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彼の国の婿

広大な領土を有する「彼の国」の女王デルフィナは、玉座に腰掛け疲れた表情をしている。


彼女の夫が患っている病が厄介で、それに付ける薬も無い為、もう、どーしたら良いか分からない。



病名オブザイア溺愛変態馬鹿。


女王が付けた病名である。


婚姻関係を結んでからはや一年。

女王はまだ清い身でいた。



寝所の鍵は毎晩開けてある。

なのに、毎朝白い朝を迎える。



世間が言う、黄色い太陽とやらが見たいものだ…。


一度、夫婦膝を割ってじっくり話そう。


女王は夫のアンドリューを呼び出した。




「我が夫、アンドリューよ。」



この男は、この呼ばれ方が嫌いだ。

アンドリューは、眉間にシワを寄せ、今にも唾を吐くんじゃないかと思われる程、本当に嫌そうな顔をしている。

当然、返事などしない。



こうなると話をするどころでは無いので、女王が折れた。



「……オブザイアの伴侶アンドリューよ…。」



「うむ、何だ?」



こいつ…!オブザイアになって殴り倒してやろうか!


いや、オブザイアに変化した時点でコチラが負ける。

何かが負ける!




「実は重要かつ、残念なお知らせがある。」



「はぁ。残念?はぁ…」



「オブザイアの事についてなんだが…」



「オブザイア殿の!!?」



…妾の言葉なぞ、ろくに聞きもしないくせに…

オブザイアの名前が出るだけでコレか。

解せぬ!



「うむ…実はだな、我々王族が変化する狂戦士なのだが…実は性に関する器官が無い。」



「うむ、で?」



こやつ、妾の言葉の意味を理解しているのであろうか?



「つまりだ、お主がオブザイアと……

事に及ぶ事は出来ぬ。」



妾は…何と阿呆な説明をしているのか…。



「男型でも、女型でも、それらしく見えているだけで、全て筋肉なのだ。」



アンドリューの顔を直視し辛く、横目で見る。



「ああ、道理で!見当たらないと思った!」



納得したように手をパンと叩いたアンドリュー。

今、何やら不穏な言葉を聞いた気がする。



「見当たらない……とは?」



女王は冷や汗をかきつつ、尋ねてみた。




「こないだ、アホな南の国が攻めて来たんで、オブザイア殿とぶっ潰しに行ったんだけど。」




「……それは…知っているが……。」



知っていると言うか、オブザイアは女王自身だ。

なぜ、オブザイアと女王を別人扱いするのか……


オブザイア溺愛変態馬鹿病は脳も腐るのか。




「オブザイア殿が、それは美しく華麗に…

血まみれになって……。」

  


「…あ、ああ、血しぶきが温かく、心地よく…」




うっとりと話すアンドリューに返事をしたら、何で女王が知ってんの?みたいな顔をされる。


だから、それは私自身だろうが!と言う顔をする。




「気持ち良かったんでしょうね…

オブザイア殿、屍の山の上で寝ちゃったんですよ」




そういえば、あの日は月の光も心地良くて…オブザイアのまま寝てしまった…が……はい?




「あまりにも美しくて誘ってるみたいだったので、下履き捲ってみたので。」




「お前はアホか!」




妾には指一本触れもしないくせに、オブザイアの寝込みを襲おうとするとか!


誘ってるみたいだった?屍の山の上で大イビキかいてる熊みたいなオッサンが?

んで、下履き捲ってみましたって!



「まあ、無いなら無いで、何とでもなるもんで。」



シレっと言ってのけるアンドリュー。

怖い事を平然と言う!



「何でしたら女王が、最中にオブザイア殿に変わってくれても」




「死ね!外道!」




女王はオブザイアに嫉妬する。

自分自身に嫉妬する。



世継ぎを望む道は遥か遠いようだ。





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