第47話 祭祀明けの営業
マリーは王宮の用事があっても営業日を死守します。スローライフカフェもの読んでていつも思ってたんですよね。店はどうしてるんだよ?って。
定休日明けの初日、まるで開店を待っていたかのように店を開けたらすぐに、常連さん夫妻が来ていた。しかも今日は奥さんが寝ぼけ眼のダンナを引っ張る形で。
マリーを見るなり「やはり行かれなかったのですね!御身になにかあったらわたくしこのあとどう生きていけばいいのかと……。本当に良かった。よくぞご無事で!」
常連さんの奥さんが泣きじゃくりながら何か言ってる。話を聞くと、アリンス国の新しい神殿のこけら落としの王太子も出ている国家規模の大きな祭祀で集団食中毒が出たとのことだった。あぁ、あの会場のことね。
みんな蓬莱酒飲んでるから強力な消毒作用で食中毒と言っても大事にはならない。寝てれば治る。大げさだなぁ。
まあもう一回次の定休日に行くことになってるしその時に診てあげましょう。
それにしてもこの奥さん、私にえらいご執心だけど一体全体何かしら?流石に本人に聞くのもアレだから今度ダンナにでも聞いてみましょうか。
ポットのハーブティーを注いで、お茶うけ菓子のクッキーをお出しする。
奥さんは手を合わせありがたやありがたやとクッキーを手にして時間をかけてゆっくりゆっくり食べてる。
それ、葉っぱをあえて軽めの脱炭酸にして栄養豊富なシードを混ぜ込んだ風味優先のクッキーだから花穂をフル脱炭酸したケーキみたいにそんなに気をつけなくてもパクっていっても大丈夫なんだけど…。まぁ悪いことじゃないからいっか。
「スパゲッティでいい?」
ここのダンナは「出来れば、スパゲッティ」と言って以来毎回スパゲッティだが、さすがに毎回同じソースというわけにもいかないので、味付けは来るたびに変えている。
ナポリタン、ぺぺロンチーノ、ボロネーゼ、チーズと来たから、次はハーブね。
ハーブのスパゲッティソースの定番はバジルだけど、今日は昨日から脱炭酸して仕込んだうちと言ったらコレというハーブソース。平穏を象徴する木の実の油でじっくり加熱して炭酸を飛ばして、食べる人の鬱憤も飛ばす逸品!自信作よ。
ご夫妻は、ゆっくりゆっくりと食べて、食後はポットからハーブティーを注ぎながら気持ちよさそうにリラックスしている。今日もばっちりキマッたわ!幸せそうなふたりを見てるとこっちまで幸せな気分になるわ。
それはそれとして祭祀でもってかれて在庫が寂しくなったお酒、また仕込んでおかなくちゃ。
あと、あの古狸ベアトリーチェめの、こっちの足元見た案件への対応準備しとかないとね。こっちはコンテナ一つ分の書類の山だったけど、実質的に具体的に起きた訴訟と背景、結末の明細が全部ついてたからすごい量だったけど、ベアトリーチェが全部水源地問題に還元して、あとは水源地を聖女領としていずれの国にも属さず、いずれの国も適正利用出来るものとする条約を飲ませるためにセレモニーを開いて欲しいというだけの重たいけど簡単な事だった。
ベアトリーチェ、意外に名君ですね。たくさんの訴訟の裏にあるのは水源地問題が原因だと見抜いて、発散するストレスではなく、根源を断とうとしてます。




