リア中説濃厚
自己顕示欲の鎌足
「えー、今日の実技と明日の講義をもちまして、君たちのカリキュラムは終了となる訳ですが、本日の実技は前衛組と合同で行います。二人一組を作り終えたら次の指示を行います」
(こんな大事なこと忘れんなよ)
(ごめんごめん、今まで実技の日なんて気にしてこなかったからさ)
(どれも楽勝だったからってか? ケッ、ハイスペック野郎は嫌いだぜ)
(それ君が言う?)
「えーまじかよ」
「前衛組とか絶対野蛮だろ」
「やりたくねー」
(結構否定的な意見が多いんだな)
(まあ、慎重派が多い後衛と、行き当たりばったりな前衛じゃ基本的に意見が合わないからね)
「静かに! 蟠りが多少あるのはこちらも承知の上だ。だが、開拓やダンジョンの探索において前衛との連携は必須だ! 今のうちに経験を積んでおかなければ後々苦労することになるからな、しっかり取り組めよ。では、今から10以内に訓練場に集合しておくように。解散!」
(うし、サモンと組むふりして闇討ちするか)
(ほんとにやめて。頼むから今日は近づかないで)
(冗談だって! 第一候補はお前の彼女だな)
(だから彼女じゃないって......君といると疲れるよほんと)
(そりゃ悪いことしたな......なんて言うと思ったかよ!ハッハッハ!)
(大丈夫、初めから言うなんて思ってなかったから)
(なんだよ、リアクション薄いな)
心なしか疲弊した様子の(僕)を他所に、俺はさっさと訓練場へ向かった。
誰よりも速く訓練場についた気でいたが、案の定先にサモンが来ていた。
(うわっ! もういるよ......しばらく僕は黙って、ない耳と目塞いでるから勝手にしてて)
(了解)
「指示されてからほとんど時間経ってねぇ......ないのに随分早いんだね」
口調を慌てて井伊直弼......ではなく言い直す俺のことなど気にするそぶりも見せずサモンは訓練場の入り口を見つめていた。
「何してるの?」
「今日は嫌な感じがするんだろう?俺は貴様とは組む気はない。だが組むなら優秀な奴に越したことはないからな、後衛組で優秀そうな奴に目星をつけているのだ」
「あーなんか治ったっぽいから大丈夫だよ? それにしても、そんなに睨みつけるように見たらみんな怖がって、サモン君とは組みたがらないと思うけど」
「む、そうか。ではどうすれば良い」
(おい! なんかいい具合のポンコツ紹介したいんだけど誰かいない?)
(なんか饅頭みたいな顔した貴族がいたから適当にそいつでいいんじゃない? ほんとにもう話しかけないで)
(分かったって! すまんすまん)
「僕がいい人紹介してあげるよ!」
「そうか、助かる」
時間ギリギリにそいつは訓練場へ姿を現した。
「あ! あいつだあいつだ! あの人と組むといいよ!」
「あれは......シャーリー家の......あいつと組むのはごめんだ」
「いいじゃん組みなよ。て言うか他の人はもうみんな組んでるからあいつと組むしかないって」
「貴様はだあれとも組んでいないのだろう? あいつと組むなら貴様と組む」
「僕はリーブと組むから......」
「他のやつと組んでるかもしれないだろ、昨日勝負の後貴様の元へ来たもう一人の男とか」
「あぁ、タンタ? ないない。タンタとリーブは確かに仲良いけど、タンタはああ見えて空気が読めるやつだからな。仮に数日しか彼と一緒にいなかったとしてもその人となりの良さは分かるよ」
「何を言って......」
「あ! ロオスやっと見つけた!」
そう言って駆け寄ってきたのはまさしくリーブ本人であった。
「ロオス誰かと組んだ? あ、もしかしてサモンと組むつもりだった?」
「いや、僕もリーブ探してたんだ。組みたいなーと思って」
「そっか! あたしも一緒!」
(リア中だなーお前ら! 俺もその気になって爽やか系イケメン演じちゃったのはあるけどよ)
(......幼馴染だったから仲良いだけだよ)
(おっ! お前にもちょっとはその気あんじゃねーの?お?)
(早く会話に集中しろ。まったく......)
「じゃ、決まりだね。そう言うわけでサモン、君はあの饅頭と組むしかなくなった訳だが」
自身の策が綺麗に決まった愉悦から少し口調が戻ってしまうロオス。しかしそんなことにはまったく気付かずに恨めしそうな表情でシャーリー・Jを見つめるサモン
「......あいつと組むなら一人でやったほうが遥かにマシだ」
「そんなに嫌がるなんて、何か因縁でもあるの? まあいいや、とにかく僕らはペア組んだからサモン君も早く決めたほうがいいよ」
結局サモンはシャーリー・Jと組むこととなった。
(俺と会話なんかしてなけりゃ、あの饅頭以外にも組めただろうに......ざまあないぜ。ま、優秀な奴はさっさと来てペアつくってたから残り物もたいした奴はいなかっただろうけどな)
「先生が着くまでにちゃんとペアを組めたようだな。生徒の成長を感じ、先生、大変機嫌が良いぞ!」
((((((((((((((あっそ))))))))))))))
この瞬間、前衛組と後衛組の意見が初めて一致したような気がした。
「今から街を出て、先生方監督のもと野戦をしてもらう。先生が指定した敵を無事倒せれば終了、即帰宅となる。皆気合い入れていけよ!」
(兄さんに聞いたけど、最後の実技はちゃんとお互い連携取れないと勝てない敵指定してくるらしいよ)
(まじか、俺後衛の練習なんかしてねぇぞ)
(リーブとは長い付き合いだし野戦も何回かしたことあるから君がやったらバレちゃうかもね)
(仕方ねぇ向こう着いたら変わるか)
(そうだね、僕もサモン君のこともあってあんまり気乗りしないけど......そのほうがいいかも)
〜〜〜〜〜〜〜
(奴が嫌な感じがすると言った前日、どちらもシャーリー家を訪れている。まさかシャーリー家に何か秘密が......?)
サモンは徐々にこの一連の事件の核心に近づきつつあった。
サモンは自分の住む集落から歩いて町の養成所まで通っています。