第51話 だから面倒くさい
この物語に真性の悪者はいません。ただし数で圧倒されたりはして思惑の違いがいろいろあります。
拉致の懸念は杞憂に終わった。しかしその対策のためにベアトリーチェに借りが出来た。水源地問題の調印セレモニーの司祭をする話だった。
定休日取られての二週連続勤務は労基法違反だから経営者といえどボブに示しをつけるためにも当然休むけど、準備はしとかないとね。だから王太子絡みの仕事はめんどくさいのよ。
やることがないから道草でも食って……いやその「食う」じゃなくてね。神奈備の山に、素材を探しに行き、ちょうどいいのがあったから摘んで、ボブのいる王都の売店にでも行くか。
山を越え谷を抜け、王都の聖マリー・ジェーン・ラスバン公堂へと向かう。寄進された聖堂を拒否してみんなのものにしなさいとした結果名前が付いた公堂となったが、別にわたしのものじゃない。だけど王都にもお菓子とお茶を届ける拠点として、売店とキッチンの利用権は確保してある。
売店の経営は基本的にボブに任せっぱなしだけど、うまくやってるかしら。
公堂は王都の一角の可愛らしい商店街のひときわ可愛らしいお店のような姿だ。そこにボブみたいなイケメンが売店にいるんだから失敗するわけがない。ベアトリーチェもいくつになっても女の子なのね〜。
そしてメルヘンチックな街のメルヘンチックな公堂の扉を開くと、そこはガンジャの煙がたちこめドレッドたちがたむろしてる異様な光景だった。まぁここはみんなの場所だから、レゲエやってちゃいけないってことはないんだけど。
店内に入っていくと背負ったハーブを見てドレッドたちが、ザイオンの乙女降臨と大騒ぎし始めた。さすがに少し引く。コーヒーを敬遠して一定数来なくなると商売上がったりでボブに申し訳ないからと引き受けたカリオモンが効きすぎたみたい。
ボブが居る売店のキッチンへ向かう。ボブは食器を磨いてる。
「繁盛してるみたいね。」
「あっ店長。来てくれたんですね。」
「いいえ、今日は本店は定休日でオフ。暇だからこっち来たの」
「店長来ると見張られてるみたいで落ち着かないなぁ」
ボブは苦笑しながら軽口を叩く。
「自立心育ってて大変よろしい。」
わたしも別にボブのことを使用人だとは思ってない。店のことは基本的に任せてる。というか、わたしのせいで職を失ったんだから職場の提供は罪滅ぼし。
「トラブルとかはない?私が出れば何とかなる場合呼んでくれていいのよ。」
「トラブルはないですけど、客層が固定しちゃったみたいです。」
うん。知ってた。転生者たちの異教徒集団、決して悪い人たちじゃないんだけど、なかなか輪の中に入りづらいわよね。
一つの手としては、彼らの店として割り切ってしまうのもありなんだけど、公堂がまるで彼ら専用みたいになるのもね。別に彼ら専用ではないのだけど、他のお客さんも入れる場所というのはアピールしておきたい。
そもそも、彼らがここに集まるのは彼らの居場所がこの王都にあまりないのが原因だから受け入れ場所を用意して分散させるか、動員をかけて彼らが居ない期間が出来るとその期間のうちに彼ら以外にもうちの売店の存在感をアピール出来る。
あと、暴力もないです。代わりに迷惑行為があります(笑)




