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僕と俺の邂逅

痛みに顔を顰めつつ、自室のベッドに横たわった。


(ふー、今日は色々あったけど一番気になったのは、タンタが僕の意識がないときに会話をしてて、それが成立してたってことだよな......なんで記憶がないんだろ)


思慮を巡らせつつ微睡みに包まれかけていたその時、後に親の声より聞く事になろう男の声が頭の中に響いた。


(ふあぁーあ......だいぶ寝てたみたいだな。ん? ここはどこだ? ってなんだ!? 体が動かねぇ! どうなってんだこれ!)


「だ、誰だ!」


しかし部屋には僕以外、人のいる気配はない。


(なんで体が動かねえんだちくしょう、この喋ってる奴誰だ! 早く俺の体から出て行けよ!)


「俺の体から出て行けってどう言う事だ! そう言う君こそ誰なんだよ!」


「ロオスー、どうしたー? なんかあったのー?」


階下から母の声が聞こえる。


「部屋に誰かいるかもしれない! 早く来て!」


「えっ!」


慌てて階段を上る音が届いて数秒後、母がドアを蹴破るようにして部屋に入ってきた。


「うちの子から離れなさい!」


しかし相変わらず部屋には僕一人である。


「なによ誰もいないじゃない」


「違うんだよ母さん! 変な声が聞こえるんだ!」


(誰だこのおばちゃんは! これが俺の母ちゃんなのか!?)


「ほら! 今も誰だこのおばちゃんは、って!」


「誰が......誰がおばちゃんだってぇぇえ!!!!!」


般若のごとき表情を浮かべた母の拳が僕の脳天に直撃する1秒前、何があっても二度と母親をおばちゃん呼ばわりしないと自身に誓った。


「(痛っっっっってぇ!!!)」


「バカなこと言ってないでさっさと寝な!」


大きなたんこぶができた僕を尻目に、けたたましい音を立ててドアを閉め、母は部屋を出た。


(痛ぇー......とりあえずお前声出さないで心の中で俺に話しかけてみてくれ)


(え、こ、こう?)


(そうそう、やっぱりこれで話せるか......ってことはやっぱり俺とお前で一つの体に意識が二人分ある状態ってことで間違いなさそうだな......)


(え! どういうこと?)


(多分だが、お前の精神が元々その体に宿ってたのに、何かあって俺の精神もこの体に乗り移っちまったんだろ。俺はおそらくだが死んで体を失った。所謂転生って奴だ。お前今日の昼過ぎ頃に死んだりしたか?)


(死んでたら今会話できないでしょ! あ、けど今日の昼過ぎは講義中寝落ちしちゃって意識はなかったけど......)


(ただ寝落ちしただけか? ならこの世は転生者だらけのおかしな世界になっちまうが......)


(うーん、まあ魔力不足で一瞬気絶状態ではあったと思うけどね。それ以外は特に)


(なるほど魔力不足か......っておい! この世界には魔力とかそういう概念があんのか?!)


(え、普通のことじゃないの?)


(普通なわけあるかよ! 俺が死ぬ前いた世界じゃ魔法なんておとぎ話の世界だったからな! こりゃ楽しみだ!)


(あのさ、君死んでこの世界に転生してきたって言ってたよね。どうして君はそんなに突飛な発想をする上に、冷静でいられるの?)


(元いた世界では死んで転生するって話は、ラノベじゃあるある......じゃなくて、誰しも一度は耳にする話だからな。それに死ぬ直前はこの目で見たから、俺が死んだってことはすぐに事実として受け止めらたんだ。そういうお前こそよく俺の話信じられるな)


(元に僕の体の中に君の意識があるのはこうして会話している時点で事実だし、そういう非科学的な現象を目の当たりにしてる以上、今はなんでも信じられるってだけさ)


(成る程な。おっけ、なんでこんな事になってるかはなんとなく分かった。ところで一つ提案があるんだけどさ)


(何?)


(俺も自分の意思で体動かしたいからさ・・・俺に体の制御権貸してくれない?)





この世界の人間は、魔力の枯渇で倒れた時、肺や心臓の活動を一時低下させ、その分魔石の変換効率を上げることによって魔力の回復を早めます。ロオスは持病により、他者と比べて魔力の回復が遅いため、心肺機能の働きが正常な人と比べて大きく低下し、一時的に仮死状態に近い状態になってしまいます。よって、本来成立し得ない転生が成立してしまいました。

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