よろしくおねがいします
「今日はよろしく頼む」
「よろしくおねがいします~」
「お任せなさいな!このクリスティアーネ・カートライトが見事!
試験に合格させて差し上げますわ!」
「くっクリス様、声が大きいですぅ…」
「む…」
昇級試験の勉強のため街の図書館に集合した一行。
D級であるカイとサンバンの面倒はクリスが、
E級であるセシリアの面倒はアンジェが見ることとなった。
「―――で―――が――となり――――というわけですの!」
「なるほど…つまりここは――――」
「そういうことでしてよ!やはり飲み込みがいいですわね!
ほら、サンバン!あなたも負けてられません事よ!」
「むぅ…」
(一応自分でも試験勉強はしてたんだが…人に教えてもらうとわかりやすいな。
何となくで済ませてた部分に理屈が通って全体の解像度が上がってくる…)
「あ…い…う~…」
「せっセシリアしゃま…お書きになる字も可愛らし…じゃなくてっ
これだと’う’じゃなくて’ら’になっちゃいますぅ」
「う~…?」
それぞれの勉強を進めていく一同。
陽も真上へ昇りセシリアのお腹が鳴ったところで食堂へ移動し、
一旦昼食を摂ることにする。
「ぱくぱくムシャムシャんむんむっ」
「ガツガツガツガツ…」
「セシリア様サンバン様、おかわりどうぞですぅ」
「そうだクリスさん、厚かましいんだがまたお願いがあるんだ」
「あら?何かしら?」
「出来たら魔術ライセンスの方も勉強を見てもらえると助かるんだが…」
「その程度のことでして?構いません事よ!」
冒険者資格とは別に魔術を扱う者には魔術ライセンスが必要となる。
こちらも冒険者資格と同じくEが最低でD・C・Bと高くなっていきAが最高。
ライセンスのランクが高いほど魔術に秀でていると見なされ、
専門性の高い魔術を行使する・魔術に携わる仕事に就くことが出来るようになる。
冒険者としても依頼の条件に魔術ライセンス〇以上、というものがあったりするので
取っておいて損はない資格である。
「カイさん、あなたの魔術ライセンスのランクは?」
「Dだな…一応Bを目指したいんだが」
「まぁ!ワタクシのランクはCでしてよ!
今日の勉強を見たところカイさんもCランクならすぐなれますわ!
そうなるとワタクシBランク目指して目下勉強中ですのでライバルになりますわね!
どのような専攻をお考えでして?」
冒険者資格は広く一般教養が試験になるのに対し、
魔術ライセンスの方は細分化され専門化された分野の中から専攻を選び、
その知識・技量が試される試験になる。
例えばクリスの炎の魔術なら鍛冶の際に使われる炎の扱いだったり、
家屋の暖房・照明のために一定の炎を発生させ続ける技術・知識が問われる…等だ。
当然クリスは攻撃に関わる分野を専攻している。
「ああ、これなんだが…」
「…なるほど、地の魔術と言えば、ですわね!
それならなおの事力になれると思いますわ!」
「本当か!?助かる!…それでこの件でこっちが支払う報酬なんだが…」
「何をおっしゃいますの!そんなもの受け取れませんわ!」
「え…いやしかし」
「コホン。よろしいですかカイさん?貴方は私の命の恩人でしてよ?」
「そ、そうか…?覚えてないんだが…」
「そうなんですのよ!それでワタクシの命なんて値の付けられないモノでしてよ!」
「ま…まぁそうだな」
「お金を払えば手に入る知識とお金でどうにもならないワタクシの命!
比べるまでもありませんわ!ワタクシが差し出せるものでしたら
どうぞ受け取ってくださいまし!」
「…はい…ありがとうございます」
悪魔の角の報酬は多かったがそれでも出費は抑えた方がいい、
とカイは考え厚意を素直に受け取ることにした。
「それにしてもセシリアしゃま…お髪もとってもきれいですぅ…
どんなシャンプーを使っておられるんですか?」
「んむっ…もぐもぐもぐ?」
「ん?俺と同じのだから普通の石鹸だが…」
「?!それはいけませんよ!」
「それはいけませんわ!!」
「うぉっ」
「髪は女性の命でしてよ!!」
「ですぅ!!」
「もしかしてお肌もただの石鹸で洗ってまして??
いけませんわいけませんわ…!!」
「いけませんです…これはいけませんですぅ…!」
「えっえっ」
「カイさん??女性にそんなテキトーなもので体のケアをさせてはいけませんわよ!?
女性の美は一日にしてならず…しかし転げ落ちるときはほんの一瞬!!
…とお母さまがおっしゃっていましたわ!たまたまセシリアさんはお綺麗な体を
保ってらっしゃいますがそのような…っそのようなケアではその美はあっという間に
崩れ去ってしまいますわ!!」
「は…はぁ…」
「もちろんカイさんもセシリアさんがきれいな方
がいいですよねいいですわよね??」
「ま、まぁその方がうれしいな…」
「決まりですわ!お昼を食べたらセシリアさんのスキンケア・ヘアケア…
その他もろもろのお買い物ですわよ!」
「賛成ですぅ!」
「…はぁ…」
「セシリアさんにはどんな物がいいかしら?」
「楽しみですねぇ~ふふふぅ…」
「カイさん?呆けてらっしゃいますが貴方も付き添うんですのよ?
殿方の理解と協力も不可欠ですからね??」
「……はい」
「セシリアしゃまぁ…もっとお綺麗にしますからねぇ…うふふ…」
「パクパクもぐもぐもっもっもっ?」
「…ガツガツガツガツ」
「……」
女性二人の勢いに気圧されてしまうカイ。
何となくサンバンの普段の苦労も垣間見えた気がしてサンバンを見やる。
サンバンは軽く頷きながらも食事を続ける。
そして食事を終え、買い物に出かけるがその内容は
種類が多く、さらにどれもかなり値が張るものばかりだった。
セシリアの食費は特殊だとしても女性にはお金がかかる…
と認識したカイは稼ぐ意識に改めて気合を入れなおす。
ついでにクリスとアンジェも自分の買い物をしていたため
カイとサンバンの両手が女性陣の戦利品で埋まってしまう。
若干呆れた二人の溜め息のタイミングがかぶる。
カイとサンバンはお互いに何だか仲良くなれそうな気がした…。
「あら、もうこんな時間ですの?それではカイさん?
しっかりセシリアさんの美を保つんですのよ?いいですわね??」
「…はい」
「それではセシリアしゃま、またお会いしましょう!」
「は~い」
「……む」
日も暮れてきたのでその日は解散となる。
別の日には実技試験のため合同で狩りに出て技を磨く。
また別の日には再度図書館に集まり勉強を進める。
そうして試験の日が近づいて行った。
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