第49話 後夜祭part2
みんな大好き「もう遅い!」です。ええ私も大好物です。
ポットからハーブティーを注いでクッキーとともに王太子に勧める。かつては婚約者として毎晩毎晩いつものことだったけれども、時の流れは残酷ね。
何もかも今さら後悔したってもう遅い。
私たち2人の関係で閉じてないから。あるいは私たちだけならバカ王子を許すことも出来ただろう。しかし今もしもそのようなことをすれば、何千人もの利害関係者を路頭に迷わすクーデターになる。
そもそも、システムの要求に応じて形式的にハンコを捺すマシーン聖女が必要だったから、システムにより新聖女が用意され私はシステムから切り離された。
システムに依存して生活してる人は多い。それを王太子だろうが真の聖女だろうが楯突いて多くの人を路頭に迷わせたんじゃ私たちが罪人だし。
マリーは、涙しながらゆっくりと、そして冷酷に言い切る。
「お互い違う道を歩んで安定しているところで今更よりを戻そうだなんてもう遅いわ。私が赦せばそれで戻せる段階をとっくに過ぎてしまってます。お友達から始めましょう」
王太子は皮一枚で繋がった当代の真の聖女との関係に心から感謝し、クッキーとハーブティーを拝領し、ゆっくりと食べた。
とてもリラックスした様子で自席へと帰っていった。そして集まってきた他の参列者たちにもポットいっぱいのハーブティーとクッキーを配り、リラックスさせる。このハーブティーとシード入りクッキーはお神酒の興奮効果とカウンターになる鎮静効果とリラックス効果がある。
お神酒で神と対話し、ハーブティーとクッキーでこちらに帰ってくることでこの祭祀は完成する。途中で病院に行ったのは予想外だったけど、これにて一件落着。一応聖職者の説教の一つくらいしておきますか。
「聖マリージェーンラスヴァンの霊魂はもとより大地の神と一体であり、怨霊などどこにも居ませんでした。ないものは召喚できない。当たり前のことです。あなたたちが見た怨霊や祟りというものは全てあなたたち自身の想像力の中にだけあった虚像です。しかし想像力を舐めてはいけません。都会にはまだ見ぬ在りもしない破滅を想像し自ら命を断つ者がたくさんいます。バビロンシステムもその想像力によってあたかもあるかのごとく見えている虚像です。良い未来を想像するようにしてくださいね。」
長い説教を参列者たちはリラックスした様子で聞いている。この国もバビロンシステムの呪縛から解き放たれればいずれ復興を遂げることだろう。
そして用事を済ませたマリーは、引き留めも帰宅部全国大会優勝の実力で全部断り帰路につく。
より強烈で、跳ね返すことが絶対に不可能な「もう遅い」です。こうなってしまったらじんわりとひとつひとつ作り直していくしかないんですな。




