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被害者は、罰を与えずにはいられない!

「自分の車を出すから、必要と思える荷物全部のせてくれ、食料や、トイレ横の洗濯機の周りに、バスタオルなどがあるから」

「俺は、鍵を壊せる道具を揃える」

「はい」

と、言って、彼女は近くにあったエプロンをすると、パタパタと動き出した。

 その姿に少し見とれていたら、

「なにか?」

と、聞いてきてので、

「可愛いね」

と、言っておいた。

 彼女は照れくさそうにしていた。どうやら、『綺麗ですね』」や『美人だね』は、慣れてそうだが、『かわいいね』には弱いようだ。

 今は、どうでもいいことなのだが。

 物置に行き、バールや金物用のこぎり等工具セット一式を車に積んだ。

 彼女も、一通り積んだ後お湯を沸かしていた。

「待って、お湯持っていきたいから」

「それはいいんだけれど、歯磨いた?」

 あまりに臭かったので、聞いた。

 彼女は、両手で口をふさぐと、

「新品使うの悪いかと思って使いませんでした。磨いてきます」

と、言って、風呂場に取りに行った。やっぱり、かわいらしい。


その間に、MMOゲームの仲間に、報告することにした。


なっと   「アジト聞き出せました。これから向かいます」


まとりうす 「おめでとー」

マット   「おめでとう」

ユリヒメ  「がんばりましたね」

テナ    「お疲れ様です。」

キタキツネ 「締め上げたのか?」


なっと   「脅しましたw」


ななみ   「よくやった」

キタキツネ 「強姦目的なら、大概単独犯だが、気を付けろよ。」

ななみ   「拘束されてた娘は、大丈夫なの?」


なっと   「はい。元気です。これから、二人で助けに行きます。」


ニャンちゃん「デートだぁ^^」

マット   「いいね」

ユリヒメ  「おめでとう」

テナ    「おめでとう」

まとりうす 「彼女のレベルは」


なっと   「カンストしる」 ※カンスト→最大値


マット   「おおおおおおおおおおおおおおおおお」

まとりうす 「ビーナスだぁ」

ユリヒメ  「おめでとう」

キタキツネ 「俺にも分けろー」

ななみ   「奥さんに言うよ、赤ちゃんいるのに!」←キタキツネ

キタキツネ 「みす」

マット   「w」

てな    「^^」

まとりうす 「もう警察に連絡してみたら」

キタキツネ 「令状なしに踏み込めないな」

マット   「そっかぁ><」

ななみ   「盗賊なんだから不法侵入ぐらい楽勝でしょ」

ユリヒメ  「ですよねーぇ」

マット   「ラスボス挑戦だ!」

まとりうす 「行け、外道勇者!」


なっと   「落ちが決まってるねw」


ユリヒメ  「頑張りましょう」

テナ    「気を付けてね」


なっと   「はーい」


 彼女が戻ってきて、鼻に向かって『はーぁ』と息を吹きかけてきたので、すかさず口臭測定器を彼女の口の前に出した。

「3だって、よしとしようか」

「な、なによそれ、」

「口臭測定器、5段階中3でした」

でした。

「あんなに一生懸命にみがいたのにー」

あまりに、悔しそうな顔をしているので、

「これは、歯磨き粉の臭いまで感知するから」

と、なだめておいた。

 彼女はこっちをにらむと、

「あなた、モテないでしょう」

どうやら、逆恨みの行動にでてきた。

「君は、モテるでしょう。美男美女は、臭くても、いい香りだと錯覚するからね。清潔な人がモテルわけじぁない」

 そう言って、口臭測定器を手渡した。

「あげるよ」

 彼女は不細工な顔をしながらも、両手で口臭測定器に、対決するかのごとくにらんでいた。

 

