第 1話:偽聖女追放
モク示録はプロローグに格上げしましたが、第一話は同じです!というかここはお約束です。
誤字と限度を超えた反復を少しだけ修正してますがそれぐらい。
「偽聖女マリー・ジェーン!貴様との婚約を破棄する。尼寺へ行け!」
聖女マリー・ジェーン・ラスバンは王太子に唐突に婚約破棄され、尼寺行きを命じられた。
「この婚約は両家の合意の上取り決められたもの。私を納得させて、関係者を説得して初めて成立できます。動機を聞かせていただいても?」
マリーとしてもやすやすと尼寺行きをのむわけには行かない。尼寺とオブラートに包んでいるが、この第二王政のアリンス王国における尼寺とは神聖娼館のことであり、実質的に「ソープに売り飛ばす」と同義である。
「貴様の治癒魔法は人心を惑わす悪魔の術だからだ!聖女じゃなくて魔女ではないか!施術院での患者の評判も極めて悪い!」
そんなことは理由にならない。しかし何か本当の理由をどうしても言いたくなさそうだ。何回か打ち返せば本心を言ってくれるだろうか?
「本来なら死ぬところまで病状が進行した者たちの予後が悪くて当たり前。不平を言えると言うことは生き延びたということです。」
ぐぬぬと王太子が悔しそうに歯を食いしばる。
「今すぐここを去れ、国外追放する!兵士ども!こやつをひっ捕らえて城壁の外の森深くに捨ててこい!」
兵士たちによってマリー・ジェーン・ラスヴァンはブルーシートに包まれて乱暴に荷台に乗せられ城壁の外の遥か遠方の森に投げ捨てられた。自由を奪われて視界を遮られて森の奥で捨てられたが、武士の情けというモノだろうか、ロープを切って自由に動けるようにして、逃げるように帰っていった。
ロープ切って解放しておきながら荷台に乗せて一緒に帰らせてくれないのは動機が不明だ。
「聖女の婚約破棄からの国外追放だなんてライトノベルの世界の中だけの話だと思ってたけど、本当にこんな事があるのね。」
この状況下、本来ならば途方に暮れるか何とかしなきゃと慌てふためくはずなのに、マリーの心はなぜかどこか落ち着き払っている。あまりに現実感がない、ふわふわした感覚だ。
ふわふわした感覚なのに恐ろしく冷静に世界に対峙している自分自身を見下ろすさらに冷静な自我を感じる。
何故か次にやることが勘として浮かんでくる。必ずこの近くに空き家があるから寝床を確保しろと。
いや、慌てて途方に暮れていても寝床は確保しただろうが、慌てて途方に暮れることで少しでも良い寝床に出会える気がしない。
慌ててもなんの得にもならないのなら落ち着いて、必要なものを認識したうえで流れに身を任せる方が得ではないかしら?
辺りの様子をみていると魔獣よけの薬草を見つけたので服に焚き込めておく。こんなものは見つけた順に必要なもの、必要でないものを選別してさっさとゲットしていく。
薬草やキノコ、山菜を摘みながら何をしてるんだろうなと思いながらもフラフラとしながらゆっくりと散策している。
現実感が無いまま、聖女マリー・ジェーン・ラスヴァンは自然と一体化していった。
とりあえず、このシーンは「人心を惑わす悪魔の術」って言われて追放されたとだけ覚えておいていただければ充分です。




