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第28話 完全回復した女王は空もトべるはず

その場に居合わせたので神奈備の山の中腹に自生するコーヒーを求めて女王まで連れて登山しちゃいます。

 異世界から来た人たちが広めたコーヒーという飲み物。彼らの出身地である異世界の国ジャマイカ、そしてその国の王都キングストンに住まう人々がユートピアとして崇めるエチオピアが名産であるとまでは聞いているが、現物を見せてもらったらなんのことはない。こっちの山にも自生してる。


 しかし自生してるのは標高1200m付近で、山道として整備はされているが舗装まではされておらず、途中にはロッククライミングもあるハイキングコースとは一線を画する登山道である。


 マリーがリュックを担いで先導する。さすがは元冒険者だけあってボブは良い感じについてくるけどベアトリーチェはひいこら言ってる。それはそう。先日まで明日が来ないかもしれないほど衰弱していたベアトリーチェにしては、ついてくるだけでもすごい事だ。


 山道で蓬やフェンネルや茴香も見つけたので女王のペースを待ちながらとりあえず確保確保っと。


 ベアトリーチェはひいぃと岩に座り込み、疲れた様子だ。ここは速やかに頭がスッキリして疲労がポンと取れるアイスでもと言いたいところだけど、アイスは常温でどろどろに溶けるから登山中には食べることはできない。


 マリーはあたりに生える薬草を摘みながら、あれもこれもとリュックに分類整理している。ボブは、これが女王に済まない気持ちを抱かせないためのマリーの優しい時間調整だということを理解する。まるで、たまたま時間をかける価値のある薬草を見つけたので、たまたま時間が掛かって、ベアトリーチェが休める時間を確保しているって建付けだ。

 マリーは「待ってあげる」などという押し付けがましい持ち方はしない。


 しばらくして、女王の息も整ってきて再度出発できるとボブに告げるが、マリーは相変わらず薬草を摘んでいる。残心ってやつだな。


 そこから三分ほどして、息も完全に整った頃に、「お待たせ〜!次行くよ~!」


―――

 そしてお目当てのコーヒー自生地にたどり着いたわ。でも豆は次の世代に繋ぐものだから、必ずひと房につき2つくらいは土に落としていくように注意して収穫する。


 収穫を終えて、帰路に就くにしても、またベアトリーチェが休み休み行くとしたら大変だ。そこで、ベアトリーチェにはモーター付きウイングスーツを着て、崖から飛び降りて帰ってもらうことにした。


 過信してよく人が死ぬと言われる危ないウイングスーツだけど、過信せずにやるべきことをやるべきタイミングでやれば普通は死なないことのほうが多いんだから。きっちり安全運転の説明を行い、森の家の脇の牧草が摘んであるところ目掛けてパラシュートで滑空するように指導して、ウイングスーツで完全武装したベアトリーチェを崖から突き落とす。


 

「速やかに頭がスッキリして疲労がポンと取れるアイス」ってヤバそうですねぇ……。ドロドロに溶けるので山には持っていけないそうです。

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