表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/65

20 いざ、神殿へ



 これで何度目だろうか。私は初めて来たが、ユズフェルトたちは何度もここを訪れている。


 小さな山のような場所に、ぽっかりと空いた穴。冷気が吹き抜けるその穴を進むと、洞窟のように空洞になっていて、そこに白い建物が立っている。

 聞かなくてもわかる、あれが神殿だろうと。


 龍の宿木は、3回守護者を討伐した。しかし、守護者は再び現れ、4回目の討伐をするために、龍の宿木は再び神殿に訪れることになった。


「少々、見飽きましたね。」

「お前、最初見た時はもっと見たいと言っていなかったか?」

「うるさいわよ、ナガミ。あなただって、もうこのような場所に来たくないでしょう?寒いですし、暗くて気分がさがりますわ。」

「私は、もうゴーレムと戦うのが飽きたな。最初の一撃で倒すから、全く面白みがない。」

「そういえば、順番に倒していったね。最初は、アムの炎爆弾。次がナガミのスラッシュアローウォータ。前回が、コリンナちゃんの風魔法・・・さて、今回はどうする?」

「まだ倒していないのは、俺とアーマスだな。面倒だから俺がやろう。お前たちだと、ゴーレムを倒した後の罠に対処できないからな。」


 ゴーレムを倒した後、ゴーレムを攻撃したものに対する罠が発動するらしい。罠は、対象者を生き埋めにするというものだが、3回ともユズフェルトが代わりに生き埋めになることで事なきを得たらしい。


 最初のアムは、抵抗する間もなく罠にかかり、ユズフェルトが突き飛ばして助かった。代わりにユズフェルトが生き埋めにされたが。


 次のナガミは、罠があると分かっていたので回避したが、回避した先でも罠が発動し、ユズフェルトが(以下略)


 最後のコリンナは、罠があると分かっていたにもかかわらず罠にはまり、ユズ(以下略)


 という具合なので、もうユズフェルトが攻撃すればいいと思うのは当然だ。どうせ生き埋めにされるのはユズフェルトなのだから。


「ねぇ、ユズフェルト様。私とってもいい案がありますわ。」


 ユズフェルトの腕に絡みついて、コリンナは微笑みを浮かべたのだが、目が全く笑っていない。いい案とは言っているが、誰にとっていい案なのだろうか?


「シーナがゴーレムを倒せばいいと思います。龍の宿木のメンバーなのですもの、ゴーレムを倒すなんて簡単なことでしょう?」

「意味が分からない。それのどこがいい案なのだ、コリンナ。」


 何となく予想はついていたが、コリンナには嫌われている。死を望まれるほどに。

 私の戦闘能力でゴーレムと戦ったら、間違いなく死ぬ。そんなこと、素人でもわかるような事実なのに。


「だって、シーナの実力を私知らないわ。仲間に実力を見せるという意味で、一度戦ってもらいたいと思っただけですわ。ほら、ゴーレムを倒せて、シーナの実力も見られる・・・とってもいい案でしょう?」

「シーナの実力を見る必要はない。シーナは俺の主だ、俺はシーナの力なのだから、俺の力が分かればいい。」


 私がユズフェルトの主。その言葉を聞いた瞬間、コリンナはすさまじい形相をこちらに向けた。ゴーレムに殺されなくても、コリンナに殺されそうだ。


「あのさ、盛り上がってるとこ悪いけど、次は俺がゴーレムを倒したいのだけど、いいかな?」


 片手をあげて注目を集めたアーマスは、ユズフェルトと目を合わせて「だめか?」と駄目押しみたいに聞いた。


「かまわないが。」

「そっか、よかったー。俺だけ出番なしで終わるかと思ったら、なんだか嫌でね。どうせ、ユズフェルトがゴーレムを倒したらもう終わりだろうし。」

「俺は、ゴーレムがなぜわき続けるのかわからないから、俺が倒したとしても終わるとは限らないぞ?」

「お前はよくわかっていなくても、何でも解決するだろ?どうせ今回もそうさ。」

「楽観視するのはよくない。」

「別に楽観視しているつもりはないけどね。さて、俺はどう倒そうかな。火、水、風・・・あ、これがいいかも。」


 アーマスがパチンと指をはじいたとたん、地響きがして地面が細かく揺れる。私の隣に立っていたユズフェルトは、私を支えるように背中に手を回した。


 私は神殿の方に目を向ける。大きく開かれた入り口から、バタバタと地面からはえる手が見えた。おぼれているかのように暴れる2本の手は、ゴーレムのもののように見える。


 手が地面に吸い込まれるように消えてから、揺れも収まった。


「目には目を・・・まぁ、ユズフェルトが何度もされたことを仕返しただけだけど。」

「土魔法を使って、地面をぬかるみに変えたのか。」

「そうだよ。こういうのは得意でね。さて、そろそろ罠が来るころかな?」

「対策はとっているのか?」

「全力で罠を避け続けることにするよ。」

「・・・」


 爽やかに笑ったアーマスだが、言っていることは脳みそまで筋肉でできている人かのようなことだった。


「悪いが、今日はシーナがいるから助ける気はないぞ?自力で脱出してくれ。」

「逃げ切る気だから心配ないよ。」


 罠にかかるのは、仲間が罠にかかっている姿を見たのは3回。心配はいらないと思う。どんなふうにして避けるつもりなのか、私は興味があったのでアーマスを見ていた。


 罠は対象者にかけられるということなので、安心してその様子を見ることができる。


 だが、唐突に視界がふさがれて、正確にはユズフェルトが私を抱きしめるようにしたので、アーマスの姿も周囲の様子も見ることができなくなってしまった。


「目と口を閉じてっ!」

「!?」


 ザザザザザ


 不穏な音が聞こえたが、ユズフェルトが私の耳をふさいだのでその音も遠くなる。何が起きたのか不安はあったが、ユズフェルトに守られているのでそのまま彼に任せることにした。


 大人しくしていれば、危険なことにはならないはずだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