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第33話 歓迎《アボル》・友情《トナ》・祝福《バラカ》

本来のエチオピアのコーヒー儀式はホストの家族とお客さん一家のせいぜい二世帯が集まるくらいですが、マリーの公堂に集まるのはちょっとしたライヴ会場並みです。

 異世界から来た転生者たちは、コーヒーを宗教上の戒律に反するとして断固飲まない。しかし彼らの信仰には大きな穴がある。


 彼らにとって異世界のキングストンでの生活はバビロンに捕囚されている仮の姿であって、いつか救世主ジャーが現れて自分たちが本来居るべき約束の地エチオピアに連れて帰ってくれるのだと信じており、はるか遠方にあるがその異世界には実在するエチオピアという国を崇拝している。


 キングストンは異世界においても世界有数の大都会であり、様々な職種の人がこの地を訪れ、また世界を股にかけて活躍するアーティストやビジネスマンも数多くいる。その中にはエチオピアに滞在経験のある人も一定数居るという構造だ。存在する以上は行くことが可能であり、可能性のあるものは発生する。


 そこではじめのコーヒーの話だ。キングストンから召喚された転生者たちはコーヒーをバビロンの蛮習として軽蔑するが、彼らにとってエチオピア由来のものは全てにおいて別格となる。そしてコーヒーの起源を一意に定めることはできないが、その一つと目されるのがエチオピアであり独自のコーヒー文化が存在する。


 要するに、コーヒーにいちゃもんつけてきたら正統性で黙らせる作戦だ。だから彼らですら正統と認めざるを得ない完璧なコーヒーを作らなくてはならない。1回でも彼らの聖地の完璧な手順で完璧なコーヒーを出しておけば、1杯のコーヒーであってもそこからのスピンオフであるとすることで他のお客様が飲むコーヒーに対しても黙らざるを得なくなる。しかし、出す数が半端でないので、味見が進まない。


 今はコーヒーに特に禁忌を感じることのないこの国の現地人たちがたくさんいる。味見自体は自身で行うが大量のお客さんに実際に提供し、時間感覚を確認する。


 「今度出す新コースメニューのコーヒーの試供品です。よろしければどうぞ。」


 その場に溢れんばかりにごった返してる近衛兵たちに渡して回ると、いちいち跪礼されるので時間が意外にかかる。この計測値は参考になるのかな……。


 最後の一人に行き渡った後に自分用のを再度味見する。少しぬるいが味には問題なし。


 そして次の一杯「友情トーナ」を淹れる。この時間が経過した煮汁は独特のアクが出るが、塩でごまかしつつ煮方とスパイスを調整する。もう一杯いかが?と巡回するが、全員が所望するのとそのたびに跪礼するので結構な時間がかかる。


 最後の一杯、「祝福バラカ」。もはや抽出しきったコーヒーから出てくるものはただの色で味の主導権は追加で投入する調味料だが、むしろこれこそマリーの本領発揮。薬草を適切に前処理し、深いリラックス作用を引き出すハーブをこれ用に特別に調製する。


 出来た。

とっておきの一杯ではなくて、提供者側は均質性を特に大事にします。

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