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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【短編練習】俺もお前もvtuber

 子供の頃は無邪気で何も知らないから、結局後悔するようなことをわからないでしてしまう。


 危ないことも色々するけど、一番怖いのが友達だ。


 自分なんかが友達になっちゃいけない友達。


「加藤君!」


 朗らかな声が好きだった。


 人を怖がらせてばかりの俺に寄ってきてくれるのは、高坂だけだった。


「加藤君! またケンカしたの? 大丈夫? 上級生だよね?」


 綺麗な顔が、心配そうに曇った。


 俺はそれが嫌で、痛む頬に無理やり笑顔を作った。


「一発殴られたけどな。返り討ちにしてやったよ」


 友達。


 そう、友達だった。


 大切な友達。


 高坂。


 議員の息子。


 こんな荒れた公立小になんでいるのかわからない。


 お受験? なんか知らんけど、生まれながらの勝ち組はそっちの世界に行くもんじゃないのか?


「加藤君! 一緒に帰ろう!」


 高坂も孤独だったと思う。


 一人だけ生活レベルが違うんだ。


 なんとなく除け者にされていた。


 家庭が荒れて、鬱憤を周りに暴力という形で撒き散らすゴミみたいな俺も孤独で。


 孤独同士、肩を寄せ合って友達を演じてた。


 家だって近くもないのに無理して一緒に帰ったっけ。


「ねえねえ! 加藤君は大きくなったら何になるの?」


「さあな」


 親父みたいに、ギャンブルに狂って行方不明になるんだろうよ。


 とは言えなかった。


「僕はね! お医者さんになるんだ!」


 屈託のない笑顔。


 なぜか、惹かれた。


 普段の俺なら嫉妬に狂って一発お見舞いしてただろうに。


 なぜか、こいつにだけは危害を加える気になれなかった。


 その友達づきあいが終わるのは小学校卒業の年だった。


「なーなー、高坂君、だっけ? 金持ってるんだろ?」


 中学校の有名な不良だった。


 通学路の帰り道、俺たち二人は待ち伏せされた。


「加藤君……」


 すっかり怯える高坂に、俺は笑いかけた。


「大丈夫だ、高坂。俺は一度も喧嘩に負けたことなんかない」


 体格差は明らかだった。


 今でもなんで勝てたかわからない。


 俺って、自分が思ってるより相当強くて、愚かで、そして、凶暴だったんだ。


「加藤君! やりすぎだよ!」


 血がいっぱい出ていた。


 大問題になった。


 小学生のする喧嘩じゃなかった。


 相手の中学生は病院送りで……。

 

 俺は親同伴で病室に謝罪に行かされた。


 そこで母親に連れられた高坂に会ったんだ。


「加藤君……」


「こら! 話しかけてはいけません! こんな獣みたいな子がいる学校なんて……やはり公立校なんて間違いだったんだわ! 転校よ! 転校!」


 俺は愕然とした。


 当時の俺は、まちがってはいないとおもっていた。


 ただ一つ、高坂を心配させてしまったこと。


 それだけが心残りだった。


 そして、高校生になった、今。


 運命ってやつは、残酷で。


「高……坂?」


 喧嘩で地元に居られなくなって県庁所在地の地獄みたいな高校に行くことになった俺。


 その駅の中のマックに、かつての友達はいた。


(変わってないな)


 綺麗な顔、屈託ない笑顔、細い手。


 間違いなく、高坂だった。


 この県で一番頭のいい高校の制服を着ていた。


 幸い、高坂は同じテーブルの誰かと話し込んでいる。


 俺は、避けるでもなく、ちょっと気が引けたが、高坂の近くの席であいつを観察することにした。


 バレないようにしよう。


 なぜかそう思った。


 なに、もう俺は金髪頭で、顔もいかつくなった。


 バレやしない。


「それでね、この3Dモデルのデザインなんだけど……」


 高坂は、何やら俺にはわからない単語を使って熱心に話をしている。


 向かいに座っているのは……女?


(あいつは……!?)


 俺の高校の制服、茶髪、ケバい化粧……。


 間違いない……!


 俺のいるクソ高校の女王!?


 こちらには気づいていないようだ。


 なぜ奴が高坂と……?


(付き合ってるのか……?)


 咄嗟にそう思った。


 だがなぜバカ高校のビッチと育ちのいい高坂が???


 疑問。


 だがそれ以上のショックを感じている。


 何にショックかって?


 俺にもわからない。


 疑問、疑問、疑問。


 疑問だらけだった。


「それにしても」


 ビッチが勿体ぶった様子で言う。


「まさかトップアイドルvtuber神宮寺セナの中身が男だなんてね」


 ……は?


 慌ててそれに答える高坂。


「し、しー! だめだよ! こういう場所でそういうこと言うと……僕が中の人だってバレたら……」


 なに?


 高坂が神宮寺セナの中の人だあ?


 俺は訳がわからなかった。


 訳がわからない事態がいっぺんに進行していて、俺の出来の悪い脳みそでは全く訳がわからない。


 話を盗み聞きするに、どうやら俺の高校のビッチは、実は3Dモデラーで、高坂に神宮寺セナの3Dモデルを提供し、その活動をプロデュースする立場らしかった。


 ……知らん。


 あのビッチが、バカ高校の金髪が、そんな才能を持っていただなんて全く知らなかった。


 次の日、高校で俺はいちごミルクをちゅーちゅー吸ってるビッチに声をかけた。


「よっ、神宮寺セナのおかーさん」


 いちごミルクがあたりにぶちまけられた。


「ゲホ!? ガホ!? ケホ……っ!? ちょ、ちょっとテメー、こっち来い!」


 そのままシャツを引っ張られて校舎裏に連れて行かれる俺。


 ……俺は何がしたいんだろう。


 引っ張られながら、かんがえた。


 高坂がしていることのちょっかいを出してるってことになるが、それでいいのだろうか。


 高坂を応援したいのでは?


 自分でもよくわからない。


 ただ、昨日マックで見た光景を忘れて知らんぷりで生きていくことは、どうしても出来そうになかった。


「お、お、お、おまえなあ!?」


 目の前のビッチ、安藤シズネは、人間はこんなに取り乱すことができるのかってくらい取り乱していた。


 普段はお高く止まった女王蜂って見た目だったから、こうして目に見えてそのイメージが崩れる様は、なんだかおかしかった。


「クックック」


 シズネは俺が笑っているのを見て信じられないという顔でくってかかってくる。


「何笑ってんだテメー! あたしが……その……あの子を作ったってどこで知りやがった!?」


「マックで盗み聞きした」


 愕然とする安藤。


 しまった。


 その四文字が顔に張り付いているようだった。


「あ……き、聞いてやがったのか」


 俺はニヤニヤするのを止められない。


「実は俺、おまえが話してた高坂を小学校時代に知っててな。ちょっと気になって聞き耳立ててたのさ。なに、バラす気はねーよ。ちょっと面白かっただけさ」


 シズネは真剣な顔つきになった。


「ふーん。おまえがタッちゃんが言ってた……」


 タッちゃん。


 タッちゃんだって?


 高坂の下の名前はタツキだ。


 タッちゃんとは高坂のことか?


(こいつ、高坂とはどういう関係……)


 気になったが、俺の疑問は次の衝撃的な一言で崩壊する。


「おまえもvtuberにならね?」


 …………はあ!?

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