恋のパスワードをゲットしよ!
親友のエヌちゃんに恋の悩みを相談したら、良いことを教えてくれたにゃ。
「ハッキングするの」
「ハッキング~ぅ」
「そう、ハッキング」
「えっ、ハッキング~ぅ」
「うん、でも、グ~ゥって伸ばさなくてもいいから」
「てもてもわたし、ハッキングゥなんてやったことないし」
「大丈夫大丈夫、簡単だって」
「でもぅ」
「出来るって」
で「もうでもう」
「ちょっと、最初のでの字が飛び出てるよ」
「あ、戻せ……戻せない。どうしよ! これ激ムズやわ~」
「それよりもずっと楽だって、ハッキング」
そんなわけでわたしはエヌちゃんにご指導いただいてハッキングに挑戦した。
え、なんでハッキングしてんのかって?
恋の悩みがあるからよ。片想い中の彼と両想いになりたいの。
それで、どうしてハッキングすると両想いなれるのかってぇ?
知らんて、そんなの。エヌちゃんに聞いてや。わたし今、ハッキングで忙しいんやから。
「できた!」
「でしょ!」
「それで、次は何をしたらええのん?」
「恋のパスワードをゲットするの」
「鯉のパスワード」
「字が違うって」
「それで、どうなんのや?」
「入手した恋のパスワードを打ち込めば、両想いになれるはず」
「それだけで?」
「そう」
片想い中の彼の頭の中を探し回り、わたしは遂に恋のパスワードを手に入れた!
これを所定の場所に入力すれば、オーケーなんだって!
だけど、その入力場所が分かりにくくて、わたしたちは苦戦中だ。
「エヌちゃん、どこにあるのかわかんないよ」
「頑張ってよ」
「難しいって、これ」
「諦めたら、そこで試合終了ですよって」
「それ昔の漫画でしょ? ねえ、昔の人って、どうやって恋愛していたのかな」
わたしの質問に物知りのエヌちゃんが答える。
「昔の人類は、パスワード無しで恋愛をしていたみたい。当時は脳のデジタル化が進んでいなかったから、アナログ的な手法を駆使していたそうよ」
「へ~昔の人はアナログ人間だったんだ」
「そう、だから時代の変化に対応できなくて滅びてしまったの」
「やっぱ、わたしたちAI人間の方が進歩してんだね」
そう言うけど、わたしのAI搭載脳は、いつまで経っても恋のパスワードの入力先を見つけられない。これならサブスクの解約の方が簡単だ、と私は思った。