かわいくないかもです
「……んん………うぉっ」
そよ風が当たる感覚に目を覚ましたカイの目に飛び込んできたのは、
自分の上で眠り、毛皮の毛布に身を包むセシリア。
そよ風の正体はセシリアの寝息だった。
(あ~…そういえば昨日シャワー室で……あ~…)
昨日の夜の交わりをぼんやりと思い出してきたカイ。
その上で眠るセシリアを含め、二人は今、全裸だった。
「んんぅ~…あっ…おはようございます~…カイ君…」
「ああ、おはようセシリア」
「んふふぅ…ん…」
昨日のシャワー室での交わりで幾度となく口づけを交わしたせいもあり、
その感覚が気に入ってしまったセシリアがカイにキスをしてくる。
「んむ……ふふっ…カイ君ちくちくします~…」
「……今剃る」
「えぇ~…」
セシリアに髭を指摘され、髭剃りを始めるカイ。
セシリアは自分の元を離れるカイを名残惜しく思いながらも
未だに意識が起ききっていないせいで動けず、ベッドに吸い寄せられ二度寝をしてしまう。
「すぅ…すぅ…」
(今は…10時か。冒険者ギルドに行っても目ぼしい依頼は粗方取られてるだろうなぁ…)
(まぁ一応行くだけ行ってみるか。ついでに朝飯…いや昼飯か?でも食べて)
(それから狩りに行ってセシリアがどれくらい戦えるか見てそれで…)
「ぱくぱくっもぐもぐがつがつがつずず~っ」
(指名依頼ねぇ…)
ものすごい勢いで食事をとるセシリアの横でカイは手に持った金券を眺める。
ギルド職員から渡されたものだ。
ギルド職員の話によれば、
森や平原などで発見した普段はそこにいない強力な魔物の討伐は済み、
次はダンジョン内でのそういった変わった魔物の調査・討伐を進めるとのこと。
その依頼にカイとセシリアが指名された。場所は街の近くのD級ダンジョン。
強力な魔物が発生するならD級のカイとE級のセシリアでは力不足では?と質問したところ、
強力と言ってもランク付けされた場所の1級上程度の魔物しか現状は発見されてないこと、
他のC級がメインのパーティとも組んで調査に当たってもらうこと、
C級のビッグボアを倒した二人なので大丈夫だろうと判断されたこと、
ついでにこの指名依頼を受けてくれる人が中々おらず困っていたことも話された。
金券はこれで何とか、とギルド職員から前金代わりに渡されたものになる。
金券は1枚1万ゴールド相当のものがカイとセシリアに1枚ずつ。
今回の指名依頼の報酬は一人7千ゴールド。
依頼の日程は明日の9時から。
ダンジョン入口前に直接集合してもらい各々話し合ってから
調査・討伐を始めてほしいとのことだった。
「がつがつっんむんむぱくぱくぱく…」
(金券1万は普通に1万払うより安いのか…?その辺のシステムはわからんな…)
「ぱくぱくパリパリカツカツカツ…」
(まぁ貰えるものは貰っとこう。確かこの金券は近くの武具屋でも使えたはず…
セシリアの装備も揃えたいと思ってたところだし丁度いい)
「ずずずずっぱくぱくもっもっもっ…」
(何にせよ今日はセシリアを狩りに連れていく。その後戦い方を見て装備を整える。
ついでに依頼の準備かな。…しかし明日とは急だなぁ)
「ごっくんっ…はぁ~、おいしかったです~ごちそうさまでした~」
「ああ、良かったな。ごちそうさまでした」
セシリアが食事を終え、
カイも思考がまとまったところで今日の狩場へ向かうことにする。
「8300ゴールドになります」
(昨日の夜より食ってる!)
