第 3話:採集ついでに有望客ゲット
聖女の癒しです。痛そうですね……。もう一度言います。「聖女の癒し」なの!
食材になる野草や花の実を採りにマリー・ジェーンは山道をゆく。森の家から少し歩いたところにある山はその麓から山頂までが神々が鎮座する神奈備とされ信仰の対象である。
かつてこの山の向こう側にある祖国では、「山の彼方の空遠く…幸い住むと人が言う」というわらべうたで、この山の向こう側、つまりこちら側には幸いがあると言われていた。
しかし行っても行っても結局幸いなんか見つけられなかったというオチなのよね〜。などと心のなかでベロを出し、嘲笑する。
幸いを見つけられずに帰ってきた者に掛けられた言葉は、そこよりさらに彼方に行かないと幸いが住んでないという、もっともっと先へと目の前にニンジン吊るされた馬車馬のように人を使役する悪質なプロパガンダだ。
そんなものははじめからどこにもないのよ。
まだ紅葉してない7つ手の葉っぱがなってる楓のような薬草を採集する。この薬草の存在こそが、この山を神奈備たらしめてる由縁だ。
このハーブは葉っぱこそ楓に似てるが、花は小さい花が花穂にぎっしりと咲き、プロペラみたいな楓の実とは明らかに違う。葉っぱも茎もロープなどに加工できるし繊維にまで崩せば夏の衣類にぴったりな理想的な生地が作れるが、マリーのお目当てはこの花の集合体である蕾の花穂である。
そして、辺り一面に咲き乱れる野生の見事な紫色の花。花序の下にある大きな房が実である。この房の中に出来る胡麻粒みたいな種子もあんぱんによくあうので確保ついでに、房ごと籠に突っ込む。
山の奥の水源から流れてきた水は沢を作り青い睡蓮が咲いているので、これも失敬して、 花の群生地のそばには朽ちた枝とキノコが生えているのでこれも失敬して……薬草集めは予想より捗った。
これも聖女時代に詰め込み教育された知識チート。知識は荷物にならない財産。あの日の少女が勉強ついでにどんなお菓子に使おうかと思いを馳せてた薬草が今、手元にある。
端から見れば雑草集めて何がうれしいのか訝しがられるだろうけど、これらはみんな使ってみたいとずっと憧れてた食材。こんなに簡単にたくさんとれるのはいい意味で予想外だわ。
そして崖に作られるという海燕の巣を求めてロッククライミングをしようと巨大な岩のもとにさしかかったとき、うめき声が聞こえてきた。
恐る恐る、声の主をみてみるとあらぬ方向に手足が折れてる冒険者風の男が居た。これは大変と駆けつけマリーは関節技を掛けて手足をあるべき向きに柔術整復する。
聖女時代にほぼ条件反射になるまで仕込まれた治癒術であり、戦場では相手の様子などお構い無しで見つけ次第次々とこなしていたので、彼女にとってこれは息を吐くかのように脊椎反射で行ってしまうものだった。
ギャァァァーーー!!
男の絶叫が山に木霊する。
柔術整復をしたとはいえ、骨が折れている部分まではどうにもできない。ロープできっちり固定して自然回復を待つしかないし、手も足も使えないなら治るまでうちで面倒見るしかない。
面倒だなとは思いつつも柔術整復後は看病とリハビリにそれぞれ別の担当者が付いていた聖女時代とは違う。効率のいい手順だけでなくきっちり終わりまで面倒を見る他ないみたい。
集めてる薬草に変な勘繰りしてはいけません。異世界のハーブです。効き目も用途もすべてハイ・ファンタジーです。




