24 亀裂
とりあえず、ユズフェルトが欲しいものが何かと考えて、特に何も思いつかなかった私は、ユズフェルトに直接尋ねることにした。
自室を出て、2階へと降りる。
しかし、ユズフェルトの部屋をノックしても何も反応がなかった。
「出かけたのかな?」
特に今日は約束をしていなかったため、ユズフェルトが出かけていたとしても不思議はない。
「そういえば、お腹が空いた・・・朝食がまだだった・・・」
朝食・・・1階に行けばあるかな?なかったらどうしよう、私の全財産で食べられるのは串焼きくらいだと思うけど、足りるかな?
ユズフェルトを探さないと、お腹が満たされない。
先ほどよりも速足で、私は階段を下りる。とりあえず一階に朝食が用意されていればよし。なければ、ユズフェルトを探しつつ・・・串焼きを買って食べよう。
「あんまりですわっ!ユズフェルト様!」
食度の方から聞こえた声は、コリンナのものだ。ユズフェルトに向かって怒りをぶつけているようだが、コリンナがそのような行動をするのは珍しいと思う。
長い付き合いではないが、コリンナがユズフェルトに好意を持っているのは知っているし、不満はあるようだが歯向かうようなことは一度だってすることはなかった。
何があったのだろう?
私は、食堂にそっと入った。そこには、料理を持って困った顔をしているユズフェルトと、顔を真っ赤にして怒っているコリンナ、一人机に座って頬杖をついているナガミがいた。
「私たち、生き埋めにされるところだったのです!それなのに、何もせずアーマスに助け出されるのを待っていただなんて・・・なぜですか!」
「何度も言うが、あの時は手がふさがっていた。」
「手がふさがっていた・・・あの女を守るため、そばを離れられなかった、ということでしょうか?」
「そうだ。シーナは俺の主だからな、あのような危険な場所に一人にしておくことはできない。」
「何も、ありませんでした。ゴーレムは、アーマスが無力化していましたし、魔物の気配もなかったのでしょう?それのどこが危険な場所なのです?」
「魔の大森林だから、油断はできない。ゴーレムだって、もしかしたらアーマスやアムのように這い上がってくるかもしれない。お前たちを助けている間にシーナが襲われれば・・・」
だんっと、コリンナは近くにあった机を叩いた。
私は驚いて足を止める。
「好きなところに座ってくれ、今料理を運ぶ。」
「うん。」
「朝食!?ユズフェルト様、私は今大事な話をしているのです、そのようなもの後にしてください。」
「お前に付き合うより、シーナに朝食を出すほうが大切だ。」
私が席に着くと、ユズフェルトはコリンナから目を離して、私のテーブルの目の前に料理を並べた。その様子をコリンナが鋭いまなざしで見る。
「おはよう、シーナ。騒がしくて悪いな。」
「私はいいけど・・・大丈夫?」
「気にする必要はない。」
いや、気になるのだけど。
勧められるままにフォークを取って、出されたサラダを食べ始めるが、コリンナの視線が気になって仕方がない。
「よくもまぁ、呑気に食事ができるわね。」
「・・・」
「やめないか、見苦しい。」
コリンナにどう答えればいいのか迷う。しかし、ユズフェルトではなくナガミが、コリンナを止めてくれた。これは意外で私はナガミの方を見る。
ナガミは、コリンナを苦々しそうな顔をしてみている。
「ここは、食事をする場所だ。お前のように喚き散らすほうが場違いというもの、少し頭を冷やしてこい。」
「あなた、どちらの味方なのよ!」
「・・・どちらの味方をするつもりはない。ただ、お前の言い分は・・・見苦しいぞ。助けてくれなかったとユズフェルトを責めているが、そもそも助けを求めるのが間違っている。私たちは冒険者だ。自分のことは自分ですべきだと思わないのか?」
「そんなの、この女にだって言えることでしょう!」
「そうだな。しかし、お前にも言えることだ。だから、私はどちらの肩を持つつもりはない。だが、一つお前に言うとすれば、人間の姫、ぐだぐだ言うのなら城へと帰れ。ユズフェルトは、お前の騎士ではないのだから、助けてもらえなかったことを責めるのはおかしいぞ。」
「黙りなさい!あなただって、脱出できなかったでしょう!」
「・・・確かに、俺は脱出できる能力はなかった。だからといって、ユズフェルトを責めるつもりはない。自力でどうにかできなかった、私やお前が言うべきことではないだろう。」
「・・・もういいわっ!」
だんっと、もう一度机を叩いて、コリンナは食堂を出た。
私は、龍の宿木のメンバーについて詳しくはわからないし、関係性もだいたいしか把握していない。
でも、仲間に助けてもらえなかったことは、とても悲しくてどうしようもない怒りがわくことだと思う。
ユズフェルトに守ってもらった私が同意するのも変な話だが、ナガミの言い分は理解できるもので賛同する。しかし、コリンナの気持ちもわかるような気がした。
大丈夫かな?