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史上最弱のモフモフ召喚士~レベル上げは罪ですか?~  作者: パプリカ
第一章 モフモフ召喚士の誕生と成長編
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王都到着。

巨大な門を通ってなかに入ったとき、わたしはすぐに他の街との違いを感じた。

活気、というものが肌で感じられるほどだった。人が絶え間なく行き交っているからなのか、他の街とは空気そのものが違う。


建物は密集していて、雑然とした雰囲気があった。どこからか常に声が飛んできていて、賑やかさが馬車の中まで伝わってきた。


わたしは馬車のカーテンをめくって、外の景色を眺めていた。この馬車は密閉型で、横についている窓からしか外を見ることが出来ない。


アランさんからはもしモフモフ召喚士だとわかると街が混乱するかもしれないから、あまり顔はださないようにと言われてはいたのだけれど、我慢は出来なかった。


「あ、お城が見えたよ」


わたしは窓を開いて、外に顔をだした。映画で見るような大きなお城が丘の上に建っている。


「やめておきなよ、アリサ。モフモフの女神だってばれちゃうよ」


ララがどこか呆れたように言う。


「平気だよ。誰もわたしの顔なんて知らないんだから」

「列をなした騎士団に、豪勢な馬車との組み合わせというものを考えると、そのような発想に至ることもあり得なくはないと思いますが」


ベアトリスが冷静にそう指摘する。


「わたしが来るって、みんな知ってるの?」


わたしはとりあえず、窓を閉めた。


「どうでしょうか。安全上の理由からあえては伝えていないかもしれませんが」

「いや、案外伝えてるかもよ。だってモフモフ召喚士はこの国にとって希望の星だからね。国威発楊のために利用するのは当然だと思うよ」


馬車の両脇も騎士に挟まれている形なので、直接的な反応というのはあまり見られないのだけれど、たまにこちらに向かって手を振ったりしている人もいるので、歓迎はされているようには感じる。


「なにより、アルスターとの関係がさらに悪化してもおかしくないからね。団結を促しておいて損はないよ」

「アルスターって、隣国のことだよね」

「うん。アルスター帝国」


大陸を二分するような形でせめぎ合うガリア王国とアルスター帝国。この二つは長年、対立してきた。


そのきっかけのひとつがアルスターの独立宣言。


ガリアとアルスターはもともとひとつの国だった。フィオナがガリアを建国して以降、広大な大陸の統治を安定化させるために、いくつかの地域に自治領を置いた。王都以外でもっとも大きかったのがアルスターだった。


どうしてアルスターが独立を宣言したのかは、わかっていない。ただ、もうひとつの対立要素であるダーナ教団が関わっているかもしれないという見方が強い。


ガリアの教えであるモフモフ教を完全に否定しているダーナ教団。その本部がアルスターにはあると見られている。


「とはいえ、いまのアルスターは声高に反フィオナとか反モフモフを掲げている訳じゃないんだよね。ダーナ教団をかくまっていることが確かだとしても、それはガリアを弱体化させることを目的としているだけなのかもしれないし」

「アルスターがガリアを滅ぼすために、ダーナ教団を利用しているということ?」

「かもしれないね。ダーナ教団のフィオナやモフモフに対する憎しみは強いというから、それを上手く使えば戦力としてかなり計算ができるからね」

「……本当に争いって起きてるのかな?」


ちらりと様子を見ただけだけれど、そんな様子は微塵も感じられない。王都の人たちはいまも普通の暮らしを続けているような感じだった。


「ここも前線からは遠いし、防衛もしっかりしているから実感がないのは当然だね。国境での衝突も長く続いていて麻痺している部分もあるだろうし、定期的に停戦もしているから、そこまでの緊張感はないのかもね」


改めて不思議に思う。どうしてガリアとアルスターは戦争をしているのだろう?

アルスターが独立をしてもう何百年も経っていて、その間に散発的に争いが起こっている。


和解の兆しはなくて、そもそもアルスターが独立をした動機も不明。

何か特別な事情が隠されているような気もする。


「王都が攻め込まれたことはないの?」

「前に大規模な戦争が行われたのは、百年も前。そのときにもしかしたら、そういうことがあったのかもしれないけど」

「100年前と言えば、前回のモフモフ召喚士が現れた時期と合致しますね」


ベアトリスがそう言った。


「そりゃそうだよ。モフモフ召喚士は国が危機的な状況の時に現れるんだから」

「でもたしか、前回のモフモフ召喚士はすぐに殺されたんだよね」


モフモフ召喚士を殺したのは、ダーナ教団と言われている。そして、その背後にはアルスターがいたと見られているようだ。

でも、わたしの頭には、ここでひとつの疑問が頭に浮かんだ。


「……それって、おかしくない?」

「なにが?」

「だって、危機を救うためにモフモフ召喚士が現れるんだよね。そのモフモフ召喚士が殺されたら、危機は回避できないんじゃないの?」


いまもこうしてガリアは国として存続している。モフモフ召喚士がいなくても、危機は去ったということになる。

なら、モフモフ召喚士の意味ってなんなんだろう?なんのために呼ばれたの?


「……言われてみると、たしかに妙だね」

「モフモフ召喚士にはそもそも、なんの意味もないんじゃないかな」


いまのところモフモフを呼ぶだけだし、基本的な能力も劣っている。自分で言うのもなんだけれど、救世主や女神とは程遠い。モフモフ召喚士はレアジョブなだけであって、それを誰かが勝手に伝説と結びつけただけなんじゃないかなってわたしは思った。


「それはあり得ないよ。ほら、教会の地下迷宮なんて、あんな壮大なものをフィオナは残しているんだよ。何かしらの特別な力はあるはずだよ」


フィオナの地下迷宮。普通の人には開けられない扉があり、それがモフモフを出した途端に開いた。たしかにあの感じだと、モフモフ召喚士は特別なものにも思えるのだけれど。


「もしかすると、あの迷宮をクリアすることで、ガリアとアルスターの戦争を終結させられる、それがモフモフ召喚士の意味なのかもしれません」


ベアトリスがそう言うけれど、それはおかしいような気がする。だってガリアとアルスターが対立したのは、フィオナがなくなった後の事なんだよね。ガリアとアルスターの将来の関係なんて、当時のフィオナにはわからなかったわけで。


「まあ、百年も前のことだと、わからない部分も多いんだよね。隠された何かが残ってるのかもしれないし」

「当時のことをもっと知ることはできないかな?」

「それは難しそうだね。百年も前のことだと、ほとんどの人は死んでいるし、モフモフ召喚士関連のこととなると文書の管理も徹底されているからね」

「なら、王様とかに聞くしかないのかな?」

「知ってるかもしれないけど、答えてくれるとは限らないよ。モフモフ召喚士にとっては不吉なことだから、曖昧にごまかされるかもしれない」

「エルフなら話は別かもしれません。彼らの中には当時のことを知っているものが、まだ生きているでしょうから。ただ、人里離れたところで暮らしているので、簡単には話は聞けないとは思いますが」


エルフーー長寿命で知られている種族だよね。自然と調和して森のなかで暮らしているイメージがあるけれど、こっちでもそうみたいだった。


「エルフってどのくらい長生きなのかな?」

「正確なところはわかりませんが、数百年と言われています」

「数百年!」


それだけ長生きなら、フィオナの言い伝えに関しても直接聞くことができるのかもしれない。


いずれエルフにも会ってみたいな、とわたしは思った。

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