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外道勇者は、逃げの一手を選択する!

 目的は、拘束されているかもしれない人がいるのか確認すること。

 いるのなら、警察に動いてもらえる証拠を提示できるようにすること。

 出来れば、拘束されている人を助けること。

 

 軽トラの中で、頭を抱え考えた。

 スマホで動画を撮りながら、相手の車のドアのリモコンが開いたら、後部座席のドアを開ける。

 安全に開けるために、相手の車の助手席側のスライドドアを開けることにする。

 相手が運転席に、乗り込むとき。

 そのこれだけは確定。


 動画の撮影を開始した。手が震えはじめている。

 軽トラを相手の車の助手席側に付けるため、移動させながら、相手のナンバーも撮った。


 考えろ、考えろ、考えろ。

 相手の車の車種ナンバーを控えて警察に通報。

 偽造ナンバーの可能性もある。

 ナンバーのねじ穴が両方とも、ドライバーで変えれるようになってる。フタがない。

 盗難車かもしれない。誘拐犯なら、足の付かない車かもしれない。

 

 イノシシ、シカ、猿、熊、ならなんとかなるが、相手は人間だ。

 軽トラには、カマ、ナタ、のこぎり、解体用の包丁に、さすまた、ロープ、ガムデープ、ブルーシート等、色々のってる。

 が、そもそも、田舎に引っ越してきて、畑を守るため、追い払う、殺す、解体する、食べる為。

 村での行事、生活の仕方で色々村の人達から教えてもらったからで、人相手じゃない。

 刃物を持った時点で、こっちが殺人鬼だ。犯罪者には、なりたくないし、武器を持ったところで、相手が、ひるんでくれるとも限らない。ましてや、相手が誘拐犯なら、武器を持ってるだろう。

 このきゃしゃな体で、勝算がない。

 スマホを天井に張り付けるが、推理小説的に良さそうだが、昨日の雨で、ガムテープが付きにくそう。

 相手が犯人だったとして、そもそも母の精神病で、来てもらえた、顔見知りというだけの警察官に、

「拘束されてる人が車にいるのを見ました。スマホをその車の天井にはりつけたので、その車を追ってもらえませんか」

 無理だよね。

 こっちが精神病患者と思われる。警察もそんな不確かな情報に、関わっている暇はないだろう。

 犯人の顔、車のナンバー、拘束者、証拠動画を見せてたら、出来すぎてて、「よくできてるね」って、言われそう。でも、ここまであれば、動いてくれるか。

 拘束者を見た時点で、素早く軽トラでバックできないように、後ろに付けるか。

 間に合うとは思えない。その間にこっちが、やられる。

 タイヤをつぶせば、走れないか!

 おお、使えそう。

 ドライバーセットの先のとがったのでタイヤを刺すか。それなら間に合う。犯人が怒って、追って来るだろうが、山に逃げれば逃げ切れるとおもう。畑を荒らされないように、村人総出でけものを追い立てたり、罠を仕掛けたりしているので、分があると思う。力と勇気は無いが、身軽さと、体力は、並みよりはある。

 パンクしたタイヤで、そんなには走れないだろう。

 拘束者を抱えて、逃げるとも思えない。

 犯人が車を捨てて逃げるのなら、犯人が怒りの矛先を拘束者をに向け、口封じして逃げるかもしれない。

 犯人が殺害目的なら、ありえる。

 もともと殺される予定なら、生き延びれる確率が、上がる方がいいだろう。

 取りあえず、ダッシュボードから、ドライバーセットの中の先のとがったのを取り出した。

 そもそも、車内で、壁を蹴れる拘束の仕方なら、犯人は、拘束者が弱っているか、他者を呼べない弱みを握っているか、暴れないと踏んでいる。もしくは、ずさんなのか。

 車の窓ガラスを割って、車の防犯ブザーを鳴らすか。鳴るのか、そもそも、割れるのか。

 鳴り続ける車に近づく事はしないかもしれないが、動画撮影にタイヤをパンクさせて、ブザーまでは、間に合わない。そもそも、車の防犯ブザーの鳴る基準が分からない。

 車に犯人が、乗りこめなければいい。

 方法が見つからない。


 車の運転手らしき人が向かってくる。やはり、あの万引き犯だ。

 誘拐してる時に万引きとは、行動がずさんすぎる。考えてる余裕もないので、スマホ録画を始めた。

 

 犯人が、軽トラの前を通り過ぎる。

 目を、合わせたくないので、弁当を食べてるふりをした。心臓が高鳴る。手に汗が出てきた。

 

