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11 冒険者



 冒険者として活動する服は、同じものを3着ずつ買った。

 動きやすさを重視して、防御には全く力を入れないことにしたので、皮や鉄製の物は使っていない、すべて布製の物でそろえた。流石に靴は革靴で、茶色のロングブーツだけど。

 上は白の長袖に上からフード付きの短めのマントを付けているだけで、下は膝上丈のスカートだ。マントとスカートは黄色で、これはユズフェルトが望んだ。


「すぐに俺が見つけられるように、目立つ色がいいし・・・俺とおそろいだからな!」

「ユズフェルトとおそろい・・・あぁ、確かに髪の色と同じだね!」


 ユズフェルトは、青を基調にした服を着ていたので、黄色がおそろいという感覚がなかった。きっと、目が青色だから、そういう服を選んでいるのだろう。

 その場合、私だったら黒かな?




 服を買った後は、イタリアンレストランみたいな雰囲気のお店で食事をした。食べた料理はボルシチみたいなスープとパンだった。店の雰囲気で食べ物を予想するのは難しそうだが、違いなど気にする必要はない。私の中では、日本食か中華、外国の食かの違いしかないのだから。


「さて、腹もいっぱいになったし・・・次は冒険者ギルドに行く。」

「何か用事でもあるの?」

「シーナも冒険者だから、一通りの説明をしたほうがいいかと思ってな。特に必要ないなら、別の場所に行くけど?」

「そういうことなら教えて欲しいな。」

「もちろんだ。」


 別に、一人で依頼を受けようなどとは思っていない。私が1人になるとしたら、ユズフェルトたちが依頼を受けている時だが、その間はいつユズフェルトの身代わりがいつできてもいいように、一目がつかないハウスに引きこもっていたほうがいいだろう。


 例えば街中で、平凡な私が突然、高ランク冒険者のユズフェルトになったら、絶対驚かれるし説明が面倒だ。


 ならなぜ教えてもらうか?それは、もしもユズフェルトと離れ離れになったら・・・ということを考えていたからだ。


 ユズフェルトが危機に陥って、私と入れ替わったとしよう。それがもしも、隣国だったとしたら、ユズフェルトと合流するのに時間がかかる。その間私は一人で生計を立てなければならないし、そのためには様々な知識を得る必要があると思ったのだ。


 まぁ、そんなことめったにないと思うけど。それに、隣国に行くとしたら私を連れて行くような気がする。


 ちなみに、ユズフェルトが私を捨てるかもしれないという不安は、全く抱いていない。彼は責任感が強く、必要以上に罪悪感も抱いている。


 なので、突然私を捨てることなどありえない。




 ユズフェルトに連れられて、昨日も来た冒険者ギルドに足を踏み入れた。昨日と違うのは、用があるのが併設された酒場ではなく、冒険者ギルドそのものということ。


「まずは、依頼の受け方だな。」

「うん。」


 出入り口から見て右側にある、大きな掲示板。その前まで来て掲示板を見ると、多くの紙が貼っていあったので、何となく予想がついた。


「ここにほとんどの依頼が貼ってあるから、依頼を受けたい場合はここを確認すればいい。あとは、受付に行って自分に合った依頼を見繕ってもらうこともできる。その場合、ここに張っていないような依頼も出される場合があるから、めぼしい依頼がなければ受付に行くのもありだな。俺はそこまではしないが。」

「なんでここにすべての依頼を張っておかないの?」

「いろいろ理由があるが、一番は紙を貼るスペースがないからだな・・・」


 確かに、掲示板のいたるところに紙が貼ってあるので、空いたスペースはないように見える。ゲームの世界とは違うから、依頼が3つ4つくらいしかないという状況はないのだろう。


 私がやっていたゲームでは、本編を進めると依頼が変わるというもので、毎回3つ程度しか依頼がなかった。

 どうやら現実には依頼が常にある状態のようだ。


「無制限依頼というのがあるのだが、それはランクや性別、パーティー構成、経験などを問わないという依頼だ。こういう依頼は簡単なものが多いけど、それだけではない。危険だったり、誰も受けたがらないような依頼・・・報酬が少ないなどの依頼もあるから気を付けたほうがいい。」

「誰でもいいから受けて欲しいって依頼もあるってこと?」

「その通り。危険すぎて受けてくれるものがいない、手持ちがないからあえて制限せずに依頼を出している場合がある。他にも、採取依頼だからと簡単に請け負ったら、ものすごく希少なものだったり・・・遠くの国で採れる、強い魔物が生息している場所で採れる、何万本に一本咲く花なんかもある。普通は花弁の数が7だが、稀に8枚あったりのような。」

「四つ葉のクローバーみたいなものね。」

「?」


 よくわからないという顔をユズフェルトがしたので、こちらの世界には四つ葉のクローバーが一般的ではないのかもしれない。


「だったら、ランク別の依頼を受けたほうがいいかな?」

「依頼のランクはギルドが付けているわけではないから、それを基準にはしない方がいい。たとえば、そこの護衛依頼だけど・・・」


 指さされた紙を見て、今更だが気づく。


「あ、文字読めないかも。」

「・・・なら、受付に行った方がいいな。」

「うん。それで、この護衛依頼がどうかしたの?」

「この護衛依頼は、商隊の護衛だが・・・このルートは比較的安全だ。Cランクで十分だが、条件はAランク以上になっている。」

「心配性か、よっぽど大事な商品を持ち歩くのかな?」

「・・・見栄だと思う。」

「見栄?」

「Aランク冒険者を雇うことで、それだけの金があることがわかるし。まぁ、俺もよくはわからないが、金がある者はだいたい高ランク冒険者を雇いたがる。」


 嫌そうな顔をしたユズフェルトを見て、こういう依頼を出す者を嫌っているのだろうなということが分かった。何かあったのかな?


「まぁ、シーナは受付で依頼を見繕ってもらうといい。俺に声をかけてくれれば、俺が見繕ってもいいし。」

「ありがとう。なら、ユズフェルトはこの中でどの依頼を私に勧めてくれるの?」

「あぁ、ならこれだな。」


 迷いなく指さした依頼内容を聞いた私は、驚いた。


「ワイバーン討伐。」

「ファーストクエストでは、絶対あり得ないでしょ!?」

「俺も行くから大丈夫だ。」




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