 車に乗り込むとき、一応彼女に聞いてみた。

「運転できるか」

「軽しか無理です。自信ないです。」

 眠いのだがあきらめて、運転する事にした。


 彼女が、まだエプロンを付けているので、

「エプロン付けて行くの?」

「当たり前でしょう。エプロンは、女性の戦闘服です」

と、あまりに真剣に答えるので、突っ込むのをやめた。

「それより、さっきスマホで何見てたんですか」

 運転中なので、スマホを渡して、口答でMMOゲームチャットページのログを開けてもらった。

※ログ→記録

「そこ見れば、色々わかるよ」


 しばらく、ニヤニヤしていたが、

「わかりました。外道さん」

と、にこやかに返事をしてきた。

「わかってないな、サユちゃん」

と、返してやった。

「いい人たちですね。」

「顔も、年齢も、性別すらもわからんがな。長い人だと6年にもなる。ほぼ毎日な 気の合う仲間が、残っているから」

「私も入れてもらえませんか」

「サユちゃんゲームするの」

「少しは」

「へーぇ」

「なんですか」

「リア充かとね」

「今、いいなぁーと思ったことをやらないともったいないじゃないですか」

「今度、教えてやるよ」

「おねがいしますねー」


「で、何見てるのかなー他人のスマホで」

「持ち主の趣味と性癖について」

「おい!」

 彼女に笑顔が戻ってきた。だが、これから最悪の光景を、見せることになるかもしれない。しかし、囚われの身となっている人がいるとすれば、女性の介護が心強い。

 わかっているからこそのエプロンなんだろう。

「両親には、連絡したよな」

「はい」

「ならいい」

 細かいことは聞かなかった。塾のバイトまでできる大学生なら、頭もいいのだろう。今は目の前の心配事が、優先だ。


「これからさき、敵がいないとは限らない。敵が来ないとも限らない。狭い山道なら車もすれちがえれない。後ろに車を付けられたら、車で逃げ切れないと思う。先は行き止まりだろうから。安全が保障出来るのは、ここまでだ。この先の現場も悲惨なものかもしれない。嘘だとは思うが、奴は一人殺してるとも言ってた。俺だけが見てきて、警察に連絡する手もある。」

 彼女はスマホとシートベルト合わせてにぎりしめると、

「行ってください。連れてってください。あなたが来なかったら、ここに連れて来られてたんです。ここで逃げるわけには行きません。あれだけたくさんの食糧を買い込んでいたのだから、必ず生きています。」

「わかった。スマホのアンテナと、録画を頼む」

「はい」

 この時期に珍しい、さくらの花道を左に曲がり、アスファルトのない道を突き当たりまで行った。

 他に車がないことから、大抵人がいないと思える。少しは安心できた。車からバール 【※1,2m程の

L字の形をした太さ3センチ程の鉄の棒でくぎ抜きするもの。】や、鉄を斬るのこぎりと工具一式を持って出た。彼女は、タオルと水筒、食料等を持って車を降りた。

 歩いて道を進むと、栗が落ちていた。見上げるとそこに栗木があった。坂下を探すと降りる道があったので、降りると直ぐに小屋があった。渓流の流れる音がする中、モーター音がする。ドアには鍵がかかっていた。小屋の周りをまわると、エアコンの室外機が、動いている。

 ドアをノックして、

「誰かいませんか」

「誰かいませんか」

 二人して、声を出した。この小さい小屋なら、どこにいても十分に聞こえるはずなのだが、返事がない。

「鍵壊してみるか」

彼女に聞くと、スマホ片手にうなずいた。

「器物破損、住居侵入、人がいれば、強盗だね」

「今更なにいってるのよ。小さい男ね」

「せめて小心者と言って」

「変わらないでしょ」

「そこで変わるのが、小心者なんです」

「はいはい、なんでもいいからやりなさい」

「はーい」

と、バールで何回かたたいたら、鍵が飛んでった。

 

