第30話 売店のレベルアップ講習。でもrebelアップの方でした
異教徒の人たちっていうのはどうしても対応にセンシティブになりますね。だからマリーはトラブルを未然に防ぐため、ボブのレベルアップのための講習をします。しかし……LevelアップじゃなくてなぜかRebelアップのほうでした。
異教徒の常連が付いたことを話したらマリーが急遽ボブへ接客指導すると森の家の方を臨時休業して王都へやってきた。ベアトリーチェやエリーヌに見つかると厄介なことになるぞと思いながら、そう思うこと自体がフラグだと、考えないことにする。
「前の話に出てきた異教徒たちというのは、異世界の国ジャマイカの王都キングストンから召喚された転生者たちが中心になって広がった教えで、非常に厳しい戒律に適合するものしか口にしないの。そして彼らはそのジャマイカからさらに遥か遠方にあるエチオピアという国をいつか帰国すべき本来自分が居るべき理想郷として、ジャマイカ人ではなくエチオピア人としてのアイデンティティを持っているの。」
ボブは難しいことをまくし立てられて困惑しながら
「で、なんでそんなことをおれに言うわけ?」
ときょとんとしてる。
「お客様の考え方を理解して、お客様に気持ちよく過ごしていただくのは商売人として当たり前の心がけよ。それにうちは喫茶店としてコーヒーも出すんだから、それを口にすることに後ろめたい思いをさせてはダメなのよ。」
マリーは完全に経営者モードで説教を始める
「彼らの教えではいい加減なコーヒーは戒律による禁忌にあたるけど、エチオピア式の手順で出されたコーヒーは聖なるものにすら昇格するの。だから彼らに受け入れられるコーヒーの出し方を覚えて、彼らがいるときはその手順で出して。」
異世界にあるエチオピアという国におけるコーヒーの出し方「カリオモン」の概要を説明する。
香を焚き場を香りで満たし、生の豆から焙煎してドリップではなく専用のポットを使用して煮出しで3杯淹れ、三杯はそれぞれ、歓迎、友情、祝福を意味する。生の豆から専用のポットで煮出すこと、そして三杯出すことは決まりごとであり間違えたり変えたら即バビロンの蛮習として軽蔑される厳しい戒律なのだという。
「めんどくさいな。」
「これが場所を共有する相手とお互い気持ちよく過ごすために払うべき最低限の礼儀なの。これだけやっても彼らの中にはバビロンコーヒーなど出すなと怒り出す人もいるかも知れない。」
「それだけやってもダメなの?最善を尽くすにはあと何が必要なんだ?そして怒り出したらつまみ出していい?」
そこからあと2つ、これはどうしても越えられない壁が残ってる。ベストエフォートは尽くすが、明らかに無理な事をやれと命じることはできない。しかし知っておくことはいいだろう。
「あと2つ、彼らにコーヒーについて抗議を許さなくするために必要な条件がありますが、頭の片隅に置いておけば良いから決して実践しようとはしないで。あなたに出来ないことはわかっているし、無駄な努力はみっともないから」
辛辣な言葉をかけられてムッとした。やる前からアホの子扱いだよ。
「やれるかやれないかなんかやってみなけりゃわからないだろ!教えろよ残り2つを」
「やろうとする限り教えません。あなたには絶対に出来ないから。」
そして押し問答の末、ついにマリーが口を割った。
「カリオモンを主催するのは女性でなくてはならない。そして生まれつき肌の色が黒い人でなくてはならない。」
あぁ……。確かにそれは下手にやろうとすればみっともないだけだ。
実際のところ、高齢で古くからの信者たちは、コーヒーも肉食も絶対ダメで、若者たちを中心に柔軟な信者たちは実際にエチオピア式ならOKと、コーヒーやドロワット(激辛チキンカレー。古い教えでは肉食と刺激物という二重にタブー。)を食べる方もいらっしゃるそうです。
エチオピアへの帰還が願いですから、その願いが叶ったあと、現地食食べられないとかありえないですものね。




