おはようございます
「は?」
森の中を歩く男が遭遇したものは
「すぅ…すぅ…」
「まじかよ…」
寝息を立てる全裸の美女だった
「なん…どういうことだ?」
男はしがない冒険者であった。然程優秀でなく、日銭を稼ぐので精一杯。
それでもなんとか食っていけはする程度の腕。
今日も今日とて魔物を狩っていたが、今日は何故か獲物が少なく
収入が減ることにため息を漏らしつつ帰路につこうとしていたところだったのだが…
(…どうする……?関わったらまず面倒なことになると思うが…)
それでも男の心の天秤は関わる方に傾いていた。
理由としては男はどうにもお人好しな性分であり、無視していくということが難しかったこと。
そしてもう一つは
「んん…」 ぶるんっ
「うぉっ」
その美女の容姿にあった。
蒼穹のように青く長い髪。優し気な顔。非常に男の好みであった。
さらに寝息を立て上下し、寝返りにより大きく揺れた片方だけで頭以上の大きさのある胸。
男は大きな胸に目がなかった。
要は自分の下半身に負けたのである。
(クソッ…!)
あわよくば…と言った下衆な考えで動く自分に自己嫌悪しつつ、男は予備の服を美女に掛ける。
そのまま襲ってしまわない程には男には倫理観があり、度胸はなかった。
「大丈夫か?」 ゆさっ ゆさっ 「ぐっ…!」
「んぅ…」
美女を起こすために肩をゆする男だったがそれにより揺れる2つの山。
とても目の保養…いや毒。
(早く起きてくれよ…何か…やばい)
「んん~…ふわぁ…っ」
「起きたか…ちょちょちょっ!」 むに… 「!!すまんっ」
「ん~~??」
男の願いが通じたか目を覚まし寝ぼけた様子で周囲を見渡す美女。
その拍子にはだける服。それを咄嗟に直そうとした男の手に触れてしまう胸…。
「あっ…おはようございます~」
「~~~~っ…おはようございます……」
触れた手に気づいてないのか気にしていないのか美女は平然としているが
男の方は手に触れた物のやわらかく気持ちいい感触と罪悪感が脳内でぐるぐるにうずまいていた。
「……今のはすまない…。許してほしい」
「? いいですよ~?」
「助かる…続けて悪いんだがどうしてあんたこんなとこに寝てたんだ?」
謝罪し、許してもらえたことで少し落ち着いた男が質問する。
「それはですねぇ~…」
「ああ」
「…」
「……」
「………」
「…………」
「…?なんでですかねぇ~」
「…なんでなんだろうなぁ~~~」
太陽のような笑顔で答える美女。肩を落とし、項垂れ、頭を抱える男。
(記憶喪失ってことかぁ~~???どうすりゃいいんだ??マジで)
「あら?大丈夫ですか~?」
「…俺は大丈夫だよ…あんたこそ大丈夫か…?」
「私もすっごく大丈夫です~!」
「そうか…それは何よりだ…」
「はい~。ありがとうございます~」
(…とりあえず街に連れて戻るか?行方不明者だったなら何か情報があるだろうし…
そうだな…それで行くか!記憶に関しても身内が見つかればなんとかなるだろ多分!)
恐らく自分は元気・大丈夫と言ったポーズを取る美女を尻目に男は思考をまとめる。
若干楽観的な考えになっているのは美女に感化されたからかもしれない。
「ふぅ…とりあえずあんたを街に連れて行こうと思う。役所とか行けば何かわかるかも知れない。
それに『ブオオオオオオオオオォォォっ』……!?」
「?何でしょうか?今の音は~」
「魔物か!?」
ベギベギベギギィ!!
魔物であろう咆哮の主が木々を薙ぎ倒しながら進む轟音が鳴り響く。
その進撃の音は明らかに二人の方を目指していた。
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