「~♪」
カイは支払いの半分をセシリアに出してもらい、ギルドの食堂を後にする。
「さて…」
今日の狩場に到着するカイとセシリア。
狩場はギトワの森…カイとセシリアが出会い、ビッグボアを倒した森である。
主にD級までの魔物が出没し、カイが一番世話になっている狩場だった。
「それじゃあセシリア」
「は~い」
「ここの魔物を倒してみてくれ」
「わかりました~」
「危なくなったら俺も手伝うがビッグボアの攻撃に耐えたし
ビッグボアを素手で倒せたしでまぁ大丈夫とは思う。
ここの魔物はビッグボアに比べたら大分弱い」
「そうなんですね~」
「お…ちょうどいいところに」
ガサッと音がして茂みから魔物が現れる。
ホーンラビットという角が生えたウサギでE級の魔物だ。
この狩場の主な魔物の1匹である。
「わぁ~かわいいですね~」
「いやいやいやちょっと待っ!」
「んぶっ」
ホーンラビットに近づき、かがんでよく見ようとするセシリアだったが、
ホーンラビットは突進しその角がセシリアの鼻に激突。
セシリアは尻もちをついてしまう。
「大丈夫か!?…大丈夫なんだな…」
「…ん~」
「…いやそうじゃないんだが」
セシリアの元へ駆けつけ顔を覗き込むカイ。
そんなカイの心配をよそに唇を軽く突き出すセシリア。
顔が近づいたためキスをすると思ったようだ。
セシリアの顔は全くの無傷だった。
「あんっもぉ~~~~」
セシリアのお尻にホーンラビットが再び激突する。
これもまたセシリアは無傷なのだがカイとのキスを邪魔されたと感じ
少し頭に来たようだった。
「えいっえいっ」
「あ~あ~あ~…」
ホーンラビットのいるところ目掛けて拳を振るうセシリア。
ホーンラビットは難なくそれを避け拳が当たった地面にボコッボコッと穴があく。
カイは見てられなくなり地面に手を付ける。
隆起した土がホーンラビットの足元を覆い、動きを止める。
「えいっ!」
「ギッ…」
ようやくセシリアの拳が当たり、ホーンラビットは絶命する。
ぺしゃんこになったホーンラビットをセシリアはじっと見つめて言う。
「………やっぱりかわいくないかもです」
「………そうだな」
次に現れたのはグレーウルフ。
灰色の狼でD級の魔物であり、この魔物もここでの主な魔物だ。
「えいっえいっ」
スカッスカッっとセシリアの拳が空を切る。
(………身体能力はすごいんだが運動神経はダメみたいだなぁ)
若干のんきにカイが眺めているとグレーウルフがセシリアの手に噛みつく。
「うおっ!すまん!」
「やぁんっ」
「ギャゥンッ…ッ…」
噛みつかれた手をグレーウルフごと振り回し、地面に叩きつける。
グレーウルフは若干痙攣したがすぐに動かなくなってしまった。
「…これも大丈夫みたいだなぁ」
「…~♪」
「いやそうじゃないんだが…まぁいいか」
セシリアはケガの確認のために自分の手を取るカイの手と手のひらを合わせ、
指を絡めて恋人繋ぎにする。
やはりセシリアは無傷だった。
「ガツガツっぱくぱくバリバリバリ」
狩りを進め、魔物の素材を持ちきれなくなってきたころに
今日狩った魔物の肉で食事にする。
カイは肉を焼きながら考える。
(自分からは一度も攻撃当てられなかったなぁセシリア。攻撃も受けまくっていた)
「ぱくぱくモグっモグモグコッコッコッ」
(まぁ全く傷つかなかったしどの魔物も一撃だったわけだが…
これだと負けはしないが勝てもしないなぁ。
やっぱり俺が足止め、セシリアが攻撃…っていうのを基本の戦い方にするか)
「ガツガツばくばくんもっんもっんふ」
(傷つかなかった…とは言え攻撃をガンガン受けるのは俺の心臓に悪い…。
幸い敵の攻撃を腕で受けられる程度にはなった。
拳での攻撃がメイン、と考えて防具兼武器になる手甲を用意するか)
「バリッんぐんぐガツガツガツ」
(しかし服の方も丈夫だなぁ。結構魔物の攻撃を受けたんだが破れも穴あきも無い。
高いだけあったな…長持ちしてくれよ)
「あむっぱくぱくバクバクもっもっもっ」
(服…服か……。あとは胸当てだなぁ…。ちょっと揺れすぎる…どうしても目が行く…。
それにハミ出そうになったのを何度直したか……)
「ばくばくっカリカリぱくぱくぱくぱく」
(よし、セシリアに買うのは手甲と胸当て。
帰りに武具屋に寄ってそれらを買って他にも準備に…)
「ふぅ~、おいしかったです~ごちそうさまでした~!」
「ああ、どうも」
「んふふ~カイ君とおそとでたべるおにくが~いちばんおいしいです~」
「そうか。それはよかった」
「はい~!」
(俺的にも食費の面で助かるな…セシリアには腹いっぱい食べてもらいたいところだし
今度から狩場を決めるときは食える魔物がいるとこで考えるか…っと)
「セシリア。いい時間だし戻ろうと思う。
が、最後にちょっと実験に付き合ってくれ」
「は~い」
「上手く行けばセシリアの武器が増えると思う。
まずこれをこうして…」
「ふむふむ~」
「こう…こう…!」
「わかりました~」
「試しにやってみてくれ」
「は~い」
「お…行けそうだなぁ。うまいうまい」
「えへへ~」
そして帰りに武具屋に寄り、手甲と胸当てのセット1万9千800ゴールドを
カイも金券を出し、セシリアに購入。
その後、雑貨屋等に寄り明日の指名依頼のための準備も済ませ、
冒険者ギルドで今日の戦果を買い取ってもらい宿へ帰宅。
買取の金額は計6400ゴールドとなり一人当たり3200ゴールド。
半分は自分で出したのだがカイから新しく手甲と胸当てを
プレゼントされたと思ったセシリアの機嫌は非常によくなり、
宿に戻っても当分カイに抱き着いて離れなかった。
セシリア 手甲・胸当て
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