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憤怒?

逡巡、それは必ずしも未熟であることの証明にはならない。むしろ択を多く想定できているという観点では優れているとも言える。ただし戦場においてそれは致命的な隙となる。この戦いもまた同様に、ロオスに時間的猶予を与えてしまっていた。


隠霧フォーグハイド


僕は霧を生み出して、即座に霧の外側まで飛び退いた。


(なんだよ、日和ったのか?)


(いくら霧があるとはいえ相手の方が実力は数段上。生半可な攻撃じゃ見切られて負ける。仮にもランク4なんだから霧を晴らすとか、霧の中でも視界を良好にするとか何かしらの手段は持ってるでしょ。霧の端ならある程度距離を取れるし、相手が霧から出ても僕の姿は捉えられない。それから......)


右手と左手でそれぞれ異なる風魔法の術式を構築するロオス。


(一つは迎撃用、もう一つは逃走用ってか?)


(いや、両方とも迎撃に使う。どっちつかずな作戦じゃ勝てない)


(なるほど)


(できるだけ相手に時間を使わせたい。そのためにも相手に多く選択肢を与えられるように立ち回らないとね)


(なんか言ってることが格ゲーのプロみたいだなお前。まあいいや。ではではお手並み拝見といこうか)


(まあ見てなよ)


数秒の膠着を経てトバリが動いた。


身体強化ブースト!」


(そろそろ限界かな......風刃ウィンドエッジ


ロオスは左手をへ左斜め前へ向け風魔法を撃った。


「ズドドォン!!!」


一直線に飛んでいく風の刃が次々と木々を切り倒していく。


(そんなこともできんのか......)


(トップランカーはもっと奇怪な魔法使うから、このくらいは大したことないよ)


(ほー、機会があれば見てみたいもんだな)


ロオスは霧の中からトバリが動いた音を聞き取った。


(木が倒れたらそりゃ気になっちゃうよね。それじゃ予定通り)


思い切り地面を踏みつけ、その反動で5、6歩後退したロオス。


その数秒後、霧の中から顔を出したトバリ。


と同時にロオスはもう一つの風魔法を発動させた。


「ダ、ダニィ!?」


トバリの全身に膨大な質量の空気が叩きつけられる。


そしてそのまま、先ほど木を切り倒した方へ吹き飛ばされていった。


(なぁるほどね。さっき木を切ったのは音で相手の注意を引くのと同時に、射線上から障害物をなくすためか)


(そういうこと。このまま突っ立ってたら捕まっちゃうから、さっさとずらかろうかな)


ロオスは身を翻し、草木を分け入り森へ姿を消した。


(あんだけの攻撃食らったらしばらく立てねぇんじゃねぇのか?)


(バカ言え、ただの空気の塊叩きつけたくらいで倒せるような甘い相手じゃないよランク4は)


(んじゃさっきの風刃とかいうやつでぶった切れば良かったじゃねぇか)


(これライセンス取得試験だよ? そんな危険な魔法人に向けて撃ったらすぐに取り押さえられて退場させられるよ。それに使ったってトバリさんは倒せなかったよ多分)


(おいおい買いかぶりすぎだろ。木を何本も真っ二つにする貫通力があって、人一人切れねぇってこたぁねえだろ)


(風刃はさっき撃った風間法に比べて範囲が小さいから、反射神経が良ければ、見てから上下どちらかに避けられる可能性が高い。だから攻撃に使わなかったってのも理由の一つだね)


(安全面と躱されるリスクを考えてただの風魔法にしたってことか)


(そういうこと。ま、型通りに第一階梯の風魔法撃てばリスクを高めることなく威力を上げられたんだけどね)


(なんだよ、やりゃあ良かったじゃねぇか)


(別にダメージを与えたくて失格のリスクを背負ったわけじゃないから。僕が与えたかったのはライセンス未所持の格下に読み合いで負けたっていうレッテルだけ)


(......お前頭いかれてるよ)


(そう? 君ほどではないと思うけどね)


軽口をたたき合いながら、ロオスはトバリとの距離を離していった。


〜〜〜〜〜〜〜


何が起きたのか一瞬分からなかった。格下の相手に風魔法を撃ち込まれ、気づけば自分は森の中で土を背に寝転がらせられていた。


屈辱。忘我、激昂。


一連の流れは淀みなく最短で、トバリを怒り一色に染め上げた。


「あのガキがぁぁぁあああ!!!!! しばき倒してやらぁぁぁぁあああ!!!!!」


その時、怒りに呑まれたトバリの元に試験運営委員会から無線で連絡が入った。


「試験官! 怒る気持ちも分からなくないが試験中だぞ! 気を静めて試験官としての任を遂行しろ!」


「ふー、ふー、分かってますよ。ええ、分かってますとも。試験なんだから早く受験者を触って脱落させないと」


「待て! 脱落させるのではなく受験者の実力を引き出すのがお前の役割だ! それと、ロオスという受験生は合格だ。もうこれ以上追う必要はない」


「どうしてですか! これは隠密と逃亡時の機転を見る試験でしょう! 咄嗟の対応力に関しては認めますが、隠密に関してはまだ何も審査出来ていない!」


「いや、彼をマークしてる審査員から今さっき連絡が入った。十分ランク1の実力は有している、とな」


「......まだ試験は終わっていません。その間に何か致命的な欠点があるかもしれませんので、タイミングが合えば仕掛けたいのですがよろしいでしょうか」


「うーむ、まあいいだろう。ただし優先的に狙っている節があれば、直ちに探検家ギルドに連絡を入れさせてもらう。いいな」


「......分かりました」


(クソッ! 面倒なことになった! 全てあいつのせいだ! あいつさえいなければ......! 試験中に傷を負わせるのはほぼ不可能になった。何か粗を探してそこを徹底的に突かないと......何かないのか! 奴の弱点は!)


怒りを胸の奥に押し込み冷静を装って、とてつもない速度で森の探索を始めた。




残り試験時間:2分40秒

残り受験者数:10人

怠け癖がついてる......気を引き締めて頑張ります。


風刃の読み方についてですが、「ふうじん」の方がカッチョいいのですが、火刃(炎刃)や土刃(岩刃)の読み方が「かじん」「どじん」となってしまい、とてもかっちょ悪い名前になってしまうので、ウィンドエッジという名前にしました。(ウィンドエッジもあまりいけてない)(火刃、土刃は仮名で正式名称は未定の上、本作で登場するかも未定)

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