安定になって泣き崩れてしまう。


 今度旦那一人できたとき奥さんのトラウマについて聞いてみようといつも思いつつ、特にきっかけもないからいつも聞き忘れる。求められないことは何一つやらないのがプロだが、私も自営業者の一個人なんだから、気になること聞いてみてもいいわよね。ほっとくと忘れるのでレジ裏にメモを貼っておく。


 いつも聞こうとしてた時には奥さん同伴で聞きにくいし、1人の時には聞くのを忘れる。1人でご来店なら聞く、2人でご来店なら次回持越しと分岐までメモしておく。まあ単なる好奇心であって、知る必要はないことなのかもしれないけどね。


 メモを貼って以来、なぜか毎回奥さん同伴、たまに一人できたかと思ったらあとから来たり、奥さんだけできたりが続いた。いちいち腹立つわw。なんかメモに書くとその事態が起こらない呪でもかかってるのかしら?


 もういいやと思ってたある日、旦那ひとりで来たので、ついに聞こうと近づくと、


「スパゲッティとハーブティー。」


いつも通り注文してきた。 そしてハイハイとキッチンに行って用意する。余計な世間話が介入する余地はどこにもない。


 スパゲッティとハーブティー、食器を用意して席に向かい、給仕を済ませるとついに聞ける絶好のチャンスが到来したので、畳み掛けるように聞いてみる。


「前から少々気になってたのですが、奥様がこちらにお見えになったとき、いつも何かに怯えている様子ですが、どうかされたんですか?わたくし、最近こちらでお店開いたので、知らないですが、以前に何かこの付近にトラウマでもお持ちなんじゃないかと。」


 男は驚いた様子で、怪しいぐらい強く否定する。


 「いいえ、妻は断じてこの場所にトラウマがあるのではありません。毎日欠かさず寝起きと3度の食事の5回、このお店の方角に礼拝してますが、その習慣が始まったのは連れてきたあとのお話です。」


それ、トラウマよりも重症じゃない?


 「かつて私が冤罪で死刑になるとき、妻は私の無罪を証明すべく奔走して証拠を集めて帰ってきた日は当初の執行予定日を過ぎており、間に合わなかったと落胆してたのですが、その時聖女さまの死刑執行許可印が取れず伸びていたのです。それ以来、『聖女さまはちゃんと見ておられる』と信仰を深めてしまったのです。」


 この常連客、私が王宮を追放された原因となったその人だったみたい。でも、この人は別に普通に接してるのに距離があるはずの奥さんのほうが熱狂的信奉者になるってどういうこと?


 「私は、自分が何もしていないことを知っていましたから心穏やかなものでしたよ。それで愚かにも処刑しようものなら一方的に政府が悪いだけで、自分は善良なる人として人生が終わるか終わらされるかまで生きるだけですから」


 このおっちゃん、奥さんとは違う方向に振り切れてヤバい人だった。

 この常連客夫妻、尊いですねぇ〜。

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