表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第二章:言葉にならない物語

[登場人物】

さき

元地下アイドル。夢を見失いながらも、誰かに言葉を届けたいと願う女性。語り手。

・悠人 (ゆうと)

夢のカケラを拾う不思議な青年。祖父の言葉を胸に、「拾う」ことを通じて人の希望を見出している。

・悠人の祖父 (回想)

悠人に「夢は拾われれば希望になる」と伝えた存在。直接の登場はないが、人の価値観を形づくった人物。

第二章:言葉にならない物語


(場所は夜の帰り道。咲と人は並んで歩いている。互いに多くは語らないが、不思議と心地よい沈黙が流れている)


咲:

「ねぇ......なんでそんなふうに

"ゴミを拾おうって思ったの?」


悠人:

「うーん......なんでだろうね。でも、

小さい頃、おじいちゃんに言われたことがあって。」


(咲が横目で彼を見る。

悠人は少し照れたように微笑む)


悠人:祖父


「"夢ってのは立ち止まってもいいし

変わったっていい

以前、自分がやれなかったことを

誰かがやってたらそれを応援してあげる

それが誰かの希望になる”」


ナレーション


(咲の心に、さっき拾い上げた

濡れたタバコの吸い殻が浮かぶ。

今もポケットの中に、静かに入っている)


― 静かな夜のつぶやき ―


夜の公園を後にして、咲はスマホの画面を開いた。


「夢を拾うか、考えたこともなかった」


そうつぶやきながらも、指先は自然と

メモアプリを開いていた。


──今日、あの少年が言っていた言葉。

「それは捨てられたモノじゃなく

、“想い出の抜け殻”」


文字にして残すと、不思議と胸の奥が少し温かくなる。

何度も見返してしまうのは、忘れたくないからだろうか。


駅前の広場に出ると、夜風に混じって

酔客の笑い声が遠くから響いていた。


ふと、咲は小さく鼻歌をこぼす。



それは意識して歌ったわけではなく、

胸にたまった思いが自然と音になったものだった。


──声に出すと、心が軽くなる。


気づけば、少しだけ大きな声になっていた。

駅の階段を降りていた女子高生が足を止め、振り返る。

自転車を押していたサラリーマンも、ほんの一瞬だけ立ち止まる。


誰も拍手はしない。

けれど、その一瞬の視線に、咲は胸を締めつけられるような熱を覚えた。


(……届いた?)


照れくさくなって歌をやめると、周囲はまた何事もなかったように動き出す。

けれど咲の中では、確かに“何か”が残っていた。


帰宅すると、机の上のペットボトルやレシートが目に入った。

ただの生活の残骸にすぎないはずなのに、

どこかで「これも夢のカケラかもしれない」と思っている自分がいた。


咲は深く息を吐き、スマホのカメラをそっと向ける。シャッター音が静かな部屋に響いた。




【この章の役割まとめ】

・咲の心の変化

ただ受け取るだけだった「夢のカケラ」を、自分も「語り直す」ことができると気づき始める。

・悠人の背景

祖父の言葉を通して、「夢は誰かが拾えば希望になる」という哲学の由来が示される。

・配信という舞台装置

咲が再びスマホを手に取り、「夢のカケラ配信室」を始めることで、彼女自身が夢を語る側へ踏み出す。

・モチーフの継承

吸い殻を入れた小瓶が映り込み、「ゴミではなく、想い出の象徴」として物語に継続する。

・物語の推進力

「言葉にならない気持ちを言葉にする」というテーマが咲に宿り、次章以降の彼女の行動原理となる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