な、なにぃぃぃいいい?!!!
(魔導書には大きなデメリットがあるんだ)
(なんだよ、もったいぶらねえでさっさと言えよ)
(魔導書の恩恵を受けるには、魔導書を手に持って、使う魔法のページを開いていなければならないんだ)
(それじゃ戦闘中使い物にならねえじゃんかよ)
(ただ、使いたい魔法を口で唱えれば、それに反応して勝手にページが開かれるものが殆どだからそこは心配しなくてもいいよ。けど片手が塞がれちゃうのはやっぱり戦闘において不利ではあるよね......その分魔導書を持っていると自分の魔法の火力が上がったりする性能のいいやつも中にはあるんだけどね)
(お前さらっと言ったが、火力が上がるって何気にすげぇことなんじゃねえか?)
(そうだね。持病持ちの僕は、他の人より相性がいいかもしれないね)
(お前持病があるのか......)
(うん、慢性魔石不全って名前で、簡単に言えば人より魔力の消耗が激しくて、魔力の回復が遅くなる病気なんだ。)
(そうか......そういやもう一つ聞きたいことがあったんだけどよ、さっき国で買い取った書物の大半が教会に納められたって言ってたけど、なんで全部じゃねぇんだ?)
僕は一度聞いただけでここまで的確な質問をしてくるロオス(俺)に対して驚きと尊敬の念を持ち、評価を改めた。
こいつ話し方はバカっぽいけど、思ってたよりバカじゃないぞ、と。
(いい質問ですねえ。教会行きにならなかった書物の大半は魔導書なんだけど、書物に書かれた魔法があまりにも危険なものだったからなんだ。魔法を唱えたものは自身の許容を超えた魔力の消費に耐えきれず自壊し、魔法が不発ならまだしも運悪く成立してしまえば一国をも揺るがしかねないもの......そう言う所謂「禁書」に指定されたものは国が厳重に保管しているんだ)
(どこぞの池上さんの真似か? なるほどな、もう魔導書についての話はいい。それより今日だって学校だか養成所だか知らんが、講義あるんじゃなかったのか)
「忘れてた! 早く行かなきゃ遅刻する!」
(バカ! 誰か人がいたらどうすんだ! 声出すな!)
(ごめんごめん)
僕は駆け足で訓練場を後にした。物陰に潜んでいた人間など全く気づくこともなく......
講義開始前に何とか教室に着いた僕は、入室するやいなやタンタに話しかけられた。
「ロオス! 昨日は大丈夫だったか!?」
「うん、まあ、何とか......」
「そっか......ふー、まったくやばいやつに目つけられたもんだな」
「タンタは関係ないんだから僕に関わらなければ問題ないよ」
「馬鹿野郎! ダチを簡単に見捨てられっかよ!」
「えー、でも昨日サモン君の凄みにぶるってたじゃん」
「ばっ、ばっかじゃねーの! あ、あれは武者震いだっつーの!」
「そうは見えなかったけどなー。まあいいけど」
(はっはっは! 自分の目で見たように話してやがるぜこいつ)
「うるさい、静かにしてろって」
「ん? どうした?」
「ああ、ごめんごめん何でもないよ」
(君のせいで変なやつだと思われたかもしれないじゃないか)
(大丈夫だ、一つの体に二つの精神。とても普通の人間じゃない)
(そんな冗談聞きたかったんじゃないんだけど)
そんなくだらないやりとりを心の中でしている時、タンタの顔が青ざめていくのに気がついた。
「ん? どうした?」
「ひっ! ロ、ロオス、う、後ろ」
「うん、わかってる」
キーン! という甲高い音が後ろで鳴ったのと同時に振り向くと、そこには全力で振り抜いたであろう拳を僕の張った物理障壁にぶつけ、静止しているサモン君の姿があった。
「おはようサモン君。今日も昨日と同じように気持ちのいい朝だね」
「ちっ!気づいてたのか」
「それはまあ。いくら背後とはいえ、あんなに近くで圧を感じて気づかない人はいないよ」
「昨日は無様に地面に這いつくばってたくせによぉ、一発防いだ程度でいい気になってんじゃねえぞクソガキが!」
「そんなに怒らないでよ。何が気に食わないのか知らないけどさ、ひとまず落ち着こうよ。ね?」
「その飄々とした態度が前から気に食わなかったんだよなぁ、後衛組最強のロオスさんよぉ! 俺とタイマンで勝負しろ!」
「嫌だね。僕には戦う理由も、勝って得るものも何もない」
(馬鹿かお前は! 折角公然の場であいつを叩きのめすことができるチャンスだったろうが!)
(サモン君とはあんまり関わらない方が良い!)
(何でだよ!)
「お前の秘密、ここでバラしても良いんだぜ」
((な、なにぃぃぃいいい?!!!))
実は後衛組で最も実力が高いロオスさん。
持病持ちでこの強さ・・・うーん、これはどうやら兄と同じエリート戦士だった模様。
けっ!オラは下級戦士だっつーのによぉ、ベジ・・・
大変見苦しい茶番をお見せしてしまい大変失礼いたしました