 中に入ると、これといった臭いはしない。薄暗い中電気のスイッチを探して、付けた。

 そこには、三人の拘束された女性が全裸でいた。腕を上にして、壁に並んでいる。

 直ぐに端からナイフで縛り上げられている紐を切って手を降ろした。その後、足を縛っている紐を切っていった。

 彼女さゆりは一人の女性を抱きしめると、タオルを掛けた。

「もう、大丈夫ですから、もう、大丈夫ですから」

と、何度も何度も繰り返し、縄をほどいていた。ふさいである口の中のものを取り出した。

 その女性は、音にならないが、全てものを震わせるほどの悲鳴を上げた。

 自分ももう一人のを解放した。その人は、小さくなって、うつむいた。自分は男性なので、直ぐに離れて、持ってきた上着を掛けた。その女性は、かすかな声で、

「もう死にたい」

と。助けて、良かったのかさえ不安になる。

 三人目の女性は、倒れたまま動かない。さゆりは、三人目の女性を座って抱きかかえると、動かなくなった。

 わかっている。その拘束されていた彼女は冷たくなっていた。手首に手を当てて、脈が取れない。

更に首に手を当てたが、脈が取れない。

 さゆりを後ろから抱きかかえて、そっと亡くなっている女性から、引き離した。

「さゆり、今出来ることをしよう」

 そう言って、彼女の頭を撫でた。そう、自分を奮い立たせるためだ。

 

 さゆりは、声を震わせながら、

「もう、大丈夫ですよ。もう...大丈夫ですよ」

 言い続けて、彼女たちの身体を拭き、服を着せて、お湯を飲ませた。

 自分は被害者の方を見ないようにして、手伝った。

 被害者の一人が指を指した。

 まさか、まだほかにも、嫌な予感しかない。物置のような小さな部屋に鍵がかかっている。

 バールを渾身の力を込めて振るった。

 鍵は飛び、ドアを開けると、全身に痛めつけられた後のある女性が倒れている。

 その女性の心臓部分に手を当てると、少し暖かい。首に手を回した。脈はある。

「さゆり、こっちを診てくれ、まだ息がある!」

 直ぐに、救急車を呼んだ。

「意識のない、暴行を受けた女性一人、意識はありますが、暴行を受けて衰弱している女性二人、亡くなられている方一人、場所は...」

 

 さゆりは小さな声で、

「警察も呼んでください」

 

 返事をするのをためらった。


「あなたを殺人犯にするわけにはいかないの」

 彼女の声のトーンから彼女の本心でないのがわかる。

 自分は、怒りがいつものようにあきらめに変わる事がなく、心叫んだ。

「奴は精神病で守られてる,被害者の無念は、罰はうけなくていいのかよ」

「もういい。俺も疲れた。奴を道づれにしてやるよ。俺が刑務所入れば俺も楽になる。母と紐をつないで寝なくていいし、暴言や暴力を受けなくて済むし、夜中の徘徊にも付き合わなくて済む。近所に誤りに回る必要もない。母も視る人いなくて精精神病院行き、村の人も万々歳、犯人は、再犯おこせずあの世行き、いいことずくめだろう」


 さゆりは泣きながら、こちらを向くと、

「あなたの母の罪は、犯人の罪ではないでしょう」

「何が分かる!奴らは上位者なんだよ。下の者が力づくでも降ろさないと、いつまでたっても変わらないんよぉ」

「私たちが何でここまでしたかわかってるでしょ。警察官、消防士、病院医師や看護師。誰しもが、助けられる命を目の前にして、法の下に苦しんでるの。正義を職業に選んだ人達がよ。」

「私たちは正義をしたの。ここから先は正義ではないわ」


「しっかりしなさいよ。私と一発やるんじゃなかったの」

「外道勇者らしくしなさいよ!」

 彼女は泣きながらも、笑顔を見せた。


 返答することもできず、立ち尽くした。自分のふがいなさが嫌になる。自分が誰よりも小さく見える。


 しばらくすると救急車の音が聞こえてきた。

「外に出て救急隊を案内してくる」

 そう言って、その場を離れた。

 案内が済むと、後は見守るだけだった。

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