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ドラゴン 3

「まさか、まだ戦えるの?」

「いや、視力も奪われているし、そこまでの体力はないはずだが」


ドラゴンはこちらに顔を向け、その口から炎を放った。距離があるので、結界を張らなくてもこちらに当たることはなかった。

ドラゴンはその場から動かず、ずっと炎を吐き続けているので、迂闊に近寄ることは出来なかったけれども。


「これって、この前の狼人間と同じパターンじゃない?」


ウェアウルフは毒霧を発生させていたけれど、ドラゴンは炎でこちらを牽制している。そうして近づかせないようにしながら、体力を回復させているのかもしれない。


「マークさん、ドラゴンのマジックポイントは残りどのくらいですか?」

「このドラゴンにマジックポイントはない」

「え、ない?」

「あの炎はドラゴンにとってのひとつの機能のようなものだろう。死ぬまで延々と吐き続けられるのかもしれない」

「体力は回復しているの?」


クローネさんからそう聞かれ、マークさんは首を振った。


「いや、幸い自動回復の能力はないようだな。モフモフを当てれば、決着はつくだろう」


良かった。

とは言っても、あの炎を乗り越えないといけないわけで。


「とりあえず、結界のモフモフアタックを試してみたらどうだ?」

「はい」


わたしは言われた通り、プリシラとの共同作業でモフモフアタックを放ってみた。


でも、半ば予想した通り、炎の猛威を乗り越えることができなかった。

プリシラの結界は、ある程度の炎ならば防ぐことはできる。

でも、空中に浮いたモフモフ結界はどうしてもある程度の軽さがなければならず、それだと炎の勢いによって押し返されてしまう。

正面からの炎を突破するには、かなりの勢いが必要だった。でもきっと、炎の勢いの強い部分に触れれば、結界は最終的に壊されてしまうかもしれない。


「ど、どうしよう」


ドラゴンを倒すにはモフモフをぶつけるしかない。でも、正面からでは結界モフモフアタックは向こうまで届くことはない。


「じゃあさ、モフモフを重い結界で囲って、それを滑らせるようにして運ぶってのはどう?」


ララの提案は、まずは結界で囲ったモフモフを床に置き、それをベアトリスのパンチかキックかで向こうまで移動させるものだった。


「床に氷の道みたいなものを作って滑らせれば勢いが出るし、壁際の端の方を狙えばすんなりと通り抜けられるんじゃない?」

「なるほど。端の方なら炎も届かないかもしれないよね」


悪くないアイデアかも。ドラゴンはちょうど真ん中くらいにいるし、壁際なら正面から炎の圧も受けないかもしれない。

仮に炎が端の方まで届いたとしても、横からの圧力ならやり過ごすことは可能かもしれない。


モフモフが向こうについたら、あとはわたしがモフモフを横に操作して、ドラゴンにダメージを与えれば、決着はつくはず。


プリシラに結界で囲ってもらったモフモフを床に置く。その正面にプリシラは細長い氷の道を作った。


ベアトリスが結界の後方を蹴りつけ、 氷に滑るモフモフが一気に前進する。ドラゴンの炎は猛烈で、壁際のほうまで届いたのだけれど、どうにかそれを乗り越えることができた。結界のモフモフは向こう側の壁にぶつかり、止まった。


「やった。あとはモフモフを横に動かせばドラゴンを倒すことができるよね」


けれども、そう上手くもいかなかった。


「あ、あれ?」


モフモフは動かなかった。どれだけ念じても、炎の壁によって遮られた向こう側でじっとしている。


「どうやら、遠すぎるせいでコントロールが出来ないようだな」

「そ、そんな」


モフモフをドラゴンに当てるには、わたしがモフモフに近づくしかない。でも、炎が絶え間なくこちらに向けられている状態では、それも難しい。

わたしを結界で覆う、というアイデアも出た。モフモフと同じような方法で向こうまで移動させてはどうかと。そうすればモフモフを近くで操作することが出きる。

けれども、プリシラはそれに反対した。


「衝撃が大きすぎます。無敵と言われるモフモフだからこそ耐えられたのであって、アリサさんが同じことをしたら気絶する可能性が高いです。運ばれていく間の揺れはかなりのもので、場合によって死も覚悟しなければなりません。それを恐れてベアトリスさんが手加減をすれば途中で止まることもあり得ます。そうなると炎から逃げ出せずに、一瞬で焼き殺されてしまいます」


わたしの方がモフモフよりも当然重くて、それを移動させるにはベアトリスも手加減は出来ない。モフモフのように壁にぶつかれば、結界で覆われていたとしても衝撃は凄まじいものになる。それこそ自動車事故、レベルかもしれない。


「しかしそうなると、モフモフはどうなるの?戻すことも出来ないってこと?」

「いや、すでに消えたようだな」

「え?」


向こう側を見てみると、たしかに先程まであった白い点にしか見えないモフモフの姿がない。


「どうやら、アリサとの繋がりが消えたことで、勝手に戻ったらしいな」


わたしはモフモフをもう一度喚んでみた。すると足元に白いモフモフがポンと現れる。


「これでとりあえず戦略は立て直せるね。まあ、向こうへ行く方法を思い付かないと意味もないだろうけど」

「結局のところ、アリサ様が向こう側にいけなければならないわけですね」

「炎の壁を越えるには、それなりの勢いがなければいけない。生身の人間ではなかなかハードルが高いな」

「プリシラの魔法で炎を抑えて、その隙にアリサが向こう側に渡るというのは無理なのかしら?」


クローネさんがそう提案をするけれど、プリシラは首を振る。


「結界を固定するには、その対象全体を囲う必要があります。あの大きさでは強固なものは無理ですし、ドラゴンの目の前に結界を設置しても、すぐに吹き飛ばされるだけです」

「なら、さっきみたいに水でお腹を膨らませるのはどうかしら?」

「それでも炎はやまないかと。ここからでは弓で狙うことは難しそうですし、大きなダメージがなければ、ドラゴンの魔法は消えることはないでしょうから」

「……」


実はこの時、わたしの頭にはひとつのアイデアが浮かんでいた。

これならいけるかもしれないと思う。


「ベアトリス、お願いがあるんだけど」

「何でしょうか?」

「わたしを、向こうまで飛ばしてくれない?」

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