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第17話 かわいい街のかわいいお店

女王の病を治癒した礼に可愛い街の可愛いお店を寄進されます。

 聖堂を寄進とか言われてもいまいちピンとこなかったボブは、とりあえずそこに何があるのか、伝え聞いた住所に行ってみることにした。


 そこは王都の商店街の一角にあった。メルヘンチックなかわいらしい商店街にずらりと並ぶかわいらしいお店と並んでまるで喫茶店か何かのような建物だった。


 女の子はこういうの好きそうだよなと思いつつも、マリーがこういうのを好きかどうかはいまいちピンとこない。


 そもそも、女王も、聖女猊下のことを質実剛健倹約質素な御方だと考えており、大規模な寄進はまず受け取られないし大聖堂などを寄進して、他の新教国を出し抜くような真似をすれば国際政治力学的に自国に不利になると考え、質素な聖堂の寄進に留めるが、それでも公平を旨とする聖女猊下は受け取らないかもしれないので、まだ提案という状態だ。


 でもこの建物どう見ても聖堂というより飲食店の居抜き物件にポン付けで聖堂風にしたようにしか見えない。


 ボブにとっては確かに目の前に起きている、よく知ってる知人にまつわる大仰な扱いをまだ現実感を持って捉えることができないが、とりあえず言われるまま、エリーヌからそれで鼻かむんじゃないよと念を押された書簡を持って森の家に向かう。


―――

 書簡に書かれた聖堂寄進という言葉に顔を顰めたマリーは何か落ち込んだ様子で、ボブに言う。


 「もし私が聖女だったとしても、今までと変わらずマリーとして付き合ってくださいますか?」


 なんだ、そういうことか?


 「俺にとってマリーははじめからマリーだし、今もマリーで何も変わってはいない。目の前で見えること以外背景は知らないし、知る必要もない。背景を知って引くことと言ったら例えば殺人を犯したとかそういうことならば引くかもしれないが、今のところそういうのは聞いたことがない。」


 マリーは少し落ち着きを取り戻したと同時に、深い哀愁の陰に、秘められた誇りが一瞬だけ覗く、複雑な微笑をして語った。


 「既にご存知の通り、わたくしは聖女でした。しかし祖国の死刑命令書への署名や戦争に向けた徴兵命令書への押印を断ったため、追放になりました。殺人を止めたことはあっても、殺人だけはしていません。」


 「しかし、わたくしが押印しなくとも、押印する人間を聖女として新たに任命するだけで、彼らの愚行を糺すことは出来ませんでした。」


 ボブがただのねぇちゃんと思っていたマリーの尋常ならざる過去の自白に、今目の前で起きていることが自分事とは思えないふわふわした浮遊感のようなものを感じる。


 また、マリーの祖国といった旧教国と、ベアトリーチェたちの新教国といった事情をこのとき初めて知る。先々代、先代と続いた聖女たちは堕落しており、古代祭祀を復興し聖女の立場を確立して政体に毅然と立ち向かうマリーこそが真の聖女であると信仰する新教国が競ってマリーを自国の聖女として迎えたがっていた話が繋がった。


イメージとしてはアムステルダムのコーヒーショップみたいなのを想像してます。

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