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束の間の休息



「対象を確認......確保」


「チクショウ! 何も出来なかった!」


森を駆け抜けるトバリが、次々と受験者を追い詰めて脱落させていく。


(対面してから一人当たり10秒程度は猶予を与えないと運営委員から苦情が来るかもしれない。受験者10人に10秒ずつかけると単純計算で1分40秒。この森はそこまで広くない。本気で探して効率よく回れば、一人当たり5秒程度で見つけられる。それにしたって10人分で50秒......奴との対戦にかけられる時間は20秒程度か。潰すだけならそこまで時間はかからないが、奴の弱点を見つけられるか? 20秒で? やるしかない。それしか奴を不合格にする方法はない!)


「試験官、受験者の隠密性を加味して行動しなさい。ランク1として十分な実力の者は見逃す規定をお忘れですか?」


「申し訳ないです。試験開始直後に大変優秀な受験者に攻撃され、それ故自分の中でのランク1の基準が変わってしまったようで、どの受験者もランク1に満たないと誤断をしてしまったと考えられます。十分な実力があると判断した受験者には、後日そちらから通達してあげてください」


「......分かった。とにかく、これから相対する受験者はよく見て判断すること。あまりこちらの仕事を増やすんじゃない」


「はい、すみません。では失礼します」


(クッソ! こっちの都合も知らないで! これでもかなりギリギリなんだよ! それに運営納得させるためとはいえ、あのガキを優秀な受験者とか言わなきゃなんねえしよぉ! あぁ! イライラすんなぁ!)


「確認......確保」


(これで残り3人! 時間は1分を切ってる! 間に合うか!? 奴はおそらく試験前に話していた女と一緒にいる。ということはあと1人捕まえれば......)


鬼気迫る表情で探し回るトバリ。しかし......


(どこにいやがる! 気配が全く感じられない! 2人の位置はとっくに掴めてるのに......あぁ! めんどくせぇ!)


探知サーチ!」


探知サーチ。隠蔽魔法や魔道具で姿を隠した人、物を見つけ出す魔法。範囲はあまり大きくないが、不可侵の領域と違って発動させている間移動することができるため、身を潜めている人間を探す容易に探し当てることができる......筈だった。


(バカな! どこにもいないだと!? 隠蔽魔法じゃないのか!? 時間も使いすぎたしこれ以上探すのは不可能だ! 今年の受験者はどいつもこいつも生意気な奴ばっかだなクソが!)


「対象を一名確認できません。十分ランク1に見合う実力を有していると判断し、残り2名の受験者に接触します」


「了解」


(残り30秒。移動に5秒、粗探しに20秒、確保に5秒。いける!)


喜色をあらわにする事なく、冷静に、油断なく、ロオスとの再戦に備えつつ移動を開始した。


〜〜〜〜〜〜〜


「なかなか来ないね」


「うん。3分で10人見なきゃいけないからね。それに最初に僕と接触したから、ここを後回しにせざるを得ないのは明白だし。まあそろそろ来るんじゃない?」


「そんな他人事みたいに言ってるけどさぁ......大丈夫なの? あんな喧嘩売るみたいな事して」


「大丈夫じゃないからこうやって備えてるんでしょ」


こちらも万全の態勢でトバリを迎え撃とうと着々と準備を進めていた。


「本当にこんなに木切って大丈夫なのかなぁ」


「っはぁはぁ」


「ねぇ、ロオス聞いてる?」


「え? あぁ、大丈夫大丈夫。このくらい大目に見てくれるって」


ロオスは風魔法による切断、リーブは拳での殴打によって周辺の木を軒並み倒していた。


「相手の方が索敵能力高いのは間違いないから、少しでも見渡しよくしておかないと。それに木の上伝ってこられると作戦が台無しだからね。一石二鳥の策だ、監視員も口出ししてこないでしょ」


「このあと試験受ける人もいるのにこんな事しちゃって......」


「気にしない気にしない! 本当にそろそろ来るよ! 気引き締めて!」


「え! わ、分かった!」


(弱ったなぁ。まさかこんなことになるとは思ってないから、魔素薬飲んでないし......。もう魔力が底をつきかけてる。リーブをあんまり心配させたくないからやせ我慢してるけど今結構きついんだよね)


(ま、心配すんな! 魔力切れでお前が気絶しても俺が表に出てやっからよ!)


(多分だけどそれは無理だよ。魔力切れで気絶すると心肺機能が低下してしまう。まして僕は持病持ちだから他の人よりその症状は深刻になる。君が表に出ても呼吸もままならないからやめておいた方がいい)


(まじかよ......じゃあお前どうすんだよ。持病のことあんまり知られたくねぇんだろ?)


(うーん、まあなるようになるさ)


(投げやりか? お前らしくねぇな)


(一応出来るだけのことはしてみるけどね)


(無策ではないってか。ま、今回俺は傍観者だ。楽しませてもらうぜ)


(うん。楽しんで見てて)


森の奥からカサカサと小さな音が聞こえ、その音は徐々に大きくなっていく。その小さく静かな音とは裏腹に、煮え滾るような怒りを胸に秘めた一人の男が、矢の如き速さでこちらに向かって来ていた。


「対象を確認。確保する」


「やれるもんならやってみな......ってね!」


怠け癖がぁぁぁあああ

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