第57話 幕開(おまけ)Sランクパーティー昇格の祝賀会で飲んでたら隣のFランクパーティーに発泡酒のピッチャーくすねられた上に瓶ビールまで強奪された件
一応、カクヨム版では別の物語とのリンクがあったのですが、こちらでは作者のカメオ出演(気の弱そうな男役)ってことで……。
エリーヌはSランクパーティー『白金の触媒』のリーダーである。かつてはベアトリーチェ女王の密命により女王の病を治癒するために白金鉱山での特別な白金の採掘を独占的に受注しており、瞬く間にAランクパーティーへと安定した成長を遂げ、ついにベアトリーチェ女王の病を全快させた功績としてSランクパーティーに昇級し、エリーヌも同様にSランク冒険者に昇格し、ベアトリーチェ女王直属近衛女騎士の官職も得た。
一瞬良さそうな話に見えるかもしれないが、これは「アガリ」であって実はあまり良い話ではない。つまり稼ぎ頭の案件が目的を達成してしまい契約満了ということだ。
この案件の存在を前提とした組織運営は出来ないが、自腹を切り続ければギリキープ出来るという崖っぷちにエリーヌは居た。そういう複雑な裏事情のある昇級の祝賀会を、やや王都からは離れた地域の冒険者ギルドの支部で行うことにした。
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複数の円卓の回るテーブルにはワインに日本酒のボトル、それに瓶ビールとピッチャーが無造作に置かれている。
料理も一応一番いいコースを選択したが所詮マスプロでプリセットされてるお店おまかせのコースの中で一番良い選択肢というだけで、要するに松竹梅の松コースということだ。Sランクとしては慎ましやかな宴会としか言いようがない。まあ、こういうものということで。ありきたりなサラダに、お新香、揚げ物、鍋、シメの卵とじラーメンといったありふれたコースである。
「白金の触媒」のメンバーが予約席に案内されて着席し始めるころには、隅に一組の先客がいた。
対面のテーブルに気の弱そうな男と巨大な女性が座っており、備え付けの塩をいくつも使い果たして出来た空き瓶の山と枝豆の殻を皿に積み上げ、ピッチャーの発泡酒を2人でグラスに移しながらちびちび飲んでる。アテは枝豆の殻に塩を付けたのを舐めてるだけだ。
あぁ、お酒ってのは嗜好品だから人の数だけ飲み方があってもいいわね。私たちはああいう飲み方しないけど。
すると突然うちの円卓の真ん中のピッチャーが空になり、代わりに気の弱そうな男のピッチャーが満杯になっている。
いったい何が起きたのか分からない?何かの魔術だろうか?
確かにうちのピッチャーがひとつからになり、向こうに奪われてる。証拠見せろよと言われても何も証拠はないが、あの二人組によってうちらの発泡酒を空けられたのは明らかだ。フリードリンク飲み放題の対象だから別に構わないのだけど、何とも腑に落ちない。
そしたら今度は、相方の気の弱そうな男による必死の制止を無視して発泡酒のピッチャーを持ち、ドスドスと地響きさせてうちのメンバーの騎士や魔導士たちの座る円卓へと真っ直ぐ突き進み、中心に置かれた瓶ビールを掴み、周りをキョロキョロ見回して……、ビールのあった場所に発泡酒のピッチャーをドスンと音を立てて置いて堂々と瓶ビールを持って立ち去ろって言った。
実に客層が悪い店だが、瓶ビールもフリードリンク飲み放題の対象だから別に構わないのだけど、今のはいったい何だったんだろう?
飲み放題、食べ放題は物足りないリスクの所在を付け替えてそのリスクの転嫁、つまり保険料として値段に上乗せしているだけで、その金額で無限に食べ物が出せるわけじゃない。だいたいこれくらいっていう目安があるから出来るだけで、本来の歪んだ商取引慣行ですよね。




