表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/65

28 出発



 夕食時。食堂には私とユズフェルトの他に、ナガミとアーマス、アムがいた。そんな中で、ユズフェルトはワイバーンを倒した時に話したことを彼らに伝える。


「王都を出ようと思う。お前らはどうする?」

「りょうーかい。」

「待て、急すぎるだろう!?」

「・・・わかった。」


 最初に応えたのはアーマス。ユズフェルトがアーマスを雇っているらしいので、雇い主に付いて行くことに抵抗がないのだろう。そして、アムも荷物持ちとして働かなければ生活できないので、ユズフェルトに付いて行くしかないようだ。

 しかし、ナガミは違った。確かに、ナガミの言う通り急すぎる話だが、ユズフェルトの話を聞いた後では、彼はナガミを置いていくだろうと予想する。


 ユズフェルトは、別に仲間がいなくてもいいというのだ。きっと、他の仲間はユズフェルトを必要としているけど、その思いは一方通行だ。


「確かに急な話だが、俺はもう決めた。あとは、ナガミがどうするかだ。アーマスとアムは行くようだし、ソロになるかコリンナとペアを組むか、別のチームに入れてもらえばいい。」

「私は、抜けるとは言っていない!ただ、もう少し説明してくれてもいいだろう。なぜ、急に王都を出る話になった?こうやって話すということは、一時的なものではないのだろう?」

「あぁ。しばらく返ってくるつもりはないし、下手したらもう来ることはないだろうな。」

「なぜそこまで・・・いったい何があったのだ?」


 コリンナのことが煩わしいと聞いていたが、もう王都に近づきたくないと思うほどだったのかと、私もナガミ同様に驚いた。


 だが、驚いているのは私達2人だけで、アーマスとアムは特に驚きもなく、目の前のご飯を口に運ぶ。アムなど、話は終わったかのように、次々と食料を口に放り込んでいる。

 実際、アムの中では話が終わったのだろう。ユズフェルトが王都を出ると言ったので、自分はそのまま付いて行くだけだと思って、特に疑問はないようだ。


 アーマスも、理由をわざわざ問うことはしない。ただ、アムとは違って、興味はあるようで目だけはユズフェルトたちの方に向けている。


「率直に言えば、コリンナと一緒にいるのが面倒になった。王女なら、王都は出ないだろうし、俺が王都を出るのが一番確実に離れられると思った。」

「あの色ボケのせいだったのか・・・わかった。私も、王都に未練があるわけではないし、一緒に行こう。」

「そうか。なら、出発は明日だ。」

「・・・わかった。コリンナに気取られると面倒だろうしな。」


 こうして、明日には王都を出ることを決めた私たちは、それぞれ荷物をまとめることになった。自室に戻り、買ってもらった服や日用品を一か所にまとめる。

 ここにいた日数は多くないが、ユズフェルトが十分にものを与えてくれたおかげで、それなりに荷物がある。


 それにしても、案外すんなりと王都を出ることが決まったよね。


 高ランク冒険者のユズフェルトが率いる、龍の宿木。おそらく王都でもそれなりの影響力があるはずだ。影響力がある者の移動は、それなりの準備期間が必要ですぐには移動できないと思っていたが、そうではないようだ。


「思ったより、影響力がないのかな?いや、それはないよね・・・ワイバーンを片手間で倒すような人に影響力が無かったら驚きだし。」


 とにかく、明日は出発だ。初めての旅になるので、不安はあるがしっかり休んで万全にしておかなければ。


 机の上に荷物をまとめ・・・とはいっても、私はバッグやリュックなどをもっていないので、まとめて置いてあるだけだ。明日、ユズフェルトが収納してくれるというので、これでいい。


「・・・コリンナ、帰ってこなかったけど、いいのかな?一人前の冒険者だろうから、心配の必要はないかもしれないけど・・・」


 コリンナが帰ってこないことを心配する者は、龍の宿木の中で誰もいなかった。むしろ、明日の出発の邪魔をされないから助かると言った感じだ。

 ユズフェルトに仲間意識がないように、他のメンバーもお互いに仲間という意識がないのだろうか?


 なんだか、想像していた冒険者とは少し違って、そこは残念に感じた。


 仲間を信頼して、命を預け合うような関係・・・そんなのフィクションだったのね。




 結局、次の日の朝もコリンナが帰ってくることはなく、私達はそのまま王都を出ることになった。

 ユズフェルトと私、ナガミ、アムで先に王都を出て、アーマスはギルドに挨拶を済ませてから追いかけてくることになった。


「なぜアーマスなの?リーダーはユズフェルトだよね?」


 挨拶などはリーダーがするものではないかと思い、私はそう聞いた。すると、ユズフェルトは面倒なことは嫌だかからと答えて、さわやかな笑顔を浮かべてごまかした。


「それに、アーマスが一番適任だからね。俺は嫌だし、ナガミやアムもそういうのは向かないってわかるだろう?」

「確かに。」


 偉そうで、人を不愉快にさせそうなナガミは、なるべくなら人と接しない方がいいだろうし、アムは基本無口で、話しても一言二言。そうなってくると、アーマスが一番適任だ。


 おかしいな、暗殺者が一番コミュ力高いなんて・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