第44話 御霊会
参列者たちは、マリーの怨霊を慰める儀式として参加しています。なので祭神はマリーなんです。祭祀するのもマリーなので、マリーが映る鏡に向かってアブサン……もとい蓬莱酒を飲み、神様(=マリー)と、同じ杯を共有します。
レインフォードは事前の打ち合わせの通り、祭壇に丸い鏡を設置した。神式の儀式では普通だとマリーに説得されたがいまいち納得できない。
お神酒は、祭壇の脇に、緑の蓬莱酒、黄色のキュケオン、赤のソーマを置いておく。マリーが来てからお供えするから準備中は3つ揃ってれば別に良いとは言われたがなんとなくこの順番でなくてはならない様な気がした。
蓬莱酒の脇に、角砂糖とスプーンと神奈備山の霊水を用意し、杯を3つ、お皿を2つ鏡の前に置く。
マリーに言われてた準備はここまでだ。会場となる壮大な神殿には参列者用の折りたたみ椅子がぎっしり並べられ、これから大きな祭事が行われる事を予感させる。これは王太子のほうで手配したようだ。
気心知れた仲間内で「長老」として指導的立場にいたが、ここはいうなればバビロンの敵陣ど真ん中。頼まれたこととは言え押しつぶされそうなプレッシャーを感じる。
この穢らわしい場所に至聖なるザイオンの乙女を呼んでしまった。自責の念に耐えられず、ポケットからガンジャを取り出し、1本キメる。
ストーンして周りのことがどうでもよくなっているうちに人々が集まりだした。あれやこれや悩んでも仕方ない。なるようになるさ。
鏡の前に立ち込めたガンジャの煙を太麻で払いながら「祓い給え、清めたまへ、神ながら幸い給え…」と長老が唱える。やはりザイオンの乙女をこんな穢らわしい場所にと先ほどの思考がフラッシュバックして落ち着いていられない。
レインフォードは再度ガンジャを咥えて罪悪感を誤魔化そうと火を付ける。もくもくと煙が祭壇周辺を満たし、視界が悪くなる。
煙の中から、マリーが巫女装束で祭壇の前に登場する。
「来たよ。じゃあ祭祀を始めようか。」
太麻を持ち、さっとふるい、定位置に置いて、祭壇の鏡に向かって、大祓祝詞を詠唱すると、参列者は沈黙してマリーの大祓祝詞に聞き入る。
詠唱を終え、盃に蓬莱酒をなみなみに注ぐ。その上に角砂糖を置いたスプーンを渡し、角砂糖の上から神奈備山の霊水を注ぎ、砂糖の溶けた甘露となり蓬莱酒に注ぎ込むと、緑色の蓬莱酒が雲のように白濁する。
これは蓬莱仙境の山に立ち上る雲を彷彿とさせる非常に視覚的に美しいものなのだけど、参列者たちには見えないのよね。残念だけど……。そして甘露で白濁した蓬莱酒を一口だけ口に含んで飲み、参列者に回す。
「参列者の皆様も神様と同じ杯をいただいて、おかげをお受けください。」
鏡に向かってお供えしたが、鏡に映ってるのはマリーだがらこの祭祀における「神様」もマリーであるから何の問題もない。
神様のおかげを受けると言うけど、マリーの加護ってどんなんでしょうか?




