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第10話 女王ベアトリーチェの病

お約束の導入。偉い人を治癒してそこから覚えめでたくなるお話に相当しますが、マリーとベアトリーチェの関係はもう少し複雑です。

 マリーとの夢のような数週間の思い出も色褪せ、ボブは前のようにギルドに日銭稼ぎのクエストを物色しに行く。そこでは王都ギルド初の前人未到のAランクに到達したとブイブイいわせてた冒険者パーティー『白金の触媒』のメンツが浮かなそうな顔をして発泡酒をちびちびやってた。


 ボブはこのパーティーのリーダーであるエリーヌとは知己の仲である。


 エリーヌの顔には疲れが見え、彼女の目はどこか遠くを見つめているようだった。どうしたんだ元気ねえなと自前でビールをおごる。


 「俺なんかよりもお前たちのほうがよっぽど稼ぎ良いのに俺が奢るってのも可笑しいな。でも、落ち込んだときこそちゃんとしたもの飲め」


 瓶ビールを追加で買ってきてエリーヌ以下他のメンバーにも奢ってやる。


 「先日、ベアトリーチェ女王陛下が退位を表明したのは知ってるかしら?」


 そんなことを書かれたかわら版をもらったような気もしないこともないが自分とはなんの関係もないから、ふ~んとチラ見したあと鼻紙にして丸めて捨てたのを思い出した。


 「それがどうかしたんか?俺たちにゃ関係ねえだろ」


 「私たちの鉱物採集クエストの大口さんだったのよ。退位の少し前に、ピタッと発注が止まったの。ご病気の治癒に使う特殊な重たい白銀が要らなくなった。ついに諦められたみたい。」


 そういう国家の機微に関するものは冗談でも言ってはいけない。いや女王陛下の御真影が刷られたかわら版で鼻かんだオレに言われたくはないか。


 「つまり、今の『白金の触媒』があるのはベアトリーチェ女王陛下さまさまだったってわけなんだな。」


 「そう。成果の大小にかかわらず必要経費はペイしたし、成功報酬の歩合も大きくて、安全なクエストを出してくれてたのを積極的にこなして、うちはここまで成長出来た。」


 エリーヌは遠い目をして栄光の日々を思い出して涙ぐむ。


 「だから、しばらくは贅沢できない。」


 いや、ビールは贅沢じゃなくてそれが普通であって発泡酒に落とす程のものでもないだろう。


 「で、あまりデカい声で言えない話になるが、女王陛下の容態はどうなの?」


 「側近の主治医に言わすと、重たい白銀で作る薬では治癒は出来ない。だから政府機能の次期国王への移管に専念するために退位したと聞いたわ。」


 「諦めちゃったんだ。直接女王と話すツテがあればなぁ……。」


 通常は女王は公務で出てくる以外、こちらから接触を取ることは出来ないし直訴は不敬罪として、政府機構でガチガチに固められている。薬草に詳しいマリーと引き合わすことが出来ればもしかしたらとも思ったが、望みはうすそうだ。


「あるわよ」


「そうか…、やっぱりなぁ………?!!あるんだ?!!」


 エリーヌの奴いつの間にそんなに王室に食い込んでいたんだ?


 「側近の皆さんとは顔なじみだったから、結構簡単に話は通せるわよ。もちろん話の種類によってチャネル切り替えないと、系統ハブられたって話になるから手続きと相手は選ばないと行けないけど、その選択さえ間違えなければなんとでも。今は女王陛下ではない、先代女王だから。」


 官僚機構ってめんどくさいね。


 「で、どんな話なのかしら。誰を通せばいいか選びましょう。」

マリーとベアトリーチェの関係は少し複雑ですが、治癒した褒美にもらうものがきっちりその後の話のコアとなっていきます。

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