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15 再び



 薬草を買い取ってもらった後、受付の人にギルドマスターに呼ばれていると言われ、奥の部屋に通されることになった。

 私が一緒に行ってもいいのかと思ったが、パーティーに対しての呼び出しのようで、パーティーメンバーが聞く分にはいいようだ。


 奥に行くと階段があって、私達は2階に上がる。

 上がった先にある扉の部屋へと案内された。


 部屋には、長い机があって、左右に椅子が5脚置いてある。一番奥には執務机があり、そこでギルドマスターらしき男が、ペンを走らせていた。


 ギルドマスターは顔を上げて、いかつい顔をしかめる。


「面倒なことになった。説明するからとりあえず座れ。」

「わかった。シーナ。」


 ユズフェルトが椅子を引いてくれたので、私はその椅子に座った。隣にユズフェルトが来て、ギルドマスターも私たちの正面に腰を下ろす。


「その子が、新しい仲間か。」

「あぁ。シーナだ。それよりも、面倒なこととは?」


 私の紹介はさらりと終わって、ギルドマスターの目は私からユズフェルトに向けられる。


「この前の神殿のことだ。守護者討伐を依頼したのを覚えているか?」

「あぁ。依頼通り、守護者のゴーレムを倒したから、それは終わった話だろう?後は、研究したい奴がすればいいだけだ。」


 神殿の守護者討伐・・・確か、炎爆弾というものでゴーレムを倒したと話していた。その後の罠で、ユズフェルトは生き埋めにされたけど自力で脱出して、何事もなかったと聞いていたが。


「お前たちが守護者を討伐した後、研究者が神殿に入って調査を開始した。特に資料などはなく、壁に刻まれた古代文字についての研究に取り掛かることになったらしく、数日かけて古代文字を写すことにしたらしい。」

「それで?」

「出たんだよ。ゴーレムが。」

「は?」


 まるで、怪談話をするように話すギルドマスターだが、別に怖くもなんともない。ゴーストではなく、ゴーレムだから。ホラーにはならない。


「初日にゴーレムがいないことは確認した。だから、お前たちが討伐を失敗したわけではないということはわかるが、これでは研究が進まない。また、討伐依頼を受けてもらえるか?」

「つまり、同じ依頼をもう一度ってことか。わかった、仲間に確認しよう。」

「頼んだ。一応、ゴーレムについて調査をしたが、前と同じ外見をしたゴーレムのようだ。同じだとは思うが、何が起こるかわからないから注意してくれ。」

「・・・ところで、そのゴーレムはどこから現れた?まぁ、わかるわけがないと思うが。」

「わからない。」


 同じ性能のゴーレムなのか?どこから現れたのか?

 特に情報はないが、討伐しなければ研究は進まないので倒して欲しいようだ。


 ユズフェルトから聞くと、簡単に倒せるようなので口をはさむつもりはないが、神殿の守護者を倒すことが本当にいいことなのだろうかと、疑問に思う。


 研究だって、探求心を満たしたいためだけなら、やる必要もないと思うし。




 ギルドマスターの話が終わってギルドを出ると、ユズフェルトは難しそうな顔から優しげな表情に変わって、帰路についた。


「さっきの話、おそらく急ぎだろうから、受けるとしたら明日討伐に行く。ごめんな、また一人にすることになると思う。」

「わかった。明日も、ハウスにいればいい?」

「あぁ。」


 明日は一人。

 この世界では時間をつぶす物がないので、一人の時間は何もすることがない。

 前の世界だったら、色々やりたいことがあったのだけど。


 何か、やりたいことないかな?


「あ、そうだ。私、お金のことわからないから、教えてくれない?明日覚えるから。」

「お金か。わかった、夕食の時に一通り教える。」

「ありがとう!」


 わからないことがたくさんありすぎて、どれから学べばいいかわからない。一番重要なのはお金だと思ったけど、他には何かないかな?


 法律・・・は、おいおい。戦い方は、一人では学べない。薬草も、人がいないと。写真とかあれば、覚えられると思うが。いや、無理だな。似たような草ばかりで、私には全くわからないというのを、今日学習した。


 わかるのはヒール草だけだ。


「ユズフェルト、何か学べそうなことってないかな?」

「・・・何かを学びたいなら、本を読めばいいと思うが・・・シーナは字が読めないよな?だったら、字を覚えたほうがいいと思う。」

「確かに。」

「明日、冒険者が使いそうな言葉を書いて渡すよ。一人だと何をしていいかわからないよな。」

「うん。ずっと寝ているわけにもいかないし、どうせなら役に立つことがしたいからね。」

「役に立つか・・・俺にとっては、いてくれるだけでシーナは役に立っているが、それでは満足しないのだろう?どうすれば満足するのだ?」

「うーん・・・私も、この世界・・・冒険者のことがよくわかっていないから、どうすれば自分が役に立っているって実感できるかわからないかな。」


 危なかった、この世界って言いそうだった。いや、言ったけど!


 別に、異世界転移したことは、隠す必要ないのかもしれない。だけど、言う必要もないと思って、聞かれてもいないので私は言うつもりはない。



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