 犯人の車のコーナーランプが点滅した。戦闘開始だ。

 箸を、先のとがったドライバーに持ち替えて、素早く軽トラから降りて、スマホの動画を撮りながら、犯人の車の助手席側の後部座席のスライドドアを開けた。

 すると、後部座席の足元に、拘束された人が横たわっていた。

 そして、反対側のスライドドアが、開いた。

 こっちをあけるんかい。てっきり、運転席のドアを開けるとばかり思っていたので驚いた。

 犯人が、目の前で、一瞬こちらを見て、止まった。

「コラァー」

犯人の大きな声が、車内を響かせる。

 拘束された人が驚いてもがく中で、犯人が、車内を通って向かってくる。犯人が、もたついている中、犯人の前輪タイヤにスピックを指して抜いた。そんまま逃げようとしたとき、

『シューっ』とエアの抜ける音がしている中、『ゴン』と、音がした。振り返ると犯人が、拘束者が悶えてる中でつまずいて、転んで、軽トラのアオリに、頭をぶつけた。

 犯人の動きが、止まっている間に、手足を縛り、口に物を詰めて、目と口をガムテープで何回もなくなるまで、巻き続けた。

 軽トラのアオリを降ろして、犯人を荷台に乗せる。

 けものを乗せた時と同じように、ブルーシートをかぶせた。

 

 こんなものか。考えてた割にあっけなかった。

 それでも、手の震えが止まらない。

 けものを狩った時と同じだ。

 なかなか慣れるもんじゃない。

 

 落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせた。

 ここまですると、犯人がやむ負えない理由で拘束してたとしたら、こっちが、誘拐犯だ。

 できれば、万引き犯以上の犯行は、望みたい。

 殺人犯で、一生刑務所なら、仕返しはこない。

 殺された被害者がいたなら、この考えは、人道的にどうかとは思うが、今は、自分を正当化したい一心だけだ。落ち着くのに、手段を選んではいられない。

 

 取りあえずスマホで、動けない犯人の様子と、拘束された人を撮った。

 

 キツイ匂いが充満している。

 拘束されていたのが長かつたのか、漏らしているようだ。

 彼女に声をかけた。

「今、助けます」

そういってから、できるだけ彼女にふれないように拘束を解いた。

 男性そのものを怖がっているようにも見えたからだ。

 泣き腫らした目に、悔しさと怯えが入り交ざった様な顔、震える体に、手を差し伸べるのをためらわせた。どう接していいのかわからない。

 彼女の容姿からして、強姦目的に思えた。それが、未遂だったのか、犯行後、捨てに行くところなのかはわからない。


「救急車と警察呼びますね」

と、できるだけ優しい口調で言うと、

しばらく、間があってから、彼女は声を震わせながら、

「助けて頂いて、ありがとうございました」

さらに、間をおいて、

「今、この姿を誰にも見られたくはないです」

「だろうね。うちで風呂入ってからにするか。」

 彼女はうなずいた。

「犯人は、どうなりましたか」

「拘束しています。生きてますよ」

と、正直に答えた。

 犯人の車の助手席から、女性のカバンがあった。

「君のか」

彼女に渡すと、抱え込むようにカバンを抱きしめている。

 警戒心が強そうなので、手を差し伸べることは控えた。

「この車調べるから、隣りの軽トラにのれるか」

言うと、彼女はゆっくりと、動き出した。

 メーターは4分の3残っている。給油してからのどこかで彼女を乗せて、ここまでの距離100キロ以内。彼女が何処で乗ったのか、聞きたいが、聞ける状態ではない。

 タイヤ周囲には、紅葉の葉等、土汚れが目立つ。

 前のワイパーの付け根には、枯れ葉に、針のような松の葉に、白い花びらが1枚。この秋に咲く花か。

 車の中の後部座席の足元には、彼女の髪の色ではない色の髪があった。

 彼女の話が真実に近づく。

 髪の落ちていた周辺の臭いを嗅ぐと、排せつ物の臭いに紛れて、彼女のものでない香水、コロン等の臭いもするように感じる。平常心でない、今の自分にの嗅覚にさほどの自信はないが、経験上、嗅覚は、体調の悪い時の方が、感度がいい。

 この状況からして、犯人に聞いてみる必要はありそうだ。もう、話しかけたりしたくない相手ではあるのだが。

 彼女は、軽トラの助手席に乗るのをためらっていたので、

「気にせず乗ればいいよ。臭いの記憶はそう長く持たない。トイレから出て、10分後も臭いと思はないだろう。」

 彼女は、少し笑ったのか、申し訳なさそうに助手席に乗った。

 エンジンを駆けて、車を出す。

 付けたラジオの音を大きくして、今は話す気がない事を分かってほしかった。

 

 ラジオからは、聞き覚えのあるクラッシックが流れていた。

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