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第54話 神奈備の山パフェの取り分

それでもやっぱり、がめつく他所より多くくれと主張する国がありました。

 「わがバビローナ帝国の市民と元老院は神奈備の山とここからここまで国境線を有してる。よってパフェの分け前も同じだけ要求する」


 山パフェを取り分けていたら、最近半島を征服したばかりの新興王家の若旦那であるビットリオがこの調印式典に出席して、山パフェをかなり多めに要求してきた。そんなに食べたら危ない。しかし新興国の王家には余裕がない、ここで舐められないためにも強く出なくてはならないという立場はわかる。


 マリーはハーブ冠をかぶったままの聖女姿で笑顔を絶やさぬまま、そっとたしなめる。


 「そんなに食べたら体に毒ですよ。儀礼ですから形式的に持って行くまでは良いですが、必ず残してくださいね。大地は残り物をも他のものと同様に原子の中に拡散し、創造的理性のもとに取り返してくださいますから。無理にあなたの身体を通す必要はありません。」


 しかしビットリオには逆効果だった様子で、意地でも残さず食べてぎゃふんと言わせてやるというギラギラした眼光を輝かせて答える。


 「聖女さま、私どもを侮らないでくだされ。これしき食べられずして、どうして自国の利害を代表してこの席に立てますでしょうか。」


 「あっ、いやそういうのいいから自分の身体は自分で守らないと死ぬよ?」


 「チビだ、短足だと言われ、ここで男上げずしてどこで上げる。」


 「私、そんなこと言わないから。体格とはあんまり関係なく人間として食べられる量と食べられない量があるので。」


 「止めてくださるな聖女どの。」


 再三にわたる忠告を無視してとびきり大きく切り取って食べ始めた。明らかに4人分はあるわね。完全にオーバードーズ確定。あーあ、知らない。


 わたくしマリージェーンラスバンを正統と認める新教国もそれぞれでベアトリーチェみたいに言う事をたったひとつも違わないようにしようとする王も居れば、このビットリオみたいにがめつく自分の主張を変えない頑固者もいる。


 新教国、旧教国といったところでそれぞれ一枚岩ではないし、信仰というよりは外交関係の陣営といったほうが正確に表してる。それは人の思いによって決まるのではなくそれこそ今回のように水系であったり流通網の接続であったりにより決まる。中にはベアトリーチェみたいな狂信者も居るけど。


 各国それぞれにパフェを取り分け、これからポットのハーブティーを注いで回ろうとしたらビットリオはすぐさまガツガツと取り分けたパフェをがっついてる。


 あの……。大食い的な意味で、一人では多いって言ったわけじゃないからそんな5分や10分食べる時間稼いでもなんの意味もないわよ。


 このビットリオも可哀想な人なので聖女という立場から責め立てる事はしないけど。前提が間違ってるから自らの報いを受けることになるわ。

劣等感と被害妄想炸裂のビットリオに優しくたしなめるマリー。私はこのマリーが大好きです。

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