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第11話 まだガンには効かないが……

ヘヴィメタルはまだガンには効かないが、そのうち効くようになる。

 「オレが以前から若年性緑内障で、近いうち失明するかもって話してたのは覚えているだろ?」


 「ええ。残念だけどどんな薬も効かなくて、その時の到来までに思い残すことがないようにって生き急いでたみたいだったけど、私もそれを止めることはできなかった。」


 「それが、今完全に治癒した。」


 「可哀想に。もう見えなく……じゃなくて?!!」


 エリーヌは悲痛で哀れむような顔をボブに向けて口を開くが、途中で驚愕の顔に変わる。


 「治癒した。かつてならありえないほどよく見えてる。なんなら宇宙の果てどころか時空を超えてすべてが手に取るように見えてる」


 完全に見えなくなったのかと思ったら、完全に治ったと言っている。ありえない話だ。


 「それを実現してくれた優秀な薬草師を知っている。彼女ならもしかしたら女王の病を治せるかもしれない。いや見える。彼女のケーキで治癒した女王の姿が。」


 興奮した様子で饒舌に喋るボブを見て、しかし女王の治癒は難しいだろうとエリーヌは言う。


 「でも、王立アカデミーの最高の頭脳たちが作った白銀製剤でも治癒できなかったのよ?」


 「もっともな考えだ。俺の目も王立アカデミーの最先端成果とまでは行かないが少しでも役に立つなら率先して世に出して資金化しようとする奴らの王立アカデミーの最先端からせいぜい半年違いぐらいでしかないほぼ新しい成果で治せなかったんだぜ。」


 「それに重たい白銀はまだ研究途上の謎が多い物質だし……」


 「重たい白銀か……。重金属ヘヴィ・メタルだよな。」


 そう言って何か遠くを見つめるような目をして考え込んだあと、改めて一語一語噛み締めるようにボブは口を開く。


 「重金属ヘヴィ・メタルはまだガンには効かないが、マリージェーンのケーキはたぶん効く。」


 重たい白銀の採集を生業としてきたエリーヌたちは、認めたくない考えだ。


重金属ヘヴィ・メタルだってそのうちガンにも効くようになるわ!」


 そりゃぁ材料の採集がおいしいクエストとなってた『白金の触媒』のメンバーとしてはそうであってほしいだろう。しかし現実は人の望みなんかお構い無しのところにあるものだ。


 「必要なのは()()()()効くものではなくて、()効くものだろ?それが効くかどうかはオレには判断つかねえがまだ試してないなら一度くらい試してみても良いだろ?」


 「わかった。話つけておくけど難しいわね。食料局なのか医局なのか、はたまた祭祀部なのか。全部一応仁義切っておく。」


 まさかの先代女王にご対面がAランクとは言え一介の冒険者の世間話から決まってしまった。といってもマリーを紹介するだけでオレがって話じゃないが。


 そうと決まれば、早速、馬車の切符を取ってマリーにまた逢いに行くことにする。

そのうちじゃ遅い。必要なのは今効くことです。

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