交錯する不自然
ギリギリ毎日投稿!
「「ロオス!」」
戦いが終わった直後、群衆の中からロオスと特に中の良いリーブとタンタが飛び出した。
「おい! 大丈夫か! しっかりしろ!」
「ちょっと! あんたここまでする必要ある!? どう見てもやりすぎでしょ! ロオスは前衛じゃないのよ!」
「こちらがやられる可能性もあった、到底手を抜ける相手ではなかった」
サモンの真剣な顔つきにリーブの言葉が詰まる。
「それにしたって......」
「いいんだよリーブ、このくらいの攻撃で過剰とは言えないよ、イテテ」
むくりと気絶したはずのロオスが起き上がった。
(ばかな! 身体強化を使って本気で殴ったんだぞ! それも決着がつくように、意識が落ちやすい箇所に二発も! なぜ意識がある!)
「お前気絶してんじゃなかったのか!?」
「うん、なんとか大丈夫だったみたい」
(気絶したのは僕じゃないし)
「お、驚いたな。まさか意識があるとは」
「驚いたな、じゃないわよ! 謝りなさいよ!」
「断る。俺に一切非はない」
「いいよいいよ。こうなったのは僕、いや俺のわがままに依るところが大きいだろうし」
「そもそも一週間前、貴様がいきなり俺に風魔法をぶっ放してきたのがこの争いのきっかけだろう」
(シャーリーさんの話は言わないほうが良いだろう)
「そう言えばそんなこともあったわね。ロオスなんでサモンに風魔法なんて撃ったの?」
ロオスは申し訳なさそうに口を開いた。
「あ、そういえばそのことについて何も言ってなかったね。攻撃したのがサモン君って分かったのは、直撃してサモン君がこっちを睨んだ時なんだよね。あ、サモン君じゃんって。それで生徒に向かって撃っちゃったって怖くなって......その時はすごく嫌な感じがしたんだ。嫌悪感だったり憎悪だったり、なんか体中に負の感情が渦巻いて、気付いたら撃ってたんだ。今は全くそんな感じはしないんだけど......ほんとごめん」
「こいつの言い分の方がふざけているだろう。俺はこいつに殺されかけかけたんだ。このくらい殴った程度で騒ぐな」
「あんたもっと言い方ってもんがあるんじゃないの!?」
「ふんっ、俺はもう帰る。じゃあな、もう会うことは無いだろうが」
「あ、待って。そういえば勝負に勝てなかったから、僕の秘密とやらはバラされちゃうのかな?」
「そうだな。貴様がたじゅ」
「そう、僕は中二病さ。時々口調を変えたりして物語の主人公を気取ったりしてたのさ。誰もいないところでね」
(事前になんて言い訳するか二人で考えて決めたことだけど、こんな言い訳通じるのかな......)
「くだらない、そんな稚拙な言い訳に騙されると思うか。興が削がれた」
(やっぱり騙されてくれないか......)
(ちゅ、中二病だったのか。てっきり多重人格かと思っていた......危うく恥をかくところだった)
そう言い残しサモンは訓練場を後にした。
「ロオス、中二病だったんだ......ま、まあ今はそんなことどうでもいいわ! 早く手当てしないと」
「そ、そうだぜ! 早く保健室に運ばなきゃ!」
心なしか哀れむような視線でリーブとタンタがロオスに声をかけるも、ロオスからの応答はない。ロオスは思慮に耽っていた。
(確かにそうだ。ロオス(俺)に出会ったり、サモン君に勝負挑まれたり、予想外のことが起きすぎて、今の今まで頭から抜け落ちてたけど......ってそんなはずあるか!? 殺人未遂の罪で捕まってもおかしく無いような奇行を忘れてたなんて。サモン君に攻撃したことも理由も、改めて言葉に出したらその異常さが分かる。一目見て嫌な感じがしたから反射で撃ったって......どう考えても普通じゃない。でもあの時は確かに感じたんだ。そして視界に入った瞬間思ったんだ。殺さなきゃいけないって。顔を見て我に返ってなければそのまま殺してたかもしれない。何かおかしい、いや絶対におかしい。何か裏がある、そんな気がしてならない)
「ちょっとロオス聞いてる?」
「え。あ、ああ聞いてるよ」
「これも中二病の症状の一つってか? ロオスも入学した頃と比べて随分変わったなぁ」
「それは今関係ないよ! とにかく僕はもう大丈夫だから二人は先帰ってて。僕はまだやることがあるから」
ロオスの発言を受けてリーブは驚愕の顔を浮かべ、叫んだ。
「この状態で何ができるっていうのよ! バカじゃないの! ほら、さっさと保健室行くよ!」
「いや、ほんとに大丈夫だから今体動かさないでほんとに」
「いーや、ありゃどう見ても大丈夫な吹っ飛び方じゃなかった、ほら行くぞ」
「大丈夫じゃないから大丈夫なんだって! ちょっ」
「タンタ、二人で持ち上げるよ。せーの!」
「イタタタタタタタタタッッッ!!!」
校内に一人の男の叫び声がこだました。
〜〜〜〜〜〜〜
一方帰路につくサモンも思慮に耽っていた。
(奴はその場しのぎのためにくだらない嘘を言うようなやつではないと思っている。それだけ奴のことは評価している。今回だって、身体強化の練度が遠く及ばない俺に拳でダメージを与えてきた。結果こそ俺の勝ちだが、内容を見れば完全に俺の負けであろう。
それほど優れた男の口から発せられたのは嫌悪感、憎悪のような感情による攻撃という言い訳。いや、これが仮に言い訳で無いのだとしたら? あの殺気の説明はつく......いやつかないか。だがなぜそのような感情を? 今は感じないとも言っていた。なぜその感情が消えたのか。いや、人に対する感情はそう簡単に覆ったりはしない。何かイレギュラーなことが起こって俺に敵意をむいた? 心象操作......幻惑魔法か?だが何の為に? わからん。不確定要素が多すぎて全て机上の空論でしかない。ひとまず身の回りを探ってみるか......)
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