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16 逃がさない



 つい最近見つかった遺跡、通称神殿。そこでは数日前、Sクラス冒険者ユズフェルトが率いる、龍の宿木によって守護者が討伐された。

 炎爆弾という道具を使って、炎と衝撃によってゴーレムを倒した。その後に罠が作動したが、それも見事に回避し、討伐依頼は終わった。

 しかし、討伐されたはずの守護者ゴーレムは、いまだに神殿を守っている。


 神殿の前で中の様子をうかがうのは、数日前と同じメンバーの龍の宿木である。


「嫌ですわ、本当にゴーレムが健在だなんて。」

「倒したはずなのだが。」


 腕に絡まるコリンナには目を向けず、ユズフェルトは神殿内にいるゴーレムを睨みつける。

 そんなユズフェルトの肩に手を置いて、ナガミが前に進み出た。


「今回は私がやろう。前回が火なら、今回は水だ。」


 ナガミが構えると、その手に黄金の弓が握られる。唐突に現れた黄金の弓は、神聖な光を放ち、ナガミの周囲に光の玉を生み出す。


 その一つを、ナガミが手に取る。すると、玉はすぐに形を変えて、水色の矢に変わった。

 ナガミはその矢を弓にかけて、狙いを定める。神殿の大きく開け放たれた扉から、標的のゴーレムに狙いを定めた。


 ゴーレムは動かない。神殿に侵入しない限り守護者であるゴーレムは攻撃をしてくることはない。

このような動かない的を外せば、今後弓を持つことは恥となる。そんなことを頭によぎらせながら、ナガミは目を細める。


「スラッシュアローウォータ!」


 唱えながら矢を放つ。放たれた矢は、まっすぐにゴーレムへと向かった。ゴーレムは神殿に矢が入った瞬間動き出したが遅く、見事ゴーレムの胸に矢が突き刺さる。

 ゴーレムは、ゆったりとした動きで矢を抜こうとしたが、その前に矢が分裂し鋭い刃となって、ゴーレムを切り裂きながら四方に放たれた。


 ごとごとごと。

 切り裂かれ、石の塊となったゴーレムが崩れ落ちる。中央に、粉々になった魔石を確認したナガミは、鼻で笑って弓を消した。


「たわいもない。」

「来るぞ、ナガミ!」


 余裕の表情でナガミは地を蹴って、その場から大きく離れた。ナガミがいた場所がアリジゴクのようにさらさらとした砂になって、必死に獲物を飲み込むように見える。


「同じ手が何度も通用すると思うのか。」

「まだだ、ナガミ!」


 完全に油断したナガミを、ユズフェルトが押し飛ばす。以前アムが見た光景と同じ光景を、ナガミも見ることになった。


「ユズフェルトーーーーー!






 チャリン。

 龍の宿木のハウスで、金属同士が当たる音が響く。同じような音が今日は何度も響いて、他に人がいれば何度こちらを振り返ることになるだろうかと思い、シーナは笑った。


「綺麗な音。さすが、1万アーツの金貨。」


 特に自分がお金好きだと思ったことはないが、金貨同士がぶつかり合う音はとても魅力のある、ずっと聞いていたい音だと思う。


 このような音を聞いて癒されているほどなので、もちろんこの国のお金はすべて覚えた。それほど種類が多いわけでもないし、よく使うのは3種類程度。覚えるのは簡単だった。


 今回留守番中に出された課題は、この国で使う金貨を覚えることと、龍の宿木に関する文字を覚えることだった。

 課題とは言っても、ユズフェルトは私が頼んだから出すだけで、覚えなかったからと言って何かあるわけではない。でも、大切なことだと思うので私は一生懸命覚えた。

 特にお金。なのでこれは完璧だ。


 次に、チーム名である「龍の宿木」という文字。これを覚えた後は、自分の名前、ユズフェルト、コリンナ、ナガミ、アーマス、アムと覚えていく。


 自分の名前とユズフェルトの名前は重要だが、他の名前は覚える理由がないと思ってしまい、なかなか覚えられなかった。関係も希薄なのでやる気が出なかったのだ。


 それでも、一応読める程度には覚えた。

 自分とユズフェルトの名前は書けるようになるまで覚えたが、他は読める程度に覚えただけだ。とりあえずはこれでいいだろう。


「龍の宿木、シーナ、ユズフェルト、コリンナ、ナガミ、アーマス、アム・・・よし、完璧だね。明日は何を覚えようかな・・・あ。」


 前回の守護者討伐は1日で終わった。なら、今回も同じだろう。

 だとしたら、明日はユズフェルトもハウスにいる。せっかく、外に出られる機会なのだから、明日は外に出よう。

 1日閉じ込められるというのは、この世界ではなかなかに辛いことだった。


「パソコンがあれば、1日と言わず1週間でもこもっていたいけど。ここには何もないからなー・・・はぁ。」


 昨日出かけたばかりなのに、1日こもっていただけでもう出かけたくなってしまった。


 明日はどこへ行こう?その前に、お金を稼がないと、どこにも行けないな。

 ギルドで依頼を受けて・・・受けるとしたら採取依頼かな?あの実入りの少ないヒール草を探すのは精神的にきつい。もっと実入りのいいものはないか、ユズフェルトに聞いてみよう。


 お金がある程度たまったら、おいしいご飯を食べに行こう。服は十分に買ってもらったし、時間をつぶすために本を買いたいけど、字が読めないのでは何の役にも立たない。

 今楽しめるのは食事くらいしかない。


「そうだ、ユズフェルトにおごろう!もらってばかりだと、なんだか落ち着かないし・・・きっと喜んでくれるだろうから、それも楽しみだよね!」


 手元に自分のお金は少ししかない。だというのに、私はユズフェルトにおごる気満々で、うきうきとした気持ちで彼らの帰りを待った。


 待ちわびた彼らが帰ってきたのは、それから数分後。


 聞いた話だと、またユズフェルトが生き埋めになったらしいが自力で脱出し、見事依頼を果たしたそうだ。


 これで終わるといいけど。





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