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悪魔 4

「改めて聞きますけど、ルシアちゃんの異変の原因に、心当たりはないですか?」


ルシアちゃんのお母さんは首を振った。


「なにも思い浮かぶものはありません。ルシアは行儀の良い子ですし、勝手に遠くへと行ったりもしないので、妙なものに触れるようなこともなかったはずです」

「しかし、同じ病を患っている子供たちにはなにかしらの共通点があるはずです。どんな些細なことでもいいので、きっかけとなるようなものを思い出してもらいたいんです」

「そう言われても」


ルシアちゃんのお母さんは困惑している。娘の容態も気がかりだろうし、発火現象による困惑も大きいはず。ここで追及しすぎるのも可哀想かもしれない。


でも、ルシアちゃんの状態も気がかりだから、すぐに退散というわけにもいかないんだよね。

また同じようなことが起こったら、お母さんだけではきっと対処できない。わたしたちがここにいることで二人の安全を担保出来るというものもあるし。


「体調不良の子どもたちには、5歳という共通項があるみたいです。この点で何か思いつくものはありませんか?」

「5歳、ですか。」

「はい。例えば同じ年に生まれた子どもたちでイベントをやった、とかはありませんか?」

「いえ、そんなことは全くありません」

「学校のようなところにも通ってはないですか?」

「まだそんな年齢ではないので」


子どもたち同士にはやっぱり接触はないみたい。なら親の遺伝とか?でも、だったら5歳だけというのは不可解な部分があるよね。


「5年前に何かあったとかじゃないの?」


ララがそう発言する。


「どういうこと?」

「いやだって、いまに接点がないなら、5年前に何かヒントがあるんじゃないかなって。妊娠したみんなで集まってご飯を食べて、それに何か悪いものが含まれていたとか。それこそ毒キノコとか」

「その毒がいまになって、子どもに現れたということ?」

「まあ、これじゃ炎については説明できないんだけど、現在だけにこだわっても意味がないかなって」


そのとき、ルシアちゃんのお母さんの表情が変わった。ハッとしたように目を見開いた。


「そういえば、いまふと思い出したんですけど、あの子がお腹にいたとき、わたしも似たようなことを経験したんです」

「似たような経験?謎の病にかかった、ということですか?」

「はい。突然、だったんです。なんとなく体調が悪化して、少し歩くだけでも億劫になりました。それはわたしだけの症状ではなく、同時期に複数の人が体調を崩したと後で聞きました。その多くは女性で、妊婦ばかりだったと記憶しています」

「妊娠しているときって、みんなそうなるものなんじゃないんですか?」


ホルモンの影響かなにかで妊婦は疲れやすくなるとか聞いたことあるけど。


「わたしひとりだったら、そう思ったかもしれません。でも、同じ時期に女性が、しかも妊婦の多くが異変を訴えたんです。そのなかにはもちろん、出産を以前に経験した人もいました。そんな人もこれまでにない感じだと言っていましたから」


一気に妊婦が体調悪化……たしかに今回のケースと似ている。しかも5年前。その時に起こった何かが、いまに影響を与えている、ということ?


わたしは目線をレアに向けて、それが本当のことかどうかを聞いた。


「そう言えば、そのようなこともありましたね。ギルドへの依頼はなかったので、関連付けて考えることもしなかったのですが」

「そのときは、どうやって治したの?」

「たしか、王都からちょうど医者の先生が訪れていて、その人が治療をしたらすぐに治ったはずです」

「治療って、具体的には?」

「えっと、わたしはまだ子どもでもあったので……どうしでした?」


レアがルシアちゃんのお母さんに話を振る。そうだ、当事者がここにいるんだった。


「特別なことはしませんでした。わたしの体に手を当てて、エネルギーを送っただけです。他の先生には治せなかったのに、その人がやったらあっというまに元に戻りました」


つまり、ヒーラーだったということ?

王都でも上位に位置するような優秀な人が、たまたまその現場に居合わせたのかもしれない。きっとレベルがすごく高くて、貴重なスキルも持っている。その人を見つければ、今回の症状にも対応できるかもしれない。


「病名はなんと言ってたんですか?」

「さあ、そこまでは聞いていません。その先生も忙しい身らしくて、長居はしなかったようです。わたしもお礼を言いたかったのですが、体調が良くなったときにはすでに街を出ていたようです」

「じゃあ、名前も名乗らなかったんですか?」

「はい。素性の方は一切わからないですね。その人はローブを着ていて、頭にはフードを被っていました。そこから白髪とヒゲが見えたので、小柄なおじいさんだったとは思いますが」


それだけだと探しようがない。せっかく手がかりが手に入ったと思ったのに。今の話を聞く限り、他の人に話を聞いてまわっても同じ結果にしかならないと思う。


なら、王都に直接行って、ギルドで調べるしかないのかな。冒険者に登録されている一番レベルの高いヒーラーを探せば、解決法は見つかるのかもしれない。ケルちゃんがいれば、王都への移動も難しくはなさそうだし。


そのとき、ベアトリスがふいに立ち上がった。


「……なにか聞こえませんか?」

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