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第63話 幕間(おまけ)マリー最後の神秘体験

この後で登場する四肢欠損も治癒する聖女の規格外の治癒魔術を神秘的な存在から授かるお話です。

 聖女修行の最終試験を終えて、大秘儀としての一年の単身神奈備(かんなび)山での山籠り。

 この期間中は、暑かろうが寒かろうが具合が悪かろうが文字通り漱水枕石、川の流れで口をすすぎ、石を寝具に洞窟で寝る日々だ。テントや寝袋といった快適装備はおろか、本来は服すら持ち込めない。持ち込めはしないが、学んだ成果でそこにあるもので作ることは許されている。


 満願達成まであと約半月の17日と半日…、いいえ420時間残した夜のこと。いつものように水源地から流れる川の第一の滝の奥にある洞窟で岩場を枕に寝ていると夢枕に尋常ならざる神気を感じ、目を開けてみると洞窟の出口の方に雌雄一対のライオンがこちらを向いて様子をうかがっている。


 死んだふりは無駄ね。ライオンたちは殺意を持っているのではなく、食欲で行動するとその必然として食われた生き物は死ぬというだけ。死んだふりしてればとどめを刺す必要がなくなったとばかりにそのまま食われるだろう。そしてそれもまた何故か恐怖を感じず自然なことであると受け入れられる心境であった。


 しかしながらその雌雄一対のライオンは微動だにせず、ただこちらをみているだけだった。そして、何故か石の枕が柔らかい。?なんだろうと上を見上げると、城壁のようなデザインの冠を被ったとても美しい女性がたくさんの花穂や食べ物を溢れ出しているコルヌコピアを脇に置き、膝枕してくれていることに気がついた。


 ひゃぁ!とびっくりして起き上がり非礼を詫びるが、気にしてる様子もなく、恐ろしいまでの神気を放ちながら穏やかに語りかけてきた。


「よく頑張りましたね。最後の奥義を伝授しましょう。」

 

 彼女がそう言うと、視界が渦を巻き極彩色の光に包まれて、自らもその渦巻きに呑まれる幻覚を見た。


 そして彼女が寡黙に松明で照らして光を当てるものひとつひとつから様々なビジョンが一気に流れ込んでくる。


 彼女が言葉にした訳では無いが脳裏には――ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。種子が水で発芽しその芽を構成する毛細管現象で流れを生み出し、その流れにより物質をあるべきところに届けた結果根となり茎となり、枝葉となり、作られた構造により流れがさらに加速して生命を形作る。流れが滞留しているように見える場所にもそこにいまあるのとは異なる小さな流れによる別の流れによる別の形を形成する……それはかつて我々が腐敗と呼んでいたものも、振幅が極端にスケールダウンしているが確かな別の流れとしてやはりまた全体の姿を形成する一要因となっている。同じ作用は素粒子のスケールから生き物、地形、宇宙にまで同じ仕組みに従っていて命ある限り、隅々まで遍く流れている生命が再生成しつつ維持している――というビジョンを一瞬にたった一語を聞くよりも短い時間で、松明で光を当てたひとつひとつの対象から毎回脳内に強力に流れ込むように感じた。


 間違いない。このお方は原初の至高神ΡΕΑ(レアー)様だ。時と万物の流れを司り今の世界を形作った、封印されたいにしえの女神。――時空の中に失った大切なものをそのものを取り戻すのではなく、同じものを何度でも何度でも形成する神秘的な作用――。


 失ってしまったたものは仕方ないけれども代わりになるものは求めるものがある限り何度でも再生される。


 そのビジョンを受けたマリーは、血管を拡張して流れを隅々まで行き渡らせれば、肉体を再生することもできると確信し指導理性(ト・ヘゲモニコン)としての種子の作り方も手に入れた。

「安らかな流れ」を意味する女神ΡΕΑに認められて奥義を伝授されますが、何か勘違いして理解してます。

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