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悪魔

そういうわけで、ギルドには新しいクエストが追加されることとなった。


プリシラからの依頼で、その師匠を探すことが目的となる。これをわたしはすぐに受けることにした。他の冒険者の助けも借りるという意味でクエストを出したけれど、何もせずに待つというのもなんだか嫌だった。


問題はその師匠であるハーミットさんの行方に関する手がかり。それがないとどうしようもない。

そこでわたしはミアに情報提供をお願いした。ハーミットさんが召喚士であるのなら、ギルドに登録されているかもしれない。

しかし。


「残念ながら、ハーミットさんという方は登録されていないようです」

「え、そうなんだ」

「ギルドの名簿はエリアごとに分かれているので、別のところで登録した可能性は充分にあります。召喚士は呼び出した生物によって移動も楽にできるので、ひとつの街にとどまらないことも珍しくはありませんからね」


困った。結局、他の冒険者を頼るしかないってことなのかな?


「そのハーミットさんというのは、どんな感じの人なんですか?」

「プリシラが言うには、小汚いおじさんらしいけど」


これはさっきプリシラから聞いた話。師匠に対して小汚いおじさんはどうなのかとも思ったけれど、それ以外に表現しようがないらしい。ちなみにプリシラはいまもあのお屋敷に残って、ケルちゃんの面倒を見ている。


「悪魔退治を目的とした小汚いおじさん……もしかして、あの人なんじゃ」

「何か、思い当たるものがあるの?」

「この前、ギルドにまさしく小汚いおじさんのような人が現れたんです。その人は掲示板に貼られた依頼をじっと見ていたんです。わたしが声をかけようとしたら立ち去ってしまったので名前は聞いてないんですけれど、クエストの内容を考えるとハーミットさんである可能性は充分にあるかと思います」

「どんなクエストなの?」

「ザイードで起こった異変なんですけど」


ミアが提示したクエストは、ここから南西の方角にある街で起こったある種の事件だった。


その街、ザイードに住む子供たちの様子が最近おかしいという。同じ年代の子供たちが謎の病に苦しんでいるらしい。


「謎の病って、具体的にはどんな症状が出てるの?」

「一般的なものとしては息苦しさや幻覚、などですね。人によっては体に黒いアザのようなものが浮かぶこともあるそうです」

「原因はわかってない?」

「はい、原因は不明で、治療法もいまだに見つかっていないようです。向こうにもギルドはありますが、同じエリアということで、こちらにも依頼が来た次第です」

「ヒーラーでも治らなかったの?」


ミアはうなずいた。


「医者もヒーラーもお手上げの状態で、普通の病気ではないようです。なので、ザイードでは悪魔の仕業ではないかと噂されているんですね」

「悪魔」

「何も根拠はないんですけど」


なるほど、それならハーミットさんが興味を持ってもおかしくはないけれど。


「これまで悪魔による、似たような異変は起こったことはないの?」

「ないと思います。悪魔による何かしらの影響であるのなら大騒ぎになっているはずですから。どちらにせよ、不安が広がっているのはたしかです。体調が悪化しているのは子供たちばかりで、そこに何かしらの共通点があるはずなのですが、食べ物や風土病などが原因とも言えないようです」

「呪い、みたいなものじゃないの?」

「ジョブには呪術師と呼ばれるものは存在しますが、その呪いなら解除する方法はあるんです」


ただ、とミアはためらうような間を置いて続けた。


「ダーナ教団の仕業となると、把握できていない力がある可能性はあります。彼らは失われた魔術を使うことができるので」


魔術は悪魔が残した召喚術みたいなものだったよね。おそらく、悪魔がたくさんいるような世界との繋がりを部分的に開くものだと思う。そう考えると、こっちの世界にも知識の蓄積はないから対応も難しいかもしれない。


「いままでに亡くなった子供はいるの?」

「幸い、まだ死者は出ていません。ただ、このまま放置しておけば、いずれそうなる可能性はあります。ギルドとしても早めに解決しておきたい案件なのですが」


悪魔という噂があれば、ハーミットさんがそこを訪れている可能性はあるわけだけど、仮にいなかったとしても、わたしはそこへと向かうべき責任があるような気がした。


苦しんでいる子供たちを放っておくことは出来ない。わたしには治癒能力も技術もないけれど、世界を救うと言われているモフモフ召喚士として黙って見ているわけにはいかない。


「わかった。とりあえずわたし、行ってみるよ」

「ありがとうございます。聖なるモフモフの力こそ、いまザイードで必要とされている力かもしれませんからね」


聖なる力、か。そんなものが本当にあればいいんだけれども。


「じゃあ、いますぐに出発しないと。のんびりひている間に子供が亡くなってしまうかもしれないし」

「どうやって向かうつもり?」


クローネさんからそう聞かれる。


「ララの馬に乗せてもらおうと思ってますけど」

「ザイードは同じエリアとはいっても、それなりに遠いわよ。いまから向かったら夜を超えるのは確実よ。モフモフ召喚士としてはちょっと危険すぎるわね」


いまはもうお昼を過ぎている。馬に乗っている途中で夜になったらいろいろな対応が難しくなるのは間違いがない。


「じゃあ、出発は明日に延期するしかないということですか?」


クローネさんは首を振った。


「他に良い方法があるじゃない。山から平然と降りてきたあの生き物を使うとか」

「まさか、ケルちゃん、ですか?」


今度はクローネさんはうなずいた。


